マンション内の居住者専用コンビニ/ミニショップに持続可能性はあるのか?
マンション共用施設の用途変更を細々と更新しており、そろそろこの話題を出そうかなと思っていた矢先に、質問箱(Querie.me)に以下の質問が来ていました。
思わず熱が入ってしまい長文で回答してしまいましたが、改めて考えてみれば一連の更新にはなくてはならない話でしたので、改めて「マンション内コンビニ/ミニショップ」についてまとめてみようと思います。
居住者専用店舗がある→買い物利便性は悪い
大前提としてですが、居住者専用店舗(コンビニ/ミニショップ)は買い物利便性がよろしくない立地環境を何とかするため売主が設定し、それを管理組合が継承して存在しているケースが殆どです。
近隣に店舗がそもそも存在しない
低層住宅街等の近隣の用途地域的に店舗がなかったり、小規模マンション等が立ち並び商圏として小さい地域だったりすると、近隣に店舗がそもそも存在しないのはイメージしやすいと思います。
そのような環境下で、(時折通り挟んだあたりになぜか近接する)工場・企業跡地等でまとまった戸数のマンションを販売しようとすると買い物利便性がネックになることは想像に難くなく、その場合にはマンション内にミニショップ/無人販売機を設けるケースが見られます。
外出に時間がかかる大規模マンション
例えばタワーマンションや大規模マンションが立ち並ぶエリアだと、近隣に店舗があったとしても1件あたりの敷地が広いため、たどり着くまでに時間がかかることがあります。
その場合には、利便性とステータス性を高める目的でマンション内にコンビニ/ミニコンビニ/ミニショップを設けるケースが見られます。
どちらの事情かはさておくとして、「店舗まで買い物に行くのが少し億劫だなぁ」という立地に設けられることが多いのがマンション内のコンビニ/ミニショップであると言えましょう。
また、元々商圏として成立していれば近隣にコンビニ等が存在しているわけですから、マンション内のコンビニ/ミニショップの採算性はメガタワマンを除き前提として厳しいものがあり、多くの場合は管理組合からの補助金があって成立します。
4つの居住者専用店舗形態
居住者専用店舗(コンビニ/ミニショップ)の形態には4つの段階があると考えています。
このうち、持続性として心配なのは「②ミニコンビニ」と「③ミニショップ」です。
①フルコンビニ
いわゆる普通のメジャーブランドのコンビニです。
50坪(165㎡)以上の…各コンビニチェーンが基準としている…一定の広さの店舗面積を有しており、店内調理に耐え得る電力や換気設備が店舗区画に備わっていることで、利益率の高いホットスナックの提供も可能。
また、集客に直結する酒・タバコも取り扱いがあり、生活利便性を上げるATM・コピー機も備え、深夜も一定の集客が見込めるため24時間運営を可能としているケースが多いです。
主に、メガタワマン(1,000戸以上)はこの形態かなという印象です。
②ミニコンビニ
看板はメジャーブランドでも、店舗面積が小さく、店舗設備も貧弱で、品揃えやサービスに制限がある形態です。
例えば、電力や換気設備が弱いためホットスナックが提供できず、深夜帯の集客が見込めないため24時間営業でないケースも多いです。
この辺りから居住者の福利厚生の位置付けとなり、店舗運営を担えるオーナー企業も限られてきます。
普通のタワマン(1,000戸未満)はこのタイプか、「③ミニショップ」が多いといえます。
③ミニショップ
店舗面積が小さいのは「②ミニコンビニ」と同じですが、コンビニ各社が手を出せない商圏規模(=戸数)であり、マンション居住者向けサービスを手掛ける企業が補助金を受けて運営している場合はこの形態です。
近郊・郊外の大規模マンションに多くみられます。
この辺りから、生鮮食品・牛乳・酒タバコの取り扱いがなくなるケースや、勤労者には使い勝手が悪い営業時間での運営形態になる等、福利厚生施設としても微妙な位置付けとなります。
④無人販売型
マンションの場合は、現時点ではAmazon Goのような出入で精算するシステムではなく、無人ストア600のような自販機型か、もしくは客で操作可能なレジを設置しているイメージです。
このスタイルになると、人件費(店員)はかからなくなりますので、マンション管理組合からの補助金負担がなくなる傾向にあります。
持続性検討にあたり重要な2つの要素
これは珍しいのではないかと自負しているのですが、私は2カ所のマンションの居住者専用店舗の存続を検討するにあたり、先の①~③の形態において検討・主要業者ヒアリングに臨んだ経験を持ちます。
その観点から、居住者専用コンビニ/ミニコンビニの持続性検討にあたり、重要な要素を2つご紹介します。
商圏(商圏人口は何人?)
