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ロスト・ジェネレーションによる「声」の採集《準備編》──2019年度のワークショップを振り返る


移動する中心|GAYA」は、2019年11月にプロジェクトの活動メンバーの公募を開始し、他者の語りを聞くことに関心のある12名の「サンデー・インタビュアーズ」とともに始動しました。

サンデー・インタビュアーズのテーマは「ロスト・ジェネレーションによる『声』の採集」。2019年度はその《準備編》です。昭和の時代に撮影された8ミリフィルムの再生を通じて、私たちが生まれる前の時代と、いま生きている時代をつなぎ合わせること。語り手の話に耳を傾けながら、その機会を創出するために必要なことはなにか。「語り手を探す」「語りを聴く」「語りをまとめる」をそれぞれのお題に掲げたワークショップを通して、こうした問いに向き合いました。

さらに、ワークショップでは二人のゲストトーカーを招き、それぞれの専門的な視点から「声」に採集にまつわる経験をお話しいただきました。

見慣れた風景と出会い直す

ゲストのひとりは生活工房・プログラムコーディネーターの佐藤史治さん。佐藤さんは「穴アーカイブ」のプログラムを担当するほかに、「新雪の時代──江別市世田谷の暮らしと文化」(2019)など、世田谷にまつわる展覧会を企画されています。「新雪の時代」展は、戦時中に世田谷区から北海道に入植した世田谷部落を紹介するというもの。

展覧会の準備をすすめるなかで、佐藤さんは郷土資料の調査のほかに、現地での聞き取りを行いました。「北の世田谷」で耳にしたのは、生け垣があった池尻小学校のこと、ほとんど動物のいない上野動物公園のこと──。遠く離れた地で聞いた、70年以上前の東京の話を経由して、見慣れた風景と出会い直す経験を振り返っていただきました(トークの詳細はこちら)。

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理解のフレームをつくる

もうひとりのゲストは、都市社会学者の山本唯人さんです。山本さんは、東日本大震災の津波で被災したのち、集落として解散の道を選んだ岩手県の「泊里」を調査し、研究メンバーと地元の有志とともに『泊里記念誌』を刊行しました。ワークショップでは『泊里記念誌』の編集過程を追いながら、「理解のフレーム」を意識することの重要性をお話しいただきました。

形をもたない人の経験を記録するために『理解のフレーム』が必要である」と山本さんは言います。年表や地図といった強力なフレームは、経験の時間的・空間的な枠組みを把握するために有効ですが、そこから除外されてしまうものがある。語りを聴き、それを記録するときに、絶えず「理解のフレーム」そのものを問いながら組み上げていくことの重要性を指摘されました(トークの詳細はこちら)。

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自身の関心を掘り下げる

2019年度のワークショップでは、「語りを聞く」ことについてさまざまな角度から触れました。同時に、「語りを聞く」ことは自分自身の関心を掘り下げていくことでもあります。2020年度のサンデー・インタビュアーズの活動はここから始まります。

何を好み、嫌ったのか。
いつ笑い、泣いたのか。
どのように喜び、傷ついたのか。
わたしはもっと知りたい。
あなたを。