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白いカラス(8) ー空中浮遊ー

消長遷移


消長遷移:
衰退と繁栄、情勢が移り変わること。
消長」は、衰えたり、盛んになったりすること。「遷移(せんい)」は、移り変わること。

Q:建国以来「消長遷移」を繰り返しながら、1945年までに領土を30 倍に拡大してきた専制国家はどこ?


A:それは、ロシアです。



温暖で、雨量も多く、多くの人口を養うことのできる温帯域は争奪戦が起きやすいのですが、緩衝地帯も狙われます。


大戦後、東側との緩衝地帯である西ドイツの存在が重要となりました。その証拠に1950年代になると、アメリカ主導で西ドイツの再軍備化が行われます。

アメリカの対ソ連戦略が4年の間に変化したことが、日本とドイツの憲法(基本法)の違いとなって表れていましたね。

https://note.com/gashin_syoutan/n/n45062dde4960

https://note.com/gashin_syoutan/n/n45062dde4960



中国だけでなく、北朝鮮も核兵器と弾道ミサイル開発したことで、日本周辺の地理空間の政治・外交的な危機が増し、米国は外交・安全保障政策を変化しなきゃならなくなりました。

アメリカが、北朝鮮の脅威を排除するための作戦を実行に移せないのは、大量破壊兵器による反撃の可能性を考慮せねばならず、そのリスクや費用対効果の検証が難しいから。


これらの事実が示すことは、消長遷移なる国際社会のどこにも、安全保障を担保してくれる原理など存在しないってこと。


    ◇       ◇       ◇       ◇

どさくさに紛れる


ある記事へのコメント欄。

「未だにこの国は某国の統治下にあるのか」

遠入のどかさんの「あたらしい憲法のはなし~二 民主主義とは」のコメント欄より

というのがありました。
その人は、某国の統治下で押しつけられた憲法を後生大事にしている自分に気づいていないようです(笑)。


オイラもこんなコメントを頂きました。

・・・異次元の金融緩和以外に何をもたらしたか教えてほしいです。
また「地球儀を俯瞰する外交」の成果が何かあれば教えてほしいです。
「トランプとここまで仲がよかったトップはいない」という説明がとても情けなかったです。

この方は覇権国家のこと、地政学のことをちっともわかっていらっしゃらない(笑)。


ウクライナとベラルーシはロシアと北大西洋条約機構(NATO)との緩衝地帯として重要な位置を占めています。

ウクライナへのロシアによる侵攻を目の当たりにした日本の国民某国の統治下で押しつけられた憲法の改正について考えようとしています。

ウクライナ侵攻  国民の国防意識が高まった  憲法9条の改正議論が求められている
なら、論理の展開として正しい。


どさくさに紛れる: 混乱や混雑、事件で取り込んでいる状態を利用して勝手なこと・悪事を働こうとすること。

「自民党はどさくさに紛れて憲法を改正しようとしている」っていう人がいます。

ところがどっこい、「どさくさに紛れて」が、「ウクライナ侵攻」と「憲法9条の改正議論が求められている」の間にある「国民の国防意識が高まった」という文言をどこかへやってしまいました。

どさくさに紛れてフィッシングなまねを(笑)。

https://note.com/gashin_syoutan/n/n337442f41a4f

https://note.com/gashin_syoutan/n/n337442f41a4f


どさくさって言いますけど、そもそも憲法改正論議は悪事なのですか?
憲法改正論議は、混乱を利用した勝手なこと

いえいえ、憲法を改正する手続きは憲法に記載されている国民の権利ですから。

正しい因果関係は、
ウクライナ侵攻 ⇛ どさくさにに紛れて「憲法議論から」逃げ出す
ですよね。
それなのに、どさくさに紛れて議論から逃げることで、憲法違反を推し進めようとしている不思議。

これじゃ、憲法を尊重したいのか、尊重したくないのかわからない(笑)。

そもそも、豊臣秀吉が文禄、慶長の二度にわたって行った朝鮮出兵は、憲法9条がなかったから? 
いえいえ、憲法9条の存在の有無ではなく、独裁者の意思によるものであることは言うまでもありませんね。
いいですか、独裁者の意思ですよ、独裁者の意思


