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四季の里演劇祭 感想

2024年7月13日(土)・14日(日)
茨城県小美玉市 市立四季文化館みの〜れにて、四季の里演劇祭が開催されました。

運営の中心メンバーは、茨城県に拠点を置き全国で上演をおこなってきた〈イチニノ〉の皆さん。〈イチニノ〉が各地で繋いできたご縁が茨城の地で結ばれ、全国から30団体以上が参加する盛大な祭りとなりました。

がらくた宝物殿は、イチニノさんとは今回の演劇祭が初対面。つまり、イチニノさんが繋いできたご縁の網目に便乗してきた得体の知れない団体として我々は現れたことになります。しかもSNSで検索しても我々はそんなに話題にのぼっていません。にもかかわらず応募を弾かず受け入れてくださり、本当になんと申し上げていいか……。……なんと申し上げたらいいでしょうか?

イチニノおよび運営チームの皆さん、ご来場いただいた皆さん、他の参加団体の皆さんのおかげでできた貴重な経験。我々の演目や準備行程については団内で振り返るとして、とりあえずここでは観劇できた演目についての感想を。いや。その前にひとつだけ、これは一番大きな反省点でもあるんですが、せっかく多くの団体が参加する演劇祭にいくのだから、我々はもっと他の劇を見る体力の残る劇をしないといけなかった! 上演枠かぶり等で物理的に見に行けなかったところもありますが、ただ体力ぎれでぶっ倒れているうちに他の団体の上演を見逃してしまうことがありました。我々の演目をたくさんの人がわざわざ見に来てくれたのに、我々は動くことができない時間があった……。「わざわざ」というのが最近の私の中ではキーワードなので、今回、体力きれててもわざわざ動けなかったことは大いなる反省を要します!! 演劇は終わってしまったらもう見られないということは頭ではいつもわかっているんですが、私はこの後悔を人生であと何度するのでしょう。
見られなかった団体については、今後の活動の中で必ずお目にかかりたいと思っているので、皆さんぜひ活動を続けてください……我々もがんばります……

ということを反省した上で、なんとか見ることのできたものについての感想。団体を名乗るアカウントではありますが、私(Gianometti)による個人的な感想です。各タイトルは四季の里演劇祭ホームページ掲載のもの。正式タイトルはそこから変更になっているものもあるかもしれませんがご容赦を。

以下について触れます。
【見たもの】
●マルレーベル《万歳 2024edition》
●演劇修団たまてばこ《姉の元カレと付き合っている妹の恋人に言い寄られる女の話》
●集団たま《シンドラーのリフト》
●ラクイチラクザ《庭/キスシーン》
●非・売れ線系ビーナス《ゴドーを持ちながら》
●劇団ヒロシ軍《今更、おまえが青春のことをアオハルって言ったところで誰も何も思わんよ》
●Team Swit©h《竜の棲むいえ》
●劇団シアターホリック《樺沢家抜粋》
●アクターズ仙台《Prelude -天使が生まれた日-》

マルレーベル《万歳 2024edition》

いつのまにか始まる演目。素朴な動きが次第にダンスであることが明かされる。メインのダンサー(役者?)は目隠しをしているめ、観客の反応に反応することはできず、自分の踊りによる感覚に集中している様子。私が見た回では、アクティングスペースのベンチを賑やかな中学生たちが上演より先に占領していて、彼らが演目にも気がつくまでの時間がおもしろかった。気づいた後には、気恥ずかしさもあってかおどけて踊りを真似ていてそれもよかった。
演目の初めの方、観客役?のけーもが看板にかけてある虫よけスプレーを妙な距離と抑制した動きで見つめたりしていて、そこはちょっとやりすぎな気もしたけど私がけーもをマルレーベルの人だと知っていたから気になっただけな気もする。
四季の里演劇祭の、参加者間にゆるく優しさのにじむ和やかな環境のおかげで安心して見ることができた。

