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なぜ大学院生がバーで働くのか

Communicative Bar&Café HANABI

4月13日、高田馬場に新しいバーがオープンしました。
その名も、Communicative Bar&Café HANABI。
〈良きコミュニケーションの場〉を志向する、カジュアルなバーです。
HPはこちら、Twitterはこちらになります。

そして、私青木門斗は、このバーのスタッフとして働きはじめることになりました。
週1回程度、お酒をつくったり、お客様とお話したりするスタッフとして勤務しております。

ところで、大学院生——それも教育学の研究をしている——がバーで働くとは、いったいどのようなことで、なにゆえのことなのでしょうか。
お金のない大学院生にとっての、よいアルバイト手段だったのでしょうか。
そうでないとしたら、私は一体、何がうれしくてバーのスタッフを始めたのでしょうか。

2か月に1回、バーでイベントをした1年間

HANABIで働くことになった起源を遡ると、HANABIのオーナーが以前店長を務められていたお店——学問バーKisiに突き当たります。
学問バーKisiとは、「大学院生・研究者との学問的な会話を楽しめる新宿のバー」です。そんなお店が、Twitterでこのような投稿をしていました。

この投稿の「ワークショップ形式のイベント」という文言に目がとまり、「なにかイベントをしてみたい」と思うに至ったのです。
そして当時学部3年生だった私は思い切ってお店のアカウントに、「哲学対話のワークショップイベントをさせていただけませんか」とDMをしたのでした。なお、哲学対話とは、1つの問いを出発点として互いに語りながら考え合う場のことです。
そんな突然の申し出を温かく受け入れていただき、3月21日に私は「実践!哲学対話 お酒を片手に語り明かそう」と題して、学問バーで哲学対話のイベントをすることになりました。私がスタッフとしてバーに立つ、初めての機会でした。

かつてのイベントフライヤー

とてもありがたいことに、この日、色々なお客様が訪れて下さり、かつ素敵な場が実現し、学問バーでの哲学対話イベントは継続していくようになりました。
それからは、5月、7月、10月、1月、3月と、2〜3か月に1度のペースで開催するようになり、全部で6回の対話イベントを開くに至りました。最初のころは、私の知人がたくさん遊びに来てくれるイベントでもあったのですが、後半になると、初めてお見かけする方も多くなり、私自身も新たな出会いと対話を楽しむ場へとなっていきました。

そうして対話イベントを通じて繰り返し学問バーKisiに関わっていくなかで、当時の店長とも親しくさせていただくようになりました。
その店長が新たに開業されるバーのコンセプトは、〈良きコミュニケーション〉。それは、バーにて「対話」をし続けてきた私の思いと重なるものでした。そうして、いま私はCommunicative Bar&Café HANABIで働いています。

なぜバーに関心があるのか

とはいえ、バーで「イベントをしていた」ところから、バーで「スタッフとして働く」のには、多少なりとも、乖離というか飛躍というかが存在するように思えます。
その乖離/飛躍を埋めたのは、——正しく言えば、「埋まっていたのは」——「バー」という場自体に私が関心を持っていたことです。

私が大学生として——いまは大学院生として——関心を持っている概念の一つは「居場所」です。
人々が居心地よくいられる場所。もちろん、家庭も学校も会社も居場所です。でも、家庭がしんどかったり、学校がいづらかったり、会社では疲れていたりしても、少しここでは居心地がよいと感じられる居場所があってほしいとも考えていました。
そんな折、新宿にあるゴールデン街に行く機会がありました。
そこで感じたのは、バーはまさしく大人にとっての「居場所」になりうるということです。
実際、「居場所」論にとって重要な概念である「サードプレイス」を提唱したオルデンバーグが念頭においていたのも、パブやバーといった場所でした。
その「バー」を目の前で見て、そして自らも過ごして——それからしばらく、私は友人を連れて何度かゴールデン街へと通ったのでした——いくなかで、「居場所」なるもののひとつのあり方を肌で感じたのです。

こうした背景から、私はバーで働いてみたいと思うようになっていました。
そこでのコミュニケーションを、場の在り様を、より間近で見たいと思ったからです。
しかし、忙しさや求めている空気感や環境面など様々な条件から、なかなか「働こう」とまで思うバーには出会えずにいました。(実際、バーの求人は数か月に一度調べていました)

そんなときに、知り合いがバーを開業したのです。それも〈コミュニケーション〉という、私がバーに期待している大きな要素をコンセプトに据えて。それは、私を「バーのスタッフ」へと駆り立てるのに十分な理由でした。

もう一つの、バーを好きな理由。

いや待て、と思った方もきっと多いでしょう。
「バー」のお話をしているはずなのに、一度もお酒の話が出てきていないのですから。(笑)

しかしご安心ください。
バーを好きなもう一つの理由は、お酒自体を好きであることです。
もっと言えば、単なるアルコール飲料としてではなく、「お酒」という様々な広がりや奥行きをもった文化全体に面白さを感じていることです。あ、もちろん味も好きです。

ゴールデン街に通うようになると、私は次第にお酒自体にも関心を持つようになっていきました。
それまではあまりお酒を飲めなかった私ですが、気が付くと少しずつ飲める種類が増えていったのです。
そしていつしか、家にお酒を買ってカクテルを(簡単に)つくるようにもなりました。

特に大きかったのは、クラフトジンとアイラウイスキーとの出会いです。
ジンは、パートナーがジントニックを好きだったことからよく飲むようになったのですが、気付くと私の方がはまり込んでしまいました。様々なバーで飲んだことのないクラフトジンを飲んでみて、自分好みのジンを探しました。そしてやがて、自分の誕生日にジャパニーズクラフトジン「季の美」を自分に買うにまで至りました。
ウイスキーは、当初ハイボールが苦手で飲めなかったのですが、浜松町にある、とあるダイニングバーに行ったときに、他のお客さんがアイラウイスキーの「カリラ」を勧めて下さったことがきっかけで飲むようになりました。その後、いくつかのアイラウイスキーを試し、「ラフロイグ」が美味しいという個人的結論に達しました。
ちなみに、最近はさらにお酒に詳しくなりたい!という思いが高じて、「ジンのすべて」という本を買ってしまいました。

こうしたクラフトジンやアイラウイスキーといったお酒は、居酒屋ではなかなか口にできません。
そうしたお酒の広がりと深みを感じられるのが、バーの良さでもあるのです。

バー初めての方に立ち寄ってもらいたい場所

Communicative Bar&Café HANABIは、バー初めての方にぜひ立ち寄ってみてもらいたい場所になっていると思います。
というのも、居酒屋ではあまりないようなお酒も揃えつつ、私が関心をもっていた「居場所」「コミュニケーションの場」として佇んでいるお店だからです。
私が好きなお酒である「季の美(ジン)」と「ラフロイグ(ウイスキー)」は、どちらもHANABIでもお飲みいただけます。
コミュニケーションを楽しみたい方も、お酒を楽しみたい方も、——そしてこの文章を書いている私と話してみたいと思ってくださったあなたも、——ぜひ、HANABIまで足をお運びください。言葉とお酒を共に交わせる日を、楽しみにしております。

HANABIに置かれている様々なクラフトジン。季の美はおいしい。

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