行政に大きな裁量権を持たせているのは、国民へのサービス向上のため。
でも、裁量権は迅速で臨機応変な対応を可能にする一方で、専断的で間違った使用の危険性をはらんでいます。

だからといって、前回の『白いカラス ー天秤ばかりー』で紹介したように、例外事象を原則全体の瑕疵としてしまったら、本来の主旨を歪めてしまいます。


憲法9条の改正という手段を講じる前に、まずは改正の目的=憲法改正の主旨を明確にすべきです。

そのためには、消長遷移を常に忘れず、某国の統治下で押しつけられた憲法改正目的がどこにあるかを考えられる脳が必要となります。


    ◇       ◇       ◇       ◇

正しい決定


「安倍首相の言う積極的平和主義は、米軍と一体となって戦争に参加できる国づくりを狙うもので、日本国憲法が求める恒久平和主義とは相入れない・・・」
「憲法を改正したいって、そんなに戦争がしたいのですか?」
って言う人がいます。

要するに、「『正しい決定(憲法9条=平和憲法)』に同意しないのは間違いだ」と主張している訳です。

でも、憲法改正 ⇒ 戦争開始
で示されるような因果関係はありません。

「日本は軍備を放棄しなければ、戦争を仕掛ける」という因果関係がないのに、憲法改正を阻止したいということは、何を意味するのでしょう?

言うまでもなく、「侵略されても反撃できない国」であることは「正しい決定」だ、と信じているってこと。


では、「憲法9条=平和憲法」や「侵略されても反撃できない国」であることが本当に「正しい決定」なのでしょうか?
いえいえ、正しさの基準を明確に示してくれなければオイラは納得できません。

正しい決定」と言うためには、
利益を得る人(受益者)が誰か
さらに、受託者は誰か?
をはっきりさせなければなりませんね。

いいですか、「侵略されても反撃できない国」にした時の受益者は日本国民ではありませんよ。
では、受益者は誰かって?
それは、隣国に決まってるじゃないですか。
もちろん、受託者もね。

実際、受託者に忖度していると思しき(おぼしき)人がTVや上海電力で活躍しているようですね(笑)。


    ◇       ◇       ◇       ◇

言うは易く行うは難し


塩鉄論(えんてつろん): 前漢時代の朝廷で開かれたの専売制などを巡る討論会(塩鉄会議)の記録を、桓寛(かんかん)がまとめた記録文学。
「本議」から「雑論」まで10巻60篇から構成されています。

言うは易く行うは難し:口で言うのは容易い(たやすい)けれども、それを実行することは難しいという意味。出典は塩鉄論の「利議(りぎ)」。



「日本がオピニオン・リーダーとなればいい」と言う人に対して、オイラなら「オピニオンリーダーになって、こちらの言い分を通そうと思えば、日本は覇権国家にならなきゃなりません」って答えます。

それに、国内法であれ、国際法であれ、憲法9条を唱えるだけでは、ロシア、中国が良心的に行動するようにはなりません。

「平和憲法に従え、従わないと罰がくだる」という神の言葉になれば、話は別ですけどね(笑)。


コンスタティブな物言いとは、
「人の命は地球より重い」
「人は生まれながらにして自由かつ平等であり・・・」
「 二度と戦争を起こさないために、平和憲法を守り、国際平和を実現していくことこそ ・・・」

これって、普遍的な響きを持つお題目を高々と掲げ、私情に訴える論法ですよね。ただただ、論理冷静な比較衡量を許さず、人を思考停止に追い込むだけで、問題解決には何ら貢献しません。

まさに、言うは易く行うは難しです。


https://note.com/gashin_syoutan/n/n19a4a14f3d92

コンスタティブな物言いをする人は、何かの恐怖症でなければ、自分を安全域に置いたままのチェリー・ピッキング、あるいは、隣国政府を受益者にしようとする内通者。

「憲法9条を唱えていれば、平和になれる」っていうのは、浮かれすぎ、それとも、麻原彰晃の空中浮遊術ほども浮いていない(笑)?


