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笑顔のために

はじめに

 私は大手メーカー総合職として、とある事業所で働く新入社員だ。その事業所には、工場も併設されており、実際に量産ラインの現場を目で見ることができる。今回は、総合職として働く私と、現場の生産ラインで働く人の関係性について話したい。

新入社員と先輩社員

 私は総合職として配属になり、数週間は工場にて現場実習を行う事になった。現場実習を行う数日前に配属先の総合職先輩社員からこう言われたことがある。

「現場の人は仕組みとか上流の話は興味ないだろうから、わからないことは私に聞きな」

 この言葉には少し違和感を覚えながらも、私は現場実習へと参加する日を迎えることとなった。

新入社員と現場社員

 現場で働いていたのは「Sさん」と呼ばれる男性だ。日頃から運動をしているのか、体格が良く、日に焼けている。Sさんは仕事に対してとても熱心で、とにかくよく動く人だった。どうすればいいかわからない新入社員の私にも優しく接してくれたし、沢山話かけてくれた。

 現場実習の内容は納入された荷物を仕分けして、所定の位置へ運んだり、内容物の確認をするといった作業であった。数日間で仕事に慣れ、実習は順調に進んでいた。しかし、同じ単純作業を数週間続けていると、だんだんと疲れが見え始め、正直「つまらない」と感じ始めてしまった。

 ある時、Sさんと一緒に休憩することになった。Sさんと他愛もない会話を続けているうちに、Sさんはこの仕事をどう感じているのか気になって質問をしてみた。するとSさんはこういった。

「そりゃ、つまらないよね、、。でも、今の自分にできることがあるのが嬉しいんだ。それに、地方の家族も待っているから、とことん今の自分に出来る事をやるつもりだよ。」

 そう言って、家族写真を見せてくれた。そこには満面の笑みであふれる家族の姿があり、私も思わず笑顔がこぼれた。さらにSさんは続けた。

「総合職と現場の社員だと役割や求められる成果も変わるよね。それに、立場や給料まで違う。でもね、最高の製品をお客様に届けるのは、みんな同じ役割なんじゃないかな?」

 私は、考えさせられた。職種や役職の違い、年齢や性別の違い、価値観の違い、様々な違いがあろうとも、求める場所は一緒だと。

新入社員とメーカー

 私は先輩社員の言葉が引っ掛かっていた。

「現場の人は、、、興味がないから、、」

 多分そうじゃない。

 総合職だろうが、現場の社員だろうが関係ない。
 必死に汗水垂らして製品を作る人がいる。
 必死にそれをうまく作れるように設計する人もいる。
 必死に大切な製品を広める人がいる。

 いろんな人の人生と想いを乗せてメーカーはものを作ってるんだ。ちょっとの違いを乗り越えれば、それらは見えるのに、見ようとしない人がいる。私は今の気持ちを忘れないように、Sさんに時々会いに行く。想いを踏みにじらないよう私が頑張る為、そして、Sさんの笑顔を誰かへ届けるために。

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