パリ・オペラ座の日々1993~1994:8月10、11日 北欧旅行①「コペンハーゲンへ」
8月10日
夕方、パリ北駅を出発。一等寝台は期待ほどの豪華さではなかったがとても快適。寝心地も良い。初めての寝台列車旅で面白いことばかり。給仕係のおじいさんが親切で嬉しかった。
駅カフェ 29F
ビール 19F
8月11日
寝台列車の中で朝6時くらいに目が覚めた。窓の外はすでにドイツ北端の風景で、なだらかな丘が続き木々がしっとりした感じがする。
8時くらいに停車した列車は、ぶつ切りにされて大きなフェリーの中に格納された。フェリー内を出歩いてよいということなので、船のレストランで食事。ゆったり食べてたら1時間くらいですぐにデンマーク側に着いてしまった。
11時にコペンハーゲンに到着。まずは駅を出て、街の中心ストロイエ通りを歩きホテルを探す。でもどこも値段が高くて苦労する。結局一泊970クローネというとんでもなく高いホテルになってしまった。
オペラ座へ行き本日と翌日のバレエチケットを購入。マックでお昼を食べて、街をブラブラして、ホテルで一休みしてから劇場へ。今日の演目は「ナポリ」で、なかなか楽しい舞台だった。(雪)によるとバレエ団のレベルは高いとのこと。踊り手がみな美しい。ただセットがゴテゴテしていて、舞台上が狭苦しいようにも見えた。劇場も素敵な建築だった。
船カフェ 67F
船カフェ 41F
マック 85F
薬局 66F
バレエチケット 675F
リンゴ 5F
夕食 165F
プログラム 25F
さて待望の北欧旅行がスタートです。北欧といっても、ほんの入り口の一番メジャーなコペンハーゲンと、対岸の町マルメを訪れただけで、スカンジナビア半島に一歩だけ足を踏み入れたくらいの感じです。でもデンマーク、スウェーデンともに僕たちにとっては初体験でした。
最初にこんなことを書いてしまうのはどうかと思いますが、ハッキリ言ってこの北欧旅行は「失敗」感が否めませんでした。2週間前に訪れたプロヴァンスが良すぎたというのもありますが、そもそも”北”に行くべきではなかったな…というのが旅行後の素直な感想でした。
8月末に行った次の旅行地スイスについても同じことが言えて、どうだったんだろ…?みたいな感じが残ってしまいました。こういうことは、実際に訪れたからこそ言えることで、行かなければそれはそれでまた後悔していたと思います。夏が短い北欧・スイスは、8月中に行かないとダメだろうという判断だったのですが、同時に検討していた南方向のポルトガル、ナポリ、ギリシャなどを選ばなかったことを後々すごく後悔することになります(今でもすごく後悔してる…笑)。
ともあれ初めての北欧体験ですからワクワクして出発しました。
鉄道のことはまったくの門外漢なのでよく覚えていませんが、こんな車両でした。コンパートメントに分かれていて、僕たちだけで一部屋使える仕様です。広々とした室内に洗面台も備わっていて快適な旅でした。出発してしばらくしたら給仕の方が座席をベッドに変形してくれて、その後はわりとグッスリ眠れました。
当時はまだEU発足前夜(1993年11月に正式に発足した)なので、パスポートはその給仕のオジサンに預けておいて、眠ったままそれぞれの国境を越えていきます。
ベルギー~ドイツを通過して、早朝にはドイツ北端の港(ハンブルグだったのか?キールだったのかな?よく分かりません)に到着しました。ここからが面白くて、デンマーク側に渡るのに鉄道ごとフェリーに乗ってしまったんです!乗り換えるんじゃなくてそのまま(笑) もう目覚めていたんで一部始終をずっと眺めていたんですけど、長い列車を三両づつくらいにぶつ切りにして、そのままフェリー内に入ってしまいました。船が出航したら、船内を自由に出歩いて良いというアナウンスがあったので、列車の外に出て船のデッキに上がって海を眺めたり食事をしたり…。船旅自体は1時間強だったんですけど、列車の切り離し+格納にけっこう時間がかかっていました。でもこれは本当に面白い体験でした。
(フェリーのデッキでの一枚)
↓こちらのブログに「列車丸ごと乗船」体験が書かれています。この方が紹介しているのがハンブルグーコペンハーゲンなので、僕たちが乗ったのもこの「渡り鳥ライン」だったのかもしれません(残念ながらこのシステムは2019年で廃止されたということです)
ということで午前11時頃にはコペンハーゲンへ到着。
ストロイエというところが目抜き通りだということだったので、さっそくその周囲をうろついてみました。こじんまりとしていて、でも美しく歴史を感じる街並みでした。首都の一番の繁華街なのに、すごく落ち着いた佇まいで人々の歩みもゆったりとしていて、やっぱり北欧は違うなぁと。
宿が決まっていなかったので、ぼちぼちホテルを探し始めたのですが、提示される部屋代が高い。というか何もかも高い(笑) 当時のフラン=クローネのレートのためなのか、それとも高度な福祉国家であるためなのかよく分からなかったのですが、とにかく物価が高い。。何軒かホテルを回ってみても冗談みたいな値段ばかりで困り果ててしまいました。結局この日は一泊2万円くらいの部屋しか確保できなくてガッカリ。フランスの地方都市なら、二人での宿泊+朝食付が5000円前後の時代です。
ホテルの部屋に落ち着いて一服してから、気を取り直してデンマーク王立劇場に向かいました。我々はここでもはやりバレエなのです。
デンマーク王立劇場(1874年建設)
なんといってもデンマーク・コペンハーゲンは、ロマンティック・バレエの大家であったブルノンヴィルが活躍した場所です。
オーギュスト・ブルノンヴィル(1805-1879)は、コペンハーゲンに生まれ王立バレエ学校で学んだ後、パリ・オペラ座のダンサーとしても活躍しました。その後デンマーク王立バレエ団のバレエマスター・振付家となりたくさんの作品を残し、「ブルノンヴィル・スタイル」と呼ばれる独特のメソッドを確立しました(Wikipediaの記述の要約です)
この日の演目「ナポリ」は、「ラ・シルフィード」と並んでブルノンヴィルの代表作です。1842年に初演された全3幕のバレエ作品で、正式な題名は「ナポリ、あるいは漁師とその花嫁」 。
(1905年上演時の写真)
マリウス・プティパが手掛けた三大バレエのような壮大な構築感はありませんが、穏やかで抒情性のある演劇的な舞台だったように思います。怒涛の感動というわけではないんだけど、ブルノンヴィルのホームグラウンドで観るブルノンヴィルスタイルのバレエということで、大満足の一夜でした。
19世紀後半に建設された劇場もすごく立派で、王室の長い歴史(10世紀頃まで遡れる)を感じさせるものでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?