    ◇       ◇       ◇       ◇


パンデクテン



欠缺(けんけつ) :「法律で、ある要件が欠けていること」
無欠缺性(むけんけつ) : 「法律に欠けているものなどない」


パンデクテン
とは、『ローマ法大全』のうち著名な法学者の学説を編纂した『学説彙纂(いさん)』のこと。

19世紀半ばから第二次世界大戦までドイツでは、パンデクテン法学といって、「いかなる紛争が生じてもそれを規律する法規範を論理的に導き出しうることを目指す」という考え方がありました。

法体系の無欠缺(けんけつ)性に全面的な信頼を置いていたところが、いかにも律儀なドイツ人らしい(笑)。

確かに、体系的な構成になっており、重複を少なくして広い解釈が可能とした分、条文の数は少なく、必要な条文を検索しやすい、といった利点はありますが・・・。


ただ、「適切な(正統な)法実定法規範さえあれば」、いかなる紛争に対しても個人の主観に左右されない論理操作(事件を法規範に包摂するという三段論法的な操作のみ)で正しい解決を導き出すことができる、という無邪気さが命取りとなりました。

結局、「適切な(正統な)法実定法規範」という理想は存在しないと気づいたって訳なんですけど、そこに至るまで、なんと1世紀もかかってる(笑)。


そもそも、無欠缺性(法律に欠けているものなどない)だなんて、最初からユートピアすぎますって(笑)。


    ◇       ◇       ◇       ◇


現実主義と空中浮遊


空中浮揚:何らかの作用によって物体が空中にとどまること。
何らかの作用とは、重力を打ち消す上向きの力が働くこと。
空中浮遊はオカルトや神秘主義、あるいは奇術の演目。

聖人トマス・アクィナスにも空中浮揚の逸話が伝わっています。

オウム真理教が公表していた「教祖の浮揚」ですが、麻原の力んだ表情と逆立った髪の毛から、跳躍した瞬間の写真であることは明白(笑)。

オイラは筋金入りの高所恐怖症です。
ただ、高所恐怖症でない人だって、飛行機から飛び降りると地上に落下して死んでしまいます。ニュートンの名前を引き合いに出すまでもなく、引力に引っ張られて落ちるから。

空中浮遊の能力を持たない限り、飛行機から飛び降りないという常識を持つしかありません。


ウクライナは穀倉地帯であり、ロシアの食料庫。工業力も高く、ソ連時代には核ミサイル基地もありました。また、ウクライナは、黒海への道であり、EUに隣接している緩衝地帯=軍事的防波堤
ところが、冷戦終了後、NATOは3度にわたって、ロシアに向かって拡大しています。
それを嫌ったプーチンは、ロシアとウクライナの歴史的・民族的一体性を強調し、ウクライナに侵攻。


ここへ来て、理想主義平和主義が強いとされたドイツが防衛予算の大幅増を決めました。

それは、ドイツの指導者が平和主義理想主義といった抽象論信仰合理性のない独断的な先入観に過ぎず、場当たり的な正義感覚以外に根拠を持たないことに気づいたってこと。

要するに、現実主義とは空中浮遊への憧れからの覚醒のことなんです(笑)。


    ◇      ◇       ◇       ◇

地経学(ジオエコノミクス)


アジア唯一の列強である日本が、アジアからヨーロッパ、アメリカの勢力を駆逐し、日本とを中心としたアジアの国際秩序を形成するという民族主義的な理論が大東亜共栄圏

この生存圏を構築することで、日本は資源を他国からの輸入に依存せずに済むのだから、リスクをとるほどのメリットがあると踏んでいました。

https://note.com/gashin_syoutan/n/n7ad1c739edec


しかし、日本だけではマーケットが小さすぎて、植民地における労働者の職を奪う結果となったのです。こうして軍事的に支配しただけでは経済的な成果を得られない、という教訓を得たのが、先の大戦でした。


