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【石炭ストーブ】

僕が小・中学校の頃は、まだ〈石炭ストーブ〉が全盛時代だった。

〈ストーブ〉は教室の後ろのほうにあって、ブリキの太い煙突が真上に伸びていた。天井の手前で直角に曲がって、ガラス窓の上の壁から外の煙突へと繋がっている。

石炭が本気で燃え始めると物凄い放射熱を発して危険だったため、ストーブの回りを 木製の柵で囲んであった。

柵の内側が焦げるんじゃないかと思うくらいに〈石炭ストーブ〉の火力は強烈だった。

絶好調に燃え盛った時には、ダルマ型ストーブの腹が真っ赤になっていた。鋳物が赤くなるのだ。

ストーブの横にある扉を開けて石炭を補給してやらなければならないので、側には石炭を入れたバケツが置いてある。石炭を運んでくるのには当番が決められていて、当番は裏の石炭置き場からバケツに石炭を入れては教室まで運んだ。

小学校は給食だったが、中学では弁当を持って来ることになっていたので〈石炭ストーブ〉の季節になると、皆んながストーブの柵に弁当をぶら下げて暖ためたもんである。

「わ~っ❗️先生❗️弁当が焦げてます~っ❗️」

あんまり火力が強くてストーブが真っ赤っかになっている時には、弁当から湯気が出てきて、そのまま気が付かないでいると、ついには燃えることがあったのだ。

学校での最大の楽しみは弁当だ。それが焦げたのだから、弁当の持ち主の落ち込みようといったら、それは哀れなものであった。

雪合戦で濡れた長靴や手袋を乾かすのにも〈石炭ストーブ〉は大活躍をしてくれた。

石炭の匂いがする暖かい教室の、懐かしい風景なのである。


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