気まぐれショートショート　鳥獣戯画ノリで天地(会社)創造

私の会社に中途の方がやってきた。
名前は御越（おこえ）さん。
御越さんは、あいさつするなり「私がこの高山商事を7日で変えてみせましょう」と言った。

次の日、社員の制服がバニーになった。
社内はバニーボーイとバニーガールで溢れかえった。
その夜、社員のSNSの裏垢でボロクソに書かれた。

しかし次の日の朝になるとマスコミの取材が殺到した。
株価が一時期ストップ高まで行った。

その次の日、
社外コンペでライバル企業から不正を疑われるトラブルが起きた。
その場にいた御越さんは「ならば相撲でシロクロつけましょう」といった。
御越さんは元ちびっこ相撲のチャンピオンである。

その夜、件のライバル企業から業務提携の話が持ち掛けられた。
その会社はちゃんこ鍋のチェーン店を経営していた。

そのまた次の日の朝、
企画会議に御越さんが現れた。
高山商事では金商品を取り扱っていた。
「社長、組体操の要領で金の馬と鹿のピラミッドを作りましょう」
「なるほど、馬鹿の金字塔ってか！面白い」
社長の鶴の一声で企画は通った。役員は全員頭を抱えた。

しかしその日の午後から、金の取引価格が倍になった。
通販サイトに予約が殺到した。

そしてまた次の日、
「全社行事にフェスを加えましょう」と御越さんは言った。
会場は新国立競技場に決まった。

次の日、インターンの応募が例年の10倍来た。

そして7日目
御越さんは有休をとった。
私は未だにバニーボーイである。

(588文字)

---

こんな風に破天荒な企画が次々ヒットしたらどんなに幸せなことでしょうか。羨ましいぜ御越さん。
まぁ、こんなカオスな事態はない方がいいんだけどさ。

企画概要はこちらから。