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共通言語が組織を強くする。マネーフォワード「企業理念」浸透ストーリー

「企業文化は戦略に勝る」
ピーター・ドラッカーはこのような言葉を残しています。

「どこを目指すのか?」「なぜこの事業に取り組むのか?」が浸透している企業文化は精緻な事業戦略以上に組織として強さを発揮するのかもしれません。
マネーフォワードさんは「ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー」の共通言語を大切にされています。企業理念の策定から浸透までご担当された金井さんにお話を伺いました。

フェーズによって変化する「組織の言葉」

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ー現在のミッション、ビジョン、バリューはどのように策定されたのでしょうか?
弊社はミッション、ビジョン、バリューをカルチャーも含めてMVVCと呼んでいます。現在のMVVCは2016年の後半に策定しました。

ミッションの「お金を前へ。人生をもっと前へ。」の言葉自体は創業当時から存在していました。マネーフォワードの社名自体が「お金を前へ」の意味にもなっています。
ビジョン自体も明確に定義されていた訳ではありませんが「お金のプラットフォームになる」の言葉自体はあったようです。

ーバリューやカルチャーはどのように言葉に落とし込まれたのですか?
当時存在していた行動指針から抽出しています。

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MVVC策定プロジェクトのきっかけも、元々は行動指針が書かれたカードの制作依頼だったんです。代表の辻から依頼を受けましたが、経営陣も行動指針の浸透は課題でした。

私としては「言葉」が当時の組織に合っていない印象があり、カードの制作依頼を受けた時にどうしようかな、と(笑)
粒度がバラバラで、数も多く、言い回しや受ける圧力が強めな言葉が多いですよね。

ー「勝ち切れ、やり切れ」「生き残れる」など強いベンチャーの印象を受けますね。
創業数人のフェーズにはマッチしていたと思います。
ただ、組織も80人~100人のフェーズに入り、女性も増えてきたタイミングだったんです。「現状の組織に合った言葉に作り変えたい」と提案をして 策定プロジェクトが始まりました。

ー策定プロジェクトのプロセスをお聞きしてもよろしいですか?
当時の人事部長と一緒にプロジェクトを立ち上げ、社内公募したいろんな職種のメンバーと一緒に進めていきました。

行動指針の言葉を「本当はこういうことなんじゃないか?」と要素に分けて、整理をしてから「今の私たちに必要なものは何か?」と抽出し、取捨選択しました。
まとまった段階で経営陣に持って行きましたが、実は一度このプロジェクトは大失敗しているんです。

浸透のために必要な「代表の言葉」と「ストーリー」

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ー失敗ですか。
MVVCは「なぜ必要なのか?」「なぜこの項目なのか?」をストーリー立てて、辻自身の言葉で語って伝えないと届かないんです。
発表は全社総会で行われましたが、代表の辻が腹落ちしきれていなくて、伝え方があやふやになってしまい、事後アンケートでも成立してないじゃないかという厳しい意見をいただきました。

ー代表の辻さんが「自分の言葉」で喋れなかったんですね。
現場の価値観だけで「これが大切だ」と持って行ってしまったんです。
MVVCは会社の人格でもあるのに、経営陣の想いが入っていないため、しっくり来ずやり直しになりました。

ーそこからどのように進められましたか?
現場の価値観」は受け取ったので、次に「経営陣の価値観」をすり合わせないといけないと思ったんです。経営陣1人1人の大切にしている価値観、人生観を引き出すセッションを何度も行いました。さらに、行動指針の1つ1つをどう捉えているのか聞きながら、再編していくプロセスを辿っています。

当時の経営陣は創業メンバーでもあり「マネーフォワードらしさ」そのものでした。大切にしてる価値観を抽出すれば、 そこにはマネーフォワードの原液、DNA があるんじゃないか、と思っていました。

ー企業の言葉は「作る」より「見つける」のが近いのかもしれませんね。
そうかもしれないですね。創業時でしたら「作る」フェーズですが、当時は3年目だったので既に存在する中で「見つけ出す」が近い気がしています。

「組織の言葉」が「自分の言葉」に浸透するまで

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ー策定から浸透までは、また難しさがあるんじゃないでしょうか?
策定後にリーダー合宿で、各リーダーが自分の言葉で MVVC を語るセッションを行っています。5人前後のチームに分かれ、各自のMVVCの解釈をリーダー同士でディスカッションしてもらいました。

