アスペルガーの恋〜光太との初対面〜

光太とラインをするようになって一週間が経過していた。

ラインってすごいものでテンポよく話していると一週間しか話してないのに、かなり長く話してるように距離感を縮めることができる。

光ちゃんと初めて会うことになったのはそんな一週間後だった。

今日光ちゃんと会うことをM君に言ったら「ドキドキする〜」と言っていた。
M君は完全に私と光ちゃんの橋渡しをしていた。こういう風に「誰か紹介して」なんて言って紹介してもらった1人と相思相愛になってうまくいくことなんて可能性低いと思っていた。

でも、M君は普通にうまくいくと思いきっているみたいだった。

「大丈夫あいつ優しいし絶対うまくいく」

あいつならうまくやるだろうというだけの自信がM君にはあった。

そして光ちゃんの方も、不思議なことに、当たり前に人嫌いで気難しい私に嫌悪感を感じさせずうまく距離を詰めていくのだった。

なぜなんだろう…どんなに順応性高い人でも私なら上手くいかないに決まってる…
だって私は…

時折どこで終わるのだろうということを考えてしまっていた。

当たり前のようにうまくいかないに決まってる私と、上手くいくことが当たり前のM君や光ちゃん。

まるで盾と矛だが、そうであれば私の方が勝ってしまうだろう…

新宿西口の改札で待ち合わせたのが初めてで、ライン通話がなって、その時初めて光ちゃんの声を聴いたんだ。
「どこにいる?」

光ちゃんの声…そう思ってる間に

「あ、いた」と言う声は受話器じゃなくて間近に聴こえててすぐに走ってきた。

連れてってくれたレストランは以前好きでもない人と行ったことがあって、同じとこか…と思った。

でも、そんな良くないイメージはすぐにふっとんでしまった。
こうちゃんは写真で見るよりかっこよくて

目とか鼻とか下を向いた所とかいつか過去に一目惚れしたあの人になんか似ていたのだ。

別人だ。別人なのはわかっている。でも似ているのだ。一目惚れのあの人の方がかっこいいし、スッキリした細身の体型だ。
それを体格良くしたような光ちゃん。

料理に目線を向けた後私の方を見あげるときの目

綺麗な色黒の肌

結婚を考えると流石に迷いが大きくて、ダメなところも見てしまう。光ちゃんはスポーツ選手だったから「勉強とかろくにしてなくてごめんねバカで」なんて言ってたことが気になった。

これが結婚に繋がるか繋がらないかなんてわからない。

その日の私は自分が一番素敵に見えるコーディネートをしていた。レースのノースリーブとスカートにヒールのサンダルを合わせ濃いめの私の顔を引き立たせるシックなコーディネートにまとめた。

光ちゃんは陸上部の高校生の指導を副業で休日にやっているらしく、帰りにシャワーを浴びた後で半袖短パン。板についていて、かっこよかった。

きっとこの人はありのままの自分をみんなから好かれ、受け入れられてきた人なんだろう。

悪いところを一切出さないように取り繕った私と、初っ端から「俺バカだから」と言った具合に自分のダメさを前面に出してくる光ちゃん。

やっぱり人と2人でご飯に行くのは私は苦手で、声が小さかったりしたのか何度も「え?」っと私の声を訊き返した。

本当にこの人とうまくやっていけるのだろうか。
きっと誰からも受け入れられてきた光ちゃんは私の感覚はわからないんじゃないかな。

いつかイライラさせる日がくるのだろう。

夕食が終わって電車に乗ると
「今日はありがとう」
と光太郎からラインが入っていた。
「こちらこそありがとう」
同時に
「どうだった?」とM君からもラインがきた。
タイミング良すぎるだろ…M君はどこまでいろんなことを把握しているんだ…

M君は私と光ちゃんの2人から、どうだった?どうだった?と様子を聴いてはお互いがいい感じに近づくようにしてくれていた。
探り探りの2人の心に「いい感じ」というアンサーを提示して2人を前に近づけることに迷いをなくしてくれていた。

そんなM君に「楽しかったよー」っと素直な感想を返した。

「後で電話できる?」とM君。

「うん」私。

家に着くとM君との話は結果的に1時間くらいに及んだ。

「私は楽しかったけど、光ちゃんはどうだったんだろう?」

「あいつも楽しかったって、可愛かったって言ってた」

「本当?」

光ちゃんの口から可愛かったなんて言われるなんて…

運動部のエースだぞ?甘すぎないか?

今まで私はM君や光ちゃんみたいに簡単に同世代の男性から可愛いとか言われたことがあまりなかったのかもしれない。
いやあったけれど、それは一瞬でいつか私の醜さはバレるものだったので、一先ず第一関門は通過したらしいと思った。

ここからバレずにどこまで行けるだろうか。

恋の始まりにドキドキすると共に、終わるに決まっている私の身勝手な恋に2人を付き合わせてしまっているような罪悪感さえ感じていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?