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荘子のはねつるべから学ぶ

先日、先進的なイベントのボランティアスタッフに入らせていただきました。キッチンカーや縁日的な出店を道の駅の様な産直市で行うイベントです。
お刺身やお惣菜、花きなども扱う大型の複合店です。
初めての試みのイベントだったこともあり色々と問題点もありましたが、学びも多く、楽しめました。
その中で印象に残った気づきの記事です。

作業導線と人時管理

普段の私の仕事はスーパーマーケットの店長ということもあり、作業導線(いかに人が短い距離で効率的に動けるかを設計する)と、人時管理(作業を行う人の人数と時間を管理する)は効率を上げるように改善を続けています。(日本の企業で仕事をしていれば常識的な事ですが)
最小の人手で最小の動きで最大のパフォーマンスを上げる・・という設計をしているわけです。
ワークデザインを設計して最も人が必要なところにきちんと人が充てられるようにグラフの様なデザインをしています。

イベントでの導線設計

今回のイベントで特に気になったのが、その作業導線と作業ごとに充てられている人数(人時)が効率が非常に悪かったのです。
お客さんから返却されたお皿を受け取ってデポジット(お皿の返却による返金を行う)をするのですが返却してもらってからカウンター内に入って返金金額を持って渡しに行くようになっていました。
あえて図などにせず、想いだけを書き連ねますが、(わかりにくいままですが)洗い物をする洗う人、拭く人の導線も歩き回ったり、置く場所がバラバラだったりしました。
「導線を変えるだけで現在ここで5人が従事していますが、3人で今よりも早く作業を回せますよ」 とお伝えしたのですが「????」といった感じで話を通してはもらえませんでした。

学生ボランティア

このイベントには学生ボランティアが入っていたのですが、
「私たちが洗いものした方が、他の学生ボランティアより早く洗えてたよ~」
とか、楽しそうに話していました。
学生ボランティアの皆さんは部活動の一環で来られていて、ボランティア証明証がもらえるようになっています。

ボランティアだからこそ楽しんでいる

ここからが本題なのですが、ボランティアの皆さんは効率や導線について気にしていないし、とにかく楽しんでいるんですよね。
デポジットをお支払いする際にはお待たせすることもありますが、待っている方もイベントの主旨を理解していて気持よく待っているんです。
また必要以上に人手があることで、ボランティアスタッフ通しでコミュニケーションをたくさんとることが出来ました。
学生の皆さんとはティーンのSNS事情や、興味がある事など、普段仕事をしているだけではスマホの中でしか調べられないことを直接聞くことが出来ました。
イベントの出店状況を見ても行列になっている店に楽しそうに並んでいるお客さんを見ていると(決して効率よく回せていない各お店の皆さんも)効率や導線設計はここでは無用であることを知りました。
ここで言いたいのは、導線や効率が悪いからダメだ!という話ではなく、私の方が心地よいイベントから導線や効率を求めない考え方を学んだ・・ということです。

荘子のはねつるべの話

荘子の一節にこのような有名な話があります。

子貢(孔子の弟子)が楚から魯の国へ帰る途中、ある光景に出会った。
一人の農夫が、井戸からかめで水を汲んでは、抱えてきて畑にまいている。
力仕事で、いかにも効率が悪い。

子貢は農夫に語りかけた。
「はねつるべという機械があるよ。 使ったらどうだね。
てこの原理を利用するから、水汲みが楽になり、効率もいい」

農夫が答えた。
「私もはねつるべのことは知っている。
しかしだね、便利な機械を使うと、物事を効率優先に考えるようになる。

効率を優先すると、もっとうまくやろうと考えるようになる。
うまくやろうと考えると、純白な心が失われて、天の道をはずれてしまう。
だから、私は機械などを使いたくないのだよ」

荘子 機械あれば機心を生ず (くるくる紀行)

正に導線設計や人時管理はこのイベントでは“はねつるべ”だったのです。
純伯な心、天の道に沿ったボランティアスタッフの皆さんの姿を見て、話しを聞いてボランティアの心得を何か感じ取れた気になりました。

ただ、人数が不足している時や、災害復興の際のボランティアなど、徹底的に効率化、人時管理をする必要があるボランティアもあります。
今回のボランティアに限っては、そのような集まりであった為、とても居心地の良いゆっくりとした時間を過ごしながら、温かい皆さんとご一緒できたことは新たな学びでした。

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