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白鞘袋 白無垢倣赤袘


鞘書を守りたい

この短刀には、できそうな事を全部してやりたい」
――そんな思いで、フル装備フルカスタムを進めています。
今回考えたのは、白鞘袋でした。

普通の白鞘であれば凹んでも水気を含ませて復元できたり、
汚れても表面を削って新品同様にできたりしますし、
なんなら丸ごと新調したりもできる訳ですが、
鞘書が入った白鞘だと、なかなかそうは行きません。
鞘書入りの白鞘を、できるだけ大切に保護したい。
その為に重要なのが、白鞘袋です。

短刀が完成し、最初に送っていただいた際にもしっかりした
白鞘袋に入れていただいており、通常ならこれで充分なのですが、
そこは思い入れの塊みたいな我が短刀。
白鞘袋も全力でオーダーメイドしたい、と思いました。
 

白鞘袋を考える

この短刀の白鞘袋をDaizo160さんにお願いしよう、というのは
かなり前から決めていました。
以前購入させていただいたスリムフィット白鞘袋が
とても良かったので、これまでにも何点か頂いております。
そのDaizo160さんは、よくtwitter で
「オーダー受けますよ」「オーダー可能です」
とツイートしていらっしゃる姿を拝見しますので、
オーダーのご相談も、とてもしやすいです。
ほんと、ありがたい。

で、今回、どんな白鞘袋をオーダーしようかと考えました。
第一の目的は、鞘書の摩耗を防ぐ、という点でした。
となると、白鞘に触れる裏地は絹かな、と考えます。
麻や木綿は摩擦が大きそうだし、化学繊維はちょっと合わない。
柄織りや刺繍のない、サラッとした絹の裏地で行きたいな、と。

そしてもう一点。
通常の白鞘袋は表地が内側に入り、裏地に被る形状なのですが、
これを逆にして、裏地を表地に被せる形で作ってもらえないか、と。
(後ほど、図説します)
こうすると、出し入れする際に縫い目が白鞘へ当たらないので、
目指す形になるだろうと思いました。

そして同時に色合いについても考えたのですが、
最終的に、外側を白、内側を赤にしようと決めました。
和装の婚礼衣装のイメージです。
色々な思いを重ねて。
 

制作依頼

イメージをまとめて、いざオーダーのご相談です。
アプローチはDaizo160様のtwitter DM にて。
・短刀用の白鞘袋をお願いしたい
・裏地を表まで出す形で作ってほしい
・イメージは、こんな感じ
という内容で、画像を付けてお送りしました。

こんな画像をお送りしました

この、裏地を表に回す形状についても「制作は可能」との事でした。
あわせて素材についてもご相談し、
「さらさらな裏地といえば絹 一択ですね」との回答を頂きました。

生地についてはDaizo160さんの方でも探してもらいつつ、
こちらでも探してみる流れとなりました。
「生地はお任せします! 赤白ならなんでもOKです!」
――なら、すぐに制作していただけたと思うのですが、
せっかくの機会なので、最適な生地を探してみようと思いました。

……ですがこれが、想像以上に難航しまして、
表地も裏地も、これぞ、という生地がなかなか見つかりません。
Amazon、楽天、Yahoo などのモール系ECサイトや、
ヤフオク、メルカリ、ラクマ などの個人売買系サイト、
minne や creema などのハンドクラフト系のサイトを見つつ、
生地や和装の専門店も色々と覗いててみました。
 

裏地、表地の決定

しばらく探して、とあるサイトでイメージ通りの赤を見つけました。
婚礼装束の小物や材料を製作販売しているサイトで、
懐剣袋や筥迫という小物入れの内張り用とされていた布でした。
コンセプト通りの布で、イメージ通りの色でした。
刺繍や柄織りもなく、シンプルな正絹生地です。
サイズも指定のサイズでカットしていただけるそうなので、
事前に聞いていた必要サイズを充分満たせます。
これを裏地にしよう、という事で注文。
裏地はこれで決定しました。

