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【リトルリーグの星】

長男が中学の時の同級生に、身体能力が抜群の友人がいた。

彼は小学校の時50mを6秒台で走る俊足を持ち、ソフトボールの遠投でも桁外れの距離を投げ、野球のリトルリーグではレギュラーとして全国大会に出場し、見事3位になったという実績もあった。

長男も足が速かったのだが、彼の速さは異次元であったという。

やがて中学の3年生になった彼は進路を決めなければならなかった。

すると甲子園出場常連の高校から使者がやってきて、彼を是非とも野球部に欲しいとスカウトしたのである。

そして彼はその高校に進学することになった。

・・・・・・・

彼が高校2年になった時である。その高校の野球部は県大会を勝ち抜いて夏の甲子園への出場キップを手に入れたのだった。

甲子園の1回戦は、家族みんなでテレビの前に座って彼を応援することになった。

レギュラーとして先発出場するらしい。

スターティングメンバーを見ると彼はレフトで7番バッターだ。チョッと意外だった。

え?いくら2年生とはいえ、あれだけの身体能力を持った彼が7番?・・・そう思ったのだ。

試合では2本のヒットを打ったのだが、残念ながら初戦で負けてしまい、彼の短い夏は終ってしまったのだった。

3年生になると、レギュラーを外されることはなかったが打順は9番にまで落ちていた・・・

・・・・・・・

結局、卒業間近になってもプロからのオファーはなく、〈リトルリーグの星〉はプロ野球選手になれなかったそうである。

長男からそんな話を聞くにつけ、プロ野球の選手のレベルの高さというものを思い知らされるのである。

数年前、長男が彼に会った時には、目を疑うぼどにデブっていて、当時の面影は微塵も感じられなかったという。


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