【100の職種プロジェクト】第3回 内部障害×公務員 あの時の辛さがやりがいに変わる
100の職種プロジェクトはさまざまな障害や特性がある人たちが社会で働く中で、どんな職種や業種で働いているのか、社会で働く障害のある社会人のみなさんにインタビューをし、障がい種別や特性と職種や業種をかけ合わせた100通りの働き方を発掘・発信する試みです。さまざまな障害や特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を実現すべく、Collableのインターン生が取材を行っています!
第3回では華子さん(仮名)にお話を伺いました。
華子さんは生まれつき内部障害があり、地方公務員として役所で活躍されています。役所といえば堅いイメージですが、実際はどうなのでしょうか。明るくパワフルな華子さんに実際にインタビューしました。
———内部障害について教えてください。
3つの内部障害がありまして、まずは先天性の疾患の「胆道閉鎖症(たんどうへいさしょう)」があります。そこから合併症で肝臓の方の血管の「門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)」という病気と7歳の時には「肺動脈性肺高血圧(はいどうみゃくせいはいこうけつあつ)」になりました。寝る時だけは在宅酸素で鼻の下にチューブを入れて酸素投与しています。8歳の頃に心臓の近くにある太い血管の中心静脈に持続の点滴療法を開始して、それを約20年ほどやっていましたが、5年前にその中心静脈は抜きました。ただ就職した時は中心静脈の治療もまだやっていたので、医療行為をしながら生活して就活していた感じですね。
———具体的な仕事内容についてお聞かせください。
一般事務の地方公務員として水道インフラを支える仕事をしています。この春で8年目になるんですけども、役所には事務以外にも土木の人や建設、電気の方といった色々な職種の方がいらっしゃって現場で働く方々はデスクワークをする時間がほとんどないのでその人の代わりに事務処理作業をしているような感じです。具体的には現場の人が作った書類を読み解いて、私達がスムーズに事業を終えられるようサポートします。例えば、マンホールを新しく買い換えるとなった場合に、「部品はどこに頼めば作ってくれるのかな」とか「この部品を作るのにどれくらいのお金がかかるのかな」とか「そのお金の予算はどこから取ろうかな」など、1つの事業をやるだけでも色々なコストが発生していきます。そういったことを専門的な書類を読み解きながら外部と内部を繋げるような申請や事務処理を行います。
現場と外部を繋ぐというか、外の人たちと、中の現場の人たちを直接やりとりすることはあるんですけど、直接会ったりすると、やっぱ現場の人は現場の知識があって、私にはわかり得ない知識があるんですよね。でも、その現場の知識を一般市民に言っても分からないじゃないですか。そうした現場ならではの情報をを外に出す前に、私達が外部の人にわかるように伝えるという仕事もたまにあります。
———役所に入った経緯を教えてください。
中高生の頃は、小学校の先生になりたかったんです。行きたい大学までも決まってて、自分の中で「この教育学部とかに行きたいな」とか思っていたんですけど、現実に考えて肺が悪いのに教育の現場に立つって不可能だなと。自分が体育をやったことないのに、子供たちに教えるとなったら無理だなと思いましたし、高校3年生の時に担任にも「無理だと思いますよ」って言われて「やっぱり無理か」って諦めました。そこで進路変更をしたのですが、病院にずっと通っていたので病院の中で働きたいなと思い、その中でも食べるのが好きだったので栄養士をしてみたいなって漠然と考えて、そのまま短大へ進学しました。
短大卒業と同時に栄養士免許は取れるので、取ったら病院で働こうと思っていたんですが、授業の中で現場実習があるんですね。その現場実習の授業の途中で体調を崩して「これは働くのは無理かも知れないな」となりました。そこで2回目の進路変更になりまして、どんな仕事をしようかなって考えても答えが出なくて、「どうしよう」って思ったんですけど、自分の中で明確にあったのは人が好きだということでした。
たくさんの人と話ができて、出会うことができる職って何なのかしらと思ったときに、今までたくさんの人に助けられてきたということを思い出しました。例えば障害者手帳を持つ時や、難病指定の制度のお話も役所に聞いたことがあって、今までにたくさん助けてもらいました。でもよく考えたら私って人にも助けられたけど、制度とか、法律とか、そういうのにも多分守られてきて、助けられてきたよなということがありました。そこから自治体に就職しようと決意しました。
———やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか。
私のところは6人チームで係長が2人いるのですが、すごく尊敬してるんですよ。今まで他の課もいましたけども、今の係長が一番すごく「この人すごいな」って思う回数も多いし、「私もいつかこの2人みたいに立派な係長になりたいな」って思うことも多いんですよね。総務課の全体のボスである部長とか課長とかもすごく尊敬できて、自分の障害を受け入れて、他の職員と変わらず接してくれるし、しかるべき配慮をしてくれます。そういう環境だからこそ今の職場はやりがいを感じやすい職場です。、
業務のやりがいは、今ちょうど私主体でやっているオフィスの書類電子化が挙げられます。役所って紙が多いイメージだと思うんですけど、書類は何とか電子にできるものは電子化にしなければならなくて、それを総務課の部長が私のチームの係長2人に頼んでいるのを見たんですね。私が興味を持って「係長それなんですか」と聞いてみると、係長が「これな、電子化やってんね。電子化を進めたいから一緒にやろう。」と誘われたことが始まりでした。あっという間にの電子化のその虜になってしまって、「楽!」と思って。電子化をいっぱいしたいなってなって。たくさんある書類、例えば4つぐらいある業務に関連した書類を全部一気に電子にしようというプロジェクトを、私主体で今まさにやってるところなんですよ。「電子化したいです。いいですか。」っていう提案を上の部長クラスまでお伺いを立てて、承認していただいて、ちょうどその提案が通って実施まであともうちょっとってところですね。こんなに大きい提案をしたのも、役所に入って初めてなんです。今まで課の中の人間だけを巻き込んでやってましたが、他のその部署の人たちも巻き込んでやっています。この提案をするまでもだし、その実施に向ける準備もそうだし、実施してからもそうだと思うんですけどめちゃくちゃ苦労しました。
何か1のことをやるのも大変ですが、4つの業務に関連した書類を一斉に電子化するわけだから、扱う書類のボリュームが大きいし、苦労したし、途中心折れそうになりました。
だけど私が「ああどうしよう」とか悩んだりしてるのを周りが見て困っているときは助けてくれました。係長や部長が支えて助けてくれたから、とりあえずここまでは来ることができたのかなと思います。まだ終わってないからなんとも言えませんけど。
やっぱ、どんな仕事も試行錯誤がいるんですよねきっと。試行錯誤して繰り返して、繰り返してやっと「こんな感じかな」「これでうまくいくかもしれへん」って思って実行してうまくいったときはやっぱり、苦労とか葛藤とか、心が折れそうになった時間が一緒にやりがいに変わるんです。自分が残業して、「うーん」と言いながら考えているところを見てる人は見ています。実際に思いがけないようなどこの部署なのかも分からないところの人からも褒めてもらったこともあります。そういうときにやってよかったなと思います。
———学生のうちにやっておいて良かったことや学生にアドバイスがあればお願いします。
私が1つやってよかったなと思うことはアルバイトですかね。アルバイトも、採用がなかなかなくて、当時はまだ点滴注射をやってたので、どこも雇ってくれなかったです。でもこれで落ちたらバイトするのやめようと思って受けた、家の前のコンビニで受かりました。本当に卒業する寸前までそこでバイトしてましたが、やってよかったなと思います。
あとは友達をたくさん作っておいた方が良いと思います。友達は多い方だと自分でも思いますね。小中高の友達も短大の友達もそうだし、あと同じ趣味で繋がった友達がすごく多いかな。好きなアーティストが一緒で繋がった友達とはよくご飯に行きますね。旅行にも行きます。
もう1つは、自分の体についてよく理解しておくことも大事だと思います。もちろん自分で自分の説明できて当然だと思いますけど、就職する上で絶対自分の体のことを知らないと相手に伝わらないですし、ちゃんと伝えないと配慮もしてもらえないですから。察してもらう前提じゃ駄目だと思うし、察してほしいなんていうことは絶対できないからです。
実際にインタビューしていく中で、自身の特性を理解して適切に伝えながらも華子さんの周りが明るい人たちなのは華子さんの人柄ゆえなのだと感じました。私が1つ質問すると明るく時には笑いをまぜながらたくさんお話ししてくださりとても楽しいインタビューになりました!ここでは掲載しきれないお話も数多くありましたが、またお話しできることを楽しみにしています。インタビューへのご協力ありがとうございました!
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