MVVCはリーダーが自分の言葉で語れないとメンバーに伝わらないんですよね。そのセッションでようやく自分事になった感覚があります。
その後、全社総会で会社のミッションに紐づけて各組織のミッションを作ってもらい、発表してもらった事も大きかったと思います。

ー社内への浸透のためにどんな施策を行っていますか?
浸透において最も大事な部分は「経営陣が繰り返し語る」事です。
策定直後から現在まで経営陣が、あらゆるシーンでMVVCを語り続けてくれました。そのおかげで、社内にMVVCが浸透したと思います。

施策だと、入社時にMVVが書かれたカードを配布しています。

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他にも、バリューをMVP の選定基準にしたり、カルチャーの体現者をCulture Heroとして表彰しています。

マネーフォワードらしい行動をした人は「会社で賞賛される」とみんなに伝える機会を作っています。環境面でも工夫していて、MVVCのグラフィックがオフィス内に散りばめられています。

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新しい事業が立ち上がる時に、「ミッションにどう繋がるのか?」をちゃんと聞く機会も設けています。だからこそ、ミッションと事業の紐づけは高まった状態は作れているんじゃないでしょうか。

ーミッション、ビジョン、バリューまでは言語化されている会社さんも多いと思いますが、カルチャーを言語化した理由を伺ってもよろしいですか?
会社が拡大していく中で積極的に採用を行っていましたが、以前は採用基準が全社として定まっていませんでした。スキルとフィーリングの採用になってしまっているのは課題だったんです。

マネーフォワードらしさ」を言語化して、みんなが大切にしている価値観や一緒に働きたい要素を抽出したいと思ったのがきっかけです。

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人事は山登りに例えています。

ミッション:なぜこの山に登るのか?
ビジョン:どこを目指して登るのか
バリュー:どう登るのか?

このMVVに共感する人が集まり「誰と登るのか?」の採用基準にカルチャーが活きています。大切にしている価値観を言語化出来た事でみんなが推奨される行動を体現するようになりました。現在では、組織文化にフィットしている人が評価されています。

「考え方」「感じ方」「大事にしている価値観」が企業文化

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ー浸透を実感したエピソードはありますか?
以前、全事業部の担当者にヒアリングをしました。その時に全員が「会社のミッションはこうだから、うちの事業はこういう役割を持っている」と話してくれたんです。鳥肌が立ったのを覚えています。

広報視点でもMVVCがある事で「なぜこの事業をやっているのか?」「どこを目指しているのか?」のガイドラインになり、メッセージに一貫性が出るようになりました。明文化する事で、社員が自覚し、外に発信出来るようになります。

企業のDNA が組織の中に浸透する事で、アウトプットがブレづらくなりました。「らしい」「らしくない」の判断や、行動基準の明確化、意思決定の基準、大切にしている価値観が揃うので役に立っています。

ー1人1人がMVVCを体現してるとブランドとして強くなりますよね?
その状態にしたくてインナーコミュニケーションに時間を割いてきたのもあります。代表だけが外に発信しても形骸化してしまいます
1人1人が体現することが出来ないと、現実と理想にギャップがある状態になってしまうんじゃないでしょうか。

ー企業らしさを言葉にする意味、価値は何だと思いますか?
「自分たちがなぜやってるのか?」「何を成し遂げたいのか?」MVVCがある事で、社員が共通認識を持てるようになります。目指す場所を定めて向かえる強さは大きいと思っています。

社内だけではなく、社会に対しても「何をしたいのか?」を分かってもらうのはすごく大事です。サービスの機能や価格も重要な要素ですが、体験や思想、価値観で会社が選ばれている時代になっていますよね。
私たちの価値観を伝える意味でもMVVCのガイドラインが非常に役立っています。

人間の考え方は一朝一夕では真似できないし、積み重ねて作られます。
そこで働く人たちの「考え方」「感じ方」「大事にしているもの」が企業文化そのものであり、マネーフォワードの強さも結局は「人」だと思っています。

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【プロフィール文】
株式会社マネーフォワード
社長室 デザイナー 金井恵子さん
2014年1月にマネーフォワードに入社。
プロダクトのUI設計・デザインを担当後デザイン戦略室を立ち上げる。
マネーフォワードのミッション、ビジョン策定や事業コンセプトの可視化を行い、現在は社長室にてコーポレートブランディングを担当。

取材・編集・文/佐藤政也 撮影・デザイン/熊谷怜史


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