国益を守り、推し進めるため、経済を武器として使うことが地経学(ジオエコノミクス)であり、経済安全保障とほぼ同義となります。

資本主義においては、コストパフォーマンスが重要となってきます。
パイプラインだって、設置場所の地形でコストが変わりますし、技術的に可能でも、利益よりコストが大きいなら、(経済的理由で)実現できません。
飛行機が発達した現代社会においても、重くて大量の物品を輸送するには、安価に運べる海運は競争力を失っていません。

国家のせめぎあいが経済分野に移りつつあるとはいえ、地理的条件経済活動の効率を左右する現実は変わっていません。

ロシアは、油・ガスを使ってロシアに依存させることで、軍事的に制圧せずとも、リベラルな指導者を戴いていたドイツをはじめとするEU諸国をロシアの統制下に置くことが可能な状態を作り上げてきました。

https://note.com/gashin_syoutan/n/n503c7d5454a7

そんな策略にまんまと引っかかっているのですから、ロシアに打撃を与える経済制裁は有効でなくて当然。それより、中国が漁夫の利を狙っています。

ロシアへの経済制裁がはじまったおかげで、英のシェルがサハリン沖のLNG事業「サハリン2」の権益売却に向け、中国企業3社と交渉を始ました。

中国からすれば、輸送費も安くなる喉から手が出るほどほしいエネルギー権益です。さらに、サハリン沖に権益を手に入れれば、輸送船護衛の名目で日本海に軍艦を往来させる絶好の機会となるのです。

米国主導の国際秩序に対する違和感、そして経済よりも地政学的利益を重視する覚悟は、ロシアと中国に共通しています。

経済を武器として使うことがいかに難しいか、思い知らされましたね(笑)。


    ◇      ◇       ◇       ◇


地政学(ジオ・ポリティクス)


どんなに技術が発達しても、人間は地理的条件の束縛から逃れられません。

一国の地理を理解すればその国の外交政策が理解できる」と言ったのはナポレオン・ボナパルトでした。

日本が大陸と日本海・太平洋を隔て、海流や季節風に守られた島国で、海外から攻めづらかったこと。
あるいは、自給可能な面積があるため、貿易をしなくても国力を維持できたことが、日本が長きにわたって独立を守れた大きな理由です。


13世紀の鎌倉時代に、二度にわたり元が襲来(元寇)しましたが、日本海の荒波や暴風に祟られ、日本への上陸に失敗しました。

日露戦争(1904年)で、日本海軍が勝利を収められたのも、同盟国である英国からの情報と、ロシアのバルチック艦隊が大西洋から喜望峰を超え、インド洋を経由して日本海に至る間に疲弊した結果。


さて、問題です。

Q:なぜアメリカが台湾問題に口を出すのでしょう?

A:台湾がアメリカの防衛網の一部だから。

つまり、遠すぎて戦略的に意味を持たない地域、離れ過ぎてパワー・ポリティクスに無関係な地域など存在しない、ということです。


地政学は「政治の地理学」ともいわれますが、国同士の利害対立の原因となる地理的条件から、その対立の分析を試みる学問であり、国土(領土・領空・領海)といった「空間」から国際関係を見る学問
安全保障論には地政学を学ぶことが欠かせません。

地理的な側面から国家のふるまいを検証する地政学を学べば、国家の意思を見抜けます。

中国の「独裁者の意思」がどこにあるかと言えば、単に資源があるから尖閣列島を狙っているのではありません。
「防衛ラインを本土の東海岸から、台湾の東海岸に移動させたい」のです。
それだけでなく、台湾海峡の制海権を確保した上で尖閣諸島を制圧すれば、太平洋進出は容易になるのですから。


国家というものは「地政学上の与件」から自由ではありません。モノ・カネと違って、近接している極東ロシア・朝鮮半島・中国は動かしたくても動かせない永遠の危険な隣人なのです。

今こそ、日本人には空中浮遊からの覚醒が求められています。



     ◇      ◇      ◇       ◇


犠牲者無き戦争(Post Heroic Warfare)


日本だけでなく先進国では、「戦争による犠牲者を寛容できない政治情勢」が蔓延しています。
上述のように、大規模な犠牲者が懸念される軍事行動に踏み切ることは政治・外交上のリスクです。

さて、日本と中国・北朝鮮、理性的国家はどちら?