演劇修団たまてばこ《姉の元カレと付き合っている妹の恋人に言い寄られる女の話》

ごはん食べるなら今だと風のホールに駆け込んで、食べ物をゲットしたのが、間もなく上演開始というタイミングだった。といった事情もあり、しっかり客席に座れず後ろで食べながら見て申し訳ありません!! と思いながら見始めたのだけれど、それも相まって新鮮な観劇体験をした。演劇祭ホームページの団体紹介に「メンバーはいずれも高校演劇出身」と書かれていて、そのルーツを大切にしていることがわかる。トメが気持ちのよい会話と動きで構成されていたので、食べながらでも内容についていけてしまい、それって案外すごいことだよな、と思った。風のホールは舞台壁面が簡易パーテーションだったり周囲もガヤガヤしていたりで作品の内容にとってはベストな環境ではなかったかもしれないけれど、なんだか妙に成立していた。そういえば高校時代、演劇部の人たちは妙に反響する多目的室なんかでベストじゃない環境の中ハイパフォーマンスを発揮するためがんばっていた(なんならそれが「なんかいいな」につながっていたようにも思う)。場を味方につけるやり方にも色々あることを学んだ。

集団たま《シンドラーのリフト》

呼ばれて行ったはずなのに目的へはたどり着けず、なにか別の流れに取り込まれはじめ、引きずられまいとしながらもいつの間にか順応すらしているという、カフカ好きにはたまらない土台と会話。一見子どもが見ても楽しめそうな優しい演出やくだりが散りばめられているのになぜか妙にずっと怪しく怖くもあるというのもよかった。オリジナルであろう歌が印象的だった。まだ口ずさめるし、ふとしたときに頭の中で流れている。見たあとに思い出して噛み直せる演劇は私にとってはありがたい演劇なので、これはうれしい。怪しい感じの炭坑節?も心を離れない。あれはどなたの歌なんだろう。チャイムを鳴らすのが上手くて一回もかすっていなかった。キユーピー人形みたいな場転もすごく効果的で、ダークお伽噺ボルテージがガンガン高まった。

ラクイチラクザ《庭/キスシーン》

新宿の劇場を中心に活動している芸人さんで、年末の単独公演に向けてキャンペーン中とのこと。場数をこなしてきたネタなのか安定感があり、日中の外だろうと全然大丈夫どこでもできますと、言ってはいないが言ったも同然な頼もしさを感じた。ちゃんと気持ち悪く(かつ爽やかに)見せるために身体の動きに細やかな注意を払っていて、器用でかっこいいと思った。

非・売れ線系ビーナス《ゴドーを持ちながら》

演劇祭スタートと同時に、帽子を被ったふたりがビラを撒いていた。ふたりはゴドーを探しているという。ビラに載せられた二次元コードを読み取るとLINEのオープンチャットに入れる。オープンチャットに、このあたりにゴドーさんがいるかもしれないから行ってみますというような案内が来て、そこに行くと集まった人でゴドーを待つイベントが発生。初日の最後は、我々の上演直前の芝生広場でそのイベントをやってくださった。ちょうど客席用に我々がレジャーシートを敷いていたのでそこにみんなで座り、ゴドーコール。するとオープンチャットに連絡が入り、ゴドーから来ない旨が告げられる。樹の下で待っていたところでゴドーは来ないことを我々は知ってしまっているはずなのだが、お茶目にゴドーを探してウロウロするふたりを見ていると「そんな動き回るから会えないんじゃないですか! その場で待っていた方が会えるのでは?」と声をかけたくなった。あのすばらしい妙な哀愁はなにによって実現していたのだろう?

