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【本番前の女】
ホテルには〈ディナーショー〉幕開き直前の緊張感が漂っていた。
ステージのバックヤードは、芸能人関係者やホテルのスタッフでごった返している。その中に混じって、今日の主役の、後は女優になる、ある若い女性タレントの〈M・K〉が、イライラしながら、誰かが来るのを待っていた。
「もぉ~~●●ちゃんったら何やってんのよぉ❗️もぉ時間ないわよ❗️」
やがて、ひとりの女の子が息を切らせながらやって来た。どうやら彼女のマネージャーのようだ。手には、濃い琥珀色をした液体が8割がた入ったタンブラーを持っている。
「ハッ、ハッ、ハッ❗️・・どうも・・お待たせぇ~はい❗️どうぞ❗️」
「もぉ~何やってたのよぉ~」
そう言いながらタンブラーを受け取った〈M・K〉は、タンブラーの中の液体を一気に飲み干したのである。
その液体とは、ブランデーであった。タンブラー1杯のストレートのブランデーを一気飲みしたのである。
〈M・K〉は本番前にブランデーで勢いをつけてステージに挑むようだ。
「・・プハッ❗️・・ふぅ~~よし❗️行くか❗️衣装、大丈夫❓️・・あっ❗️ストッキング伝染しちゃってるじゃん❗️・・大丈夫かなぁ❓️❗️●●ちゃんどぉ❓️」
「大丈夫だいじょうぶ❗️」
〈M・K〉は、普段からカッタルそうで、少し酔っぱらったようなしゃべり方をするのが特徴であり、それが彼女の魅力でもあるのだが、ひよっとして、普段から本当に酔っぱらっていたのかもしれないなぁ、なんて疑ってしまうのだった。
さて、愈々出番が迫ってきた。マネージャーの女の子が、両手の平で、〈M・K〉の背中を「パンパン❗️」と叩いて気合いを入れると、彼女は颯爽とステージに上がっていった。
直ぐに観客のどよめきと喚声がバックヤードまで聞こえてくる・・・
こうして〈M・K〉の〈ディナーショー〉が始まったのである。
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