核兵器を使用する戦争は、どちらも勝利を確信できませんから、アメリカも中国や北朝鮮に手を焼いているのでしたね。


 1592年、朝鮮出兵した小西行長によって平壌が攻略された時、が直ちに 5,000 人の兵を派遣したことが示唆しているのは、朝鮮半島が地理的・地政学的に重要だということ。

また 1950 年代後半、米軍を中心とする国連軍が平壌まで接近した際に、中国が急遽兵力を派遣したのは、北朝鮮が共産主義と自由主義国家の緩衝地帯だから。

もし、在韓米軍が朝鮮半島から去ったら、日本が緩衝地帯になってしまいます。

将来にわたって日本が存続し、繁栄を維持するためには、国民が日本を取り巻く地政学的環境を直視し、独立国家として安定的な戦略環境を主体的に醸成する努力を続けること。

空中浮遊で遊んでいるうちに隣国に日本の命綱を握られてしまったら、取り返しがつきませからね。


    ◇      ◇       ◇       ◇

地政学的リスクと制海権


ローマ帝国とカルタゴとのポエニ戦争。
当時、地中海の制海権を握っていたのはローマ帝国でしたから、地中海南岸と西岸に拠点を持っていたカルタゴの船は沈められました。
もし、海を避けるとなれば、アルプス山脈を越えなければなりません。

結局、戦いに勝ったのはどちらだと思います?

答えは申すまでもなく、制海権を握っていたローマ帝国ですよね。


広大な国境線を接していた旧ソ連への備えから、中国人民解放軍が陸軍中心で組織されていたのは1990年代まで。

それまでは、アジア集団安保構想の下でアジアへの接近を図っていたソ連を激しく批判していました。
1972年の日中共同声明では「アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきでなく・・・」と真っ赤なウソ=反覇権主義を掲げたりして(笑)。

冷戦が終結すると、ロシアは中国との関係改善に動きます。結果、両国の国境問題は解決。

中国は太平洋へと勢力を拡大しようとしている理由を、どのくらいの日本人が知っているのでしょう?

制海権とは、ある海域において、自国と敵対する船を自由に航行できないように支配する権力。


1997年、「海軍発展戦略」の中に、第一列島線および第二列島線という防衛線を勝手に設定し、その内側にある南シナ海・東シナ海・日本海からアメリカ軍を追い出そうとしているが隣国です。
勝手に標榜した核心的利益である尖閣諸島や南シナ海の諸島を手に入れるには、アメリカの存在が目障りとなります。


では、日本に目を向けると?
原油の9割以上を中東からの輸入に頼っている日本において、海上輸送抜きに経済は語れません。

原油の輸送には、海上交通ルート=シーレーンで70日以上かかります。

原油を積んだタンカーは ペルシャ湾 ⇛ ホルムズ海峡
            紅海 ⇛バブ・エル・マンデブ海峡 ⇛ アラビア海
それからインドとスリランカの南を通り、ベンガル湾、アンダマン海からマラッカ海峡を南東へ抜ける。
南シナ海を北上。
台湾の南、バシー海峡から東シナ海あるいは太平洋を経て、日本へ。


もし、中国が尖閣諸島と台湾近辺の制海権を握ったら?


上述のように、このシーレーンは日本の生命線でもあるのです。
日本にとってこのシーレーンの安全保障は最重要課題であることを知らなければ、憲法議論の目的などわかる訳がありません。

コンスタティブ=言うは易く行うは難しではいられません。

台湾有事が日本と切っても切れない関係にあることなど、もはや説明の必要はありませんよね。


日本はアメリカの忠犬ハチ公だと揶揄する人がいますが、日本が本来、死守すべき使用頻度の高いシーレーンを守ってくれている国がどこかを知っていますか?

現在のところ、要衝となる海峡(チョークポイント)を守ってくれているのはアメリカ海軍なのですよ。
日本の置かれている立場がわかりますか?