劇団ヒロシ軍《今更、おまえが青春のことをアオハルって言ったところで誰も何も思わんよ》

加減のうまさがすごかった。初日の夕方、開演前に客席に座った非・売れの方々と掛け合いしながらプレ出し物をしていた。ずっとこの感じだったら内向きすぎて嫌だなと思っていたところ、だんだんその視線が他の観客も取り込んでいっていつの間にか内に迎え入れられた感じになっていて、むしろうれしくなってしまった。人の和に入れてもらえる、しかもおもしろい人たちの和に入れてもらえることのなんと幸せなことでしょう。その後のネタもお客さんの反応を受けて加減を見ながら投入してくれてノりやすかった。フルドライブ林さんの雰囲気がめちゃくちゃよかった。がらくた宝物殿の役者が、どの稽古でも見たことないくらいしっかり笑っていた。演劇祭の前と後の移動もエンターテインメントにしてしまうのもすてき。破天荒に見えてめちゃくちゃ気遣いに溢れた人たちだった。

Team Swit©h《竜の棲むいえ》

2日目、雨天時タイムスケジュールの中、中庭での上演を敢行した朝一番の上演を見た。今にも雨が降りそうな天気と演目の内容が重なるところがあった。風が吹くと頭上の木の葉から雫が落ちてきた。ちょうど客席最前と役者の間にボタボタと。ほとんどがひとり芝居で進むのだけれど、ほぼ常に身体をしなやかに動かしいるのが心地よかった。

劇団シアターホリック《樺沢家抜粋》

前に上演したものの中から1シーンを抜粋ということで、楽しめるかやや不安だったけれど全然杞憂だった。役者の方が第一声を発した瞬間、既によかった。オーラというか雰囲気というかが、劇が始まった瞬間、途端にくっきりしたのだ。嘆いてタクシー乗って嘆いてタクシー乗って……状況がどんどん悪くなるのでさらに嘆くことになり。嘆く感じが超よくて、今回一番印象に残る役者さんでした。反復を利用したタクシーの演出も楽しかった。

アクターズ仙台《Prelude -天使が生まれた日-》

こちらも役者のかたがとても印象に残った。動きとしてはほとんど座って話すだけなのだけれど、いやだからこそか、ていねいな演技がぴったりはまっていると感じた。ホームページの紹介文を見ると、俳優主体で養成所も兼ねた団体とのこと。ホワイエで上演することが全くノイズになっていなかった。

見られなかったものも多くあり無念です

感想を書くといつも野暮なことばかり書いてしまい嫌になります。今回皆さんが我々に寄せてくださった感想はとてもありがたいものばかりで、それに比べて私の感想はなんと野暮でしょう!
先にも書きましたが見られなかったところもたくさんあり、残念です! 劇以外の交流だと、空想紀行のおふたりがかわいい名刺をくださって、名刺作りたいなと思いました。2日目上演時間が丸かぶりで見られず無念。インプロチャンバラという全体企画に参加し、そこでちょこっとだけ共演はできました。

インプロチャンバラ。稽古でやるエチュード以外では人生初インプロでした。
ひとり相撲にならないようには気をつけられましたが、ほんとはもっと細やかな掛け合いもできたらよかったなと反省しています。少し大技に逃げてしまったかもしれません。いや、馬乗りで人を斬る怪物が暴れていて考えるどころではなかったな!
あと、ほぼ全員が名乗るという基本(そんな基本があるのか知らないけど)をすっ飛ばした結果、共有できる設定がほとんどなく、唯一名乗った「ローソンさん」の設定だけが最後まで引き継がれていました。このあたりめちゃくちゃ勉強になりました。インプロに興味がわきました。

メンバーがFOX WORKSさんを見てきて、すごくよかったと言っていました。おもしろいメンバーがおもしろいと言っていたので、大変おもしろかったということです。見られず無念。なんと我々の作った元気元気協会のパンフも使ってくださっていたとか。ますます見られず無念。

インプロチャンバラに続いて行われた全体企画のマイムマイムは企画段階できいたときはなんだってと思った瞬間もありましたが、蓋を開けてみたらこの世にこんな楽しいものがあるんですかという楽しさでした。次回の演劇祭があるなら2日目は終日これでもいいです。

感想を一生受け付けています

がらくた宝物殿への感想は一生受け付けています。今でも数年後でも、何度でもよかったらお寄せください。下記フォームより匿名でも投稿できます。あとグッズと前回公演の配信もやってるのでよかったら覗いてください!

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