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【左の人】

長年、広島東洋カープの正捕手を務めた名キャッチャー:石原慶幸氏は、現役を引退して地元テレビ局の〈野球解説者〉になったのだが、慣れない解説者という仕事に不安が隠せない様子の石原氏なのであった。

さて、その日のテレビ中継には、解説者として初めて仕事をする石原氏の姿があったが、大先輩のミスター赤ヘル山本浩二氏と石原慶幸氏のダブル解説者という形で放送されたのだった。

「石原さん、初めての解説ですがどうですか❓️」

実況アナウンサーの振りに石原氏が応えた。

「いやぁ~もぉ緊張のしっぱなしですよ。今日なんか特に左が」

「左が」というのは、左に座っている山本浩二氏を指してのことなのだ。

言葉を遮って石原氏の左側に座っていた、大先輩の山本浩二氏が言った。

「なにぃ~~っ❗️」

大先輩であり監督経験者であり、なんと言っても天下のミスター赤ヘルを「左」呼ばわりされた山本氏は怒り心頭なのだった。

そりゃわかる、わかるよぉ~・・わかるけれども生放送の最中に、「なにぃ~っ❗️」はないでしょう。石原氏は大先輩を前に緊張していたんだから、思わず左なんて言っちゃったんでしょうから・・・

そこは抑えて、次に実況アナウンサーが何かのことで山本氏に振ってくるでしょ❓️

「山本さんいかがでしょうか・・」

その時に・・

「はい、左の山本ですが・・」

くらい言って欲しかったなぁ・・


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