西沙諸島は、マレーシアから台湾へ向かうルート上にあります。そこでの基地建設が国際世論の批判を浴びていますが、オバマ政権の初期対応の誤りにより、中国は意に介さなくなりました。

もし、中東への石油依存度が低下してアメリカが手を引き、中国が南シナ海の制海権を握ると、どうなってしまうのだろうって考えられない人は、どうぞ空中浮遊の術を磨いてください(笑)。


中国が、米軍が防衛している台湾を併呑して前進基地とし、勢力を太平洋に伸長できるようになれば、日本は中国にNoと言えない国になるのですよ。

中国ガス田開発、4基進行

日中は08年に東シナ海ガス田の共同開発で合意しているのに、沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後に交渉は中断。
話し合いはしないが、勝手にガス田は開発する。

約束も守らない国、話し合いが出来ない国って、日本のことを指すのでしょうか?


習近平体制下の中国は米国との「新型の大国関係」を公然と求めるようになりました。
中国の地政学的欲求の到達点が米中のすみ分けであることは、2007年に訪中したキーティング太平洋司令官が、中国の軍幹部から「太平洋をハワイで東西に分け、米中で分割管理しよう」と提案されたことからも明らかです。

日経新聞の見出しをご紹介しましょう。

中国、太平洋戦争の要衝へ 米豪の怒り誘う南方進出

中国、南太平洋要衝で滑走路調査 米豪と対抗姿勢にじむ  ハワイから約3000キロ



中国を受託者とする(?)立憲民主党は言います。
台湾有事の際に政府は「アメリカ軍を動かないように交渉しろ」と。

利益を得る人(受益者)が誰かを考えながら地図帳を眺めることができるあなたなら、制海権を握らないこと、シーレーンを守らないことが「正しい決定」かどうかなんて、今さら聞かなくてもわかりますよね。


    ◇      ◇       ◇       ◇

パックス・アメリカーナは過去の遺物


パークス、パックス、パクス(ラテン語)ローマ神話に登場する平和と秩序の女神。
「パクス・ロマーナ」の象徴。
 

パクス・ロマーナ:帝政ローマによる秩序の回復=ローマ帝国の全盛期の「ローマによる平和」に由来。

パクス・モンゴリカ:モンゴル帝国

パクス・アトミカ:核抑止:

1960年代、仏戦略研究所所長アンドレ・ボーフルは、国際的責任を果たすことのできる理性的国家間であれば、核兵器による抑止効果戦略的安定性がもたらされる、と述べています。

英国は18世紀半ばに工業化を進め、生産された製品の需要を求めてインドやマレーシアを植民地化し、経済力を高めました。
そして、海路の安全確保に努めることで、世界の海上物流を支配。
結果、各国は英国に挑戦することなく、平和でした。
これが、いわゆるパクス・ブリタニカ(英国による平和)。

1853年、太平洋を越えて黒船が来た目的は、捕鯨のための寄港地確保。
すでにアメリカは1840年代末までに、太平洋岸までの領地を獲得したのです。
アメリカが生存圏を広める理論的支柱となったのが、世界に自由を広める運命を背負っているという「明白な運命(Manifest Destiny)」。

パクスアメリカーナとは、超大国アメリカ合衆国の覇権が形成する「平和」のこと。

アメリカが世界の警察を演じていた理由は、世界の物流・経済で主導権を握るためです。
その一環として、要衝である国と同盟を組むことでシーレーンの安全確保に努めてくれていました。
でも、今後アメリカが、この海域から手を引いたら、日本はどうなるでしょう?

「中国語を話す人々が差別されている」
「中国人を保護する」
「日本に侵略を受けて、領土の危機に追い込まれたという苦難の歴史を清算する」

ってな言いがかりをつけて、侵攻してきた時、シーレーンを抑えられてしまった日本には反撃のチャンスすら手に入らないのですよ。


つまり、中国が覇権を握った時、少なくとも日本において、パクス・チャイナが実現する蓋然性はないってこと。

「パクス・五月蠅い(うるちゃい(笑))な」にでもなったら、空中浮遊どころか、日本人は海の底に沈められてしまうかも シーレーン ませんぞ。

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