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審判の日

 読んでも何ら得るものがない事で評判のシリーズ記事『日本語教師は忙しい』だが、我々現場教師が忙しいのは全て本日7/9に行なわれた聯合免試(通称:撕榜)の為だと言っても過言ではない。然しながらそこだけ聞いて「ああ、聯合免試ね」と理解できる人の数など毎朝欠かさずジョギングをし語学を勉強した後、新聞三紙以上に目を通し健康的な朝食を摂り、日中は仕事に励み夜は美しい妻と可愛い子供との時間を大切にしている男の数ほど少ない(つまり世界で15人ぐらいしかいない)ので説明が必要になるだろう。

台湾の高校や高専の入学試験は『會考』と呼ばれているもので、日本で例えるとセンター試験のようなものだ。つまり全国一律の試験が課され、その結果によって入学できる学校が決まってくるのだが、先ずは第30志望まで学校並びに学科を選ぶことができる。あとは試験結果により合否が判定され、希望する学校に合格できれば申し込むだけでよい。このシステムを『優先免試(以下優免)』といって今年は6月20日(日)に優免の申し込みが行われ、我々教職員一同休日返上で出勤した。読んでも何ら得るものがないどころか時間と電気代と気力を無駄にしてしまう事で評判のシリーズ記事『日本語教師は忙しい』で紹介している地獄の二週間は、この優免の為なのである。(ちょうど優免の結果が出る前後なのだ)

そしてこの優免で希望する学校に入れなかった人間が次に挑むのが本日行われた『聯合免試(以下聯免)』なのである。(優免の枠は日本の文科省にあたる教育部によって決められていて残りがこの聯免の枠になる) 受験前に複数校を選べる優免と違い、聯免の場合は自分の住む地域(といってもざっくり北部、中部、南部としてしか分けられていないが)から一校しか選べない上に、やり方が結構独特なのである。

先ずは成績順にグループ分けされる。1グループは150人単位で構成されるので例えば1位から150位までといった具合にだ。その後説明会会場に入り各学科最後の説明を行う。その後、メイン会場に移り希望する学科を選んでいく。その際、会場にあるパネルボードにはそれぞれの学科の残り枠が張られており、それを一枚ずつ取って行くことから、当校では撕榜(札めくり)という通称で呼んでいる。以下は本日の写真だが少し補足説明する。例えば【日本語学科40 英語学科35】となっていたとする。学生Aは壇上に上がる際、氏名と希望する学科を宣言し、その学科の札を取っていく。「田中一郎、日本語学科」と言った具合だ。そしてパネルボードにある日本語学科の札をとると、その下には残り枠が書かれた札が現れる仕組みだ。先ほどの例で言うと【日本語学科39 英語学科35】となる。まあ分かりやすく言うと日めくりカレンダー方式である。以下は参考画像として本日の様子。

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そして学生は自分の希望する学科の残り枠が0になった段階で入学を諦めるか、他学科を選択する必要が出てくるので、その際に選んでもらうべく最後のプッシュを行うのが我々にとっては重要になってくる。各学科、説明会会場の近くにある教室をブースにして人を呼び込むのもこの為だ。


因みにこれらの数字は会場以外の場所でもモニターで実況中継されており非常にエキサイティングであり自分の学科の札が取られると興奮するのである。

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さて、興奮する理由だが

①自分の学科に誇りと自信を持っているので入学してきてくれて嬉しい
②学校に貢献できた事が嬉しい
③定員に達さないと夏休みがなくなる

と幾つか考えられるが①と②は感じた事がないので、おそらくは③に起因するものなのだろう。

そもそも私が今の学校で専任講師を続けている理由は以下の5つの理由からである。

①夏休みと冬休みがある
②看護学科の副主任が綺麗
③飲み屋のお姉ちゃんに「えー先生なんですか、かっこいいー♡」と言ってもらえる
④愛車ポルシェのローン返済
⑤私を敬愛し尊敬している生徒たちの為

然しながら②最近副主任が忙しいのかあまり校内で見かけない③自宅が市の中心地まで遠いのと、そもそも金もないので飲みに行く機会がめっきり減った上に、仮に行ったとしても全然ちやほやしてもらえない④ポルシェは所有していない⑤私の生徒にそのような人を見る目がある殊勝な生徒がいないし今までも会った事がない。恐らくそのような生徒はネッシーやツチノコのように都市伝説なのだと思う。という訳で結果として既に①しか心のよりどころがないのである。そこにきての夏休み取り消しでは一体何の為に教師を続けているのか分からなくなるではないか。こんなんじゃ夜な夜なファンの女性と飲み歩く有名アーティストや、夜な夜な金の力にものを言わせて若い女性を侍らす大富豪の方がマシに思える。なんだったら彼らと職業を換えてあげても良いように思えてきた。というか換わってください。

さて、そんなこんなで今年も目標入学者数に達し、無事夏休みをGETすることが出来た。先ずは今週末、夏休みを祝う目的で土曜日の午前中は校内テストの試験監督、午後からは学生の実習先訪問をし、日曜日は担任をしているクラス生徒の補助金申請の書類をまとめる予定だ。そして来週からは中学校の訪問が毎日あるので当然出勤だ。夏休みの意味が分からなくなってきた。

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