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生ごみからはじめる持続可能な暮らし地域の中で「生産」と「消費」の循環をつくる「ごみカフェKYOTO」

京都市では、世界の平均気温を1.5℃までに抑えて、「将来の世代が夢を描ける豊かな京都」を実現するため、2050年までに二酸化炭素を出さない社会・経済活動への転換を目指しています。
そのためには、市民の皆様一人ひとりの生活が、二酸化炭素を出さない、脱炭素なライフスタイルに変わっていくことがとても大事です。でも、脱炭素なライフスタイルって言われてもよくわからないし、めんどくさそう……と思われる方も多いのではないでしょうか。
連載「こんな取組が始まっています。あなたも参加しませんか?」では、参加することで日々の生活がちょっと脱炭素に近づいていくような、身近な取組をご紹介します。

今回は、「株式会社夢びと」の代表取締役 中田俊(なかだ しゅん)さんに、脱炭素に向けた取り組み「ごみカフェKYOTO」を実施することになった背景や、今後の展望などについてお伺いしました。

「ごみカフェKYOTO」とは?

専門家によるコンポストのレクチャーの様子

ーー「ごみカフェKYOTO」について、教えてください。

「ごみカフェKYOTO」は、バッグ型のコンポスト「LFCコンポスト」を使って、家庭で出る生ごみを堆肥化し、ごみの移動・焼却時に排出されるCo2の削減に取り組むプロジェクトです。コンポストの利用は広がっていますが、せっかく堆肥にしても、街中だと利用用途が限られてしまい、堆肥を捨ててしまっている現状があります。なんとかできないかなと思い、2021年10月から動き出しました。

バッグ型のコンポスト「LFCコンポスト」

まず賛同者には、オンラインで購入した「LFCコンポスト」で家庭の生ごみを堆肥にして、京都市内の回収拠点に持ち込んでいただきます。そこで集まった堆肥を、夢びとが農家さんに届け、野菜や果物などの作物になります。パートナー企業の京都信用金庫や大丸京都店などが、コンポストの普及や回収拠点として協力してくれています。

ーーこの取り組みは、どのように生まれたのでしょうか。

「株式会社夢びと」では、新しい価値観と出逢うための場づくりや、人や団体をつないで新たなプロジェクトを生み出しています。その一つとして、コロナで閉店になった飲食店「士心」を引き継ぎ、学生や、将来的に店を持ちたい社会人と共同経営をはじめました。

実は「ごみカフェKYOTO」は、そのメンバーの一人である大学生のアイデアから始まったプロジェクトなんです。最初は店で出る生ゴミを「LFCコンポスト」を使って堆肥にしていたのですが、それを聞いて「コンポストを始めたい!」と「LFCコンポスト」を購入するお客様が続出したんです。噂を聞きつけたLFCの代表が京都を訪れた際に店に立ち寄ってくれて。そこで、「全国にコンポストのユーザーは広がっているのに、堆肥の使い道がなく捨ててしまう人が多い」という困りごとを聞いたんですね。

集めた堆肥は、農作物を育てるための肥料として使用される

ーー特に街中だと、堆肥の使い道がないですよね。

最初は農家さんに無料で堆肥を配布することを考えました。喜んでくれる人はたくさんいるんじゃないかと思って。でも、何が入っているかわからない一般家庭の生ゴミからできた堆肥だと、なかなか受け入れてもらえませんでした。

この取り組みを知った地域のお蕎麦屋さんに「食用じゃなかったら、使ってもらえるんじゃないか」と、大原野で藍染職人をしている方を紹介してもらいました。藍染の原料である「アイ」を育てるためには、900坪相当もの堆肥が必要みたいで。「たくさんの堆肥を使いたい」と言っていただき、今は定期的に届けています。

ーー月にどのくらいの方が堆肥を持ってこられますか。

これまでで一番多かった月は、バッグ30個分(60キロ相当)ですね。なかには段ボール箱に入れて持ってくる方もいます。今は、パートナー企業が開催する回収イベントに、コンポストの知識を持ったアドバイザーを配置しています。そこでは、生ごみをしっかり堆肥にできているかなどコンポスト利用に関するアドバイスをもらえるので、利用者にとても好評です。

コンポストの勉強会の様子

ーー「LFCコンポスト」の利用者は、どのようなニーズで堆肥を回収場所に持って来るのでしょうか?