表地に関しては、Daizo160さんのツイートで、
とても心惹かれる生地のご紹介がありました。

色はやわらかな白一色ですが、地の織柄が華やかです。
吉祥文様の入った帯が重なり合って、とても雅です。
ぜひこれで! と飛び付きました。

表の色と柄も、裏の色も、婚礼装束のイメージピッタリです。
手元に届いた赤布をDaizo160さんにお送りし、準備万端です。
 

白鞘袋の完成

理想の布地の捜索中にDaizo160さんから、
試作品の画像を頂きました。
裏地を表側まで回す作り方が普段のDaizo160さんの作品と異なる
造形なので、確認も兼ねての試作、という事でした。
実際に布で作られた試作品を見ると、色々と実感が湧きます。

実際に送っていただいた試作品写真

「ちなみにこの紐は、ステッチを赤い糸にして遊んでみました」
と、写真に添えられたメッセージが。
これは私の依頼ではなく、Dizo160さんのアイデアです。
表地と同じ布を使って結び紐を作っていただいたのですが、
その縫い糸が赤になっていました。

――これは、とても心惹かれました!

この短刀にまつわる一連の制作依頼は、
『亡き妻を偲んで』がグランドテーマになっています。
その中の一つ、婚礼装束を模した白鞘袋に、赤い糸。
素敵です。叙情的で、象徴的です。
紐の先端に、裏地の赤を少し入れていただこうかな、等は
考えていたのですが、より良い形にしていただきました。

そして、裏地の布をお送りして程なく。
できました、というメッセージと共に、
完成写真が送られてきました。
写真からも分かる、イメージ通りの出来でした。
即時、代金の振込をスマホの銀行アプリから実行。
いやぁ、銀行にもATMにも行かず振り込めるのは、便利ですね。
 

白無垢 倣 赤袘

白鞘袋が届き、胸踊らせながら開封しました。

差表側から見た全体像。
差裏側。一般的には手前(差表側)に折り返すらしいです。
アクセントの赤い糸。
生地の織り柄が見えやすいように、陰影ついた写真。

 
事前に写真は見ておりましたが、実物は更に素晴らしく、
絹の手触りと光沢、色と織柄に品を感じます。
差し色の赤も非常に美しく、良い色合いでした。
短刀を入れ、丁寧に、気持ちを込めて紐を結びます。
その所作の中、目に映る赤い糸――

なんか、こう、感情移入がすごいです。
せっかくなので、この素敵な白鞘袋にも名を付けよう、と思いました。

「袘(ふき)」という言葉があります。
Googleだと、この様に表示されます。

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分かりやすい画像で示すと、赤矢印の位置です。

デコルテフォトスタジオ様の「白無垢/赤比翼」ページより引用

この「袘」という仕立て名称は、事前知識としては持っておらず、
白鞘袋に名前を付けようと、色々調べている内に知りました。
もう、完全にこれだよッ!

という経緯を経て、
『白無垢倣赤袘』しろむくならいあかふき
という名前にしました。
語順に関しては色々あるんですが、口にした時の流れ優先です。
 

触れてよし、眺めてよし

正絹なので手触りもよく、しっかりした厚みがあるので安心感もあります。
和の極みみたいな色合いなので、鞘書も実によく映えます。

引っかかりゼロ、摩擦ほぼゼロ
オーダーメイドなので、当然サイズもピッタリです

先日仮組みした、専用の短刀掛けに乗せての撮影も。

正面から見た感じ。
上から見た感じ。

以上、白鞘袋を作っていただいたお話でした。

白鞘袋や刀袋は、鞘や刀装具に比べれば安価ですし、
付け替え、交換も気軽にできます。
季節に合わせて衣替えしてあげたりするのも、良いかもしれません。
そんな気持ちであれこれ考えつつ布を探すのも、楽しかったです。
 

#刀 #日本刀 #短刀 #白鞘袋 #鞘書

ヘッダー画像:photo AC より


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