継続性の観点で特に重要なのは商圏です。
コンビニの一般的な商圏は、
・商圏距離…500m
・圏内人口…3,000人
と言われており、私自身がメジャーコンビニ各社にヒアリングした結果としては、概ね一つの「目安」としては有効であるとのことです。
但し、コンビニブランドによってはロイヤリティや目標売上・利益率が異なるため若干差異があります。
また、昨今の最低賃金・物価上昇は、採算分岐点がより高くなる傾向に繋がっていますし、賃料によっては更に大きい商圏が必要であることは言うまでもないでしょう。
店舗スペック(店舗面積、店舗設備)
さて、購買人口があったとしても、店舗スペックが低ければ期待した売り上げには至りません。 この店舗スペックとは次の2つを指します。
A:店舗面積
コンビニは「何か足りない時にすぐに手に入る品揃えの豊富さ」に価値があり、品揃えとは売上のみならず来店頻度に直結する重要な要素と言えます。
「①フルコンビニ」で言及した店舗面積(50坪/165㎡程度)はある種一つのパッケージサイズであり、店舗面積が狭くなるとここから取り扱いが品目を減らしたり、ストックを減らしたりすることになります。このことは、売上機会が減るばかりか、中長期的には客離れを引き起こす要因の一つになるため、一定の店舗面積が必要になると言えます。
また、「②ミニコンビニ」で触れた通り、ミニコンビニの運営業社は限られていますので、持続可能性の観点からは店舗面積があった方が有利と言えます。
(実際に形態2「ミニコンビニ」で運営事業者が苦しんでいたのは店舗面積でした)
B:店舗設備(店内調理に対応できる電力・換気設備)
具体的には、ホットスナック等の店内調理を可能とする電力と換気設備が備わっているかどうかです。
ホットスナックや店内調理はコンビニの取扱品目の中で利益率が高く、「ついで買い」による客単価向上を図れるため、コンビニ各社が注力しています。
「①フルコンビニ」の誘致においてはコンビニ各社から確実に要求がされることから、逆に言えばこの設備がないと今のコンビニが撤退したら別のコンビニブランドが入る可能性は低いとも言えます。
まとめ
以上より、持続可能性を検討する上においては、
・商圏(居住者専用なら1,000戸以上)
・店内スペック(広さ50坪程度、店内調理対応)
を満たしているかを確認すれば良いものと考えます。
それ以下の商圏・スペックであれば、店舗の継続運営に必要な売上が足りなくなることから、補助金の支出は前提となり、持続可能性検討にあたっては以下の2点を考察する必要があります。
「②ミニコンビニ」の場合は、多くの区分所有者が利便性を享受することで存続が望まれることでしょう。しかし、オーナー企業(運営事業者)が限られることから、契約更改の度に不利な交渉になったり、最悪の場合は撤退申入が想定され、区分所有者の合意形成を困難にする可能性があります。
「③ミニショップ」の場合は営業時間・品揃えに大きく左右されます。特に、勤労世帯の利用が難しい営業時間であれば廃止・別の共用施設への転換を望む声は大きくなりますし、逆に高齢化が進むと管理費上昇を抑えるために廃止を要望する声が大きくなることが想定されます。
どちらにせよ持続可能性検討にあたってはそれぞれ課題がありますので、持続性を重視するのであれば「メガタワマンに入っているフルコンビニ」か、「管理組合の共用施設であるものの外部利用も可能なフルコンビニ」の2択になるんじゃないかなぁと思います。
(次回へ続く)
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