やはり、「堆肥の使い道がない」という声が多いですね。LFCコンポストの本体と基材(腐葉土の元になる土)や内袋の費用を合わせると年間で1万円近くかかるので、購入するのは、もともと環境意識が高い方が多いと思うんです。ですので、「自分では使い道がない堆肥が農家さんのためになるなら」と、堆肥を持ってきてくれます。

また、農家さんが作った野菜と堆肥を交換できたり、パートナー企業が企画するイベントに参加したりすることで、参加者同士の繋がりができるなど、コミュニティのような状態になっています。堆肥を持っていなくても、毎月イベントに来る方もいるんですよ。

消費者から生産者に。社会課題は”みんな”で解決すべき

中田氏

ーー「ごみカフェKYOTO」の取り組みの中で、大事にしている価値観はありますか。

街中で暮らしていると、自分がエネルギーを使っているという当事者意識はなかなか生まれないですよね。環境問題というと、どうしても「行政が考える問題で僕ら(市民)は関係ない」となって、壁ができてしまう。これだと、一向に前に進まないので、立場の違う者同士が交われる仕掛けが設計できたら良いなと思いますね。

ーー市民の方に、当事者意識を持ってもらうには、どんなことに取り組めばよいと思われますか。

やはり、まずは消費者側も生産の大変さを知ること。その1つがコンポストだと思っています。コンポストから堆肥を生み出し、農家さんなど生産する立場の方と交流することで、食材に対して「1円でも安いほうがいい」「ちょっと傷がついたら不良品」という見方が変わるのかなと思います。

地域のなかで、生産と消費が循環するモデルを作りたい

回収イベントの様子

ーー「ごみカフェKYOTO」の取り組みを普及させるために、今後どのようなことに取り組む予定でしょうか。

極端な話、「コンポストを設置すると、優遇がある」というような、わかりやすいメリットを提示しないと爆発的な普及はしないと思うんです。

取り組みを持続可能なものにするためには、収益を得られる仕組み作りも必須です。今は、寄付や回収拠点で販売したコンポストの売上を、運搬費やアドバイザーに対する謝礼などの必要経費に充てています。ゆくゆくは、回収拠点にコンポストの知識を持ったアドバイザーに常駐してもらうなど、取り組みに関わる仕事を増やしたいですが、「ごみカフェKYOTO」の売上だけでは回りません。

環境に負荷をかけた企業が費用を負担すべきという考え方もありますが、私は「環境はみんなのもの」だと思うので、今のように、善意の寄付でまかなえるのが良いかなって。もしくは、コミュニティ内で、みんながちょっとずつお金を出し合って社会課題を解決する、ということでもいいかもしれない。皆さんも何か良いアイデアがあれば、教えてくださいね(笑)

ーー最後に、この事業における今後の展望をお聞かせください。

実は目標や展望は考えていないんです。そもそもこのプロジェクトの発端も、大学生であるメンバーの1人のアイデアから生まれたものなので、「適当さ」を残したほうが、可能性が広がると思っています。無理に目標に合わせようとすることで、新たな社会課題を増やすのではという懸念もあるので。

ーーたしかに「脱炭素」という大きなゴールに向かって進むより、まずは「楽しそう」という気持ちから始めた方が、最初の一歩としては良いのかもしれませんね。

「脱炭素」というお題目を掲げられても、興味をもつ人はごくわずかです。

例えば、「自分の家のコンポストでできた堆肥を、おいしい野菜や藍染めの小物と交換できる」というような仕組みを確立できれば、もっと興味を持って取り組みに参加する人が増える。すると、地域の中で生産と消費の循環ができますよね。こういった、もっと自ら関わりたくなる仕掛けを作ることが大切です。

今後は、「ごみカフェKYOTO」を通して、市民が地域とつながって、地域ごとに自走する仕組みが作れたら良いなと思いますね。

関連リンク

・ごみカフェKYOTO

https://www.gomicafekyoto.com/

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