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『月夜のみみずく』父の背について歩く、銀世界の森の中

『OWL MOON 月夜のみみずく』
詩:ジェイン・ヨーレン
絵:ジョン・ショーエンヘール
訳:くどう なおこ
出版社:偕成社

<あらすじ>
冬の夜更け、女の子と父さんは降り積もった雪を踏みしめながら、みみずく探しに出かけます。
「あえたりあえなかったり、それがみみずく。みみずくに会いたいなら静かにしてなきゃ。」
兄さんたちに教わったことをしっかり守りながら、女の子は寒さを我慢して父さんについてゆきます。

一面の雪で、息を呑む景色。
父さんと一緒にみみずくに会いにでかけるこの夜を、心待ちにしていた女の子の、誇らしげな気持ちが伝わってきます。
お父さんの呼びかけに答えるように現れたみみずくと、じっと見つめ合う瞬間の胸の高鳴り。
ページいっぱいに描かれるみみずくの姿は、神秘的で高貴な雰囲気がします。
大自然への敬いが感じられ、読後には心が澄んだ清々しさが残ります。

1988年度コルデコット賞受賞。

今日は今年一番の冷え込みで、昨日から雪が降っていました。
私が住む地域では年に数回積もる程度で、雪国のように雪掻きをするほどまで積もったりすることは滅多にありません。

それでも子どもたちが幼い頃は、雪が降ると大喜び。
うっすら積もった雪をかき集めて雪合戦したり、小さな雪だるまを作ったり。
学校へ登校する時も、雪のある場所をわざと歩いてみたりと、雪の感触を存分に楽しんでいました。

そして夜寝る前の読み聞かせで、雪の日は必ずこの絵本『月夜のみみずく』が登場します。
この絵本の中の雪景色は、子どもたちが知っているようなものとは全く違っています。
どこまでも続く銀世界、頼りはお父さんが持っているランタンと月の明り。
シーンと静まり返った森の中は冷たく、聞こえてくるのは自分の息遣いと雪の中を歩く音だけ。

一足先に経験していた兄の言いつけを守って、怖くても黙って父親の背中について歩きます。
本当は兄と一緒に行きたかったフクロウとの対面。
でもきっとまだ早いと言われて、お預けとなっていたのでしょう。
女の子の、ようやくお父さんと一緒に森に行けるというワクワク感と、憧れの兄と並べたような誇らしさと。
そしてフクロウとの対面を果たした場面の驚きと感動が、絵本の詩を通じてひしひしと伝わってきます。

読後の子どもたちは、ベッドの中にいながら森の中でフクロウを垣間見たような気分で、黙って余韻に浸っています。
自然に対する畏怖の念と、野生の動物たちへの興味が心の中に湧いてきているようでした。

この絵本の物語は、作者のジェイン・ヨーレンの子どもたちの実体験を描いたもので、父と子どもたちのふれあいを描きたかったと後に語っています。
実体験だからでしょうか、実話の映画を観ているような感覚になったり、その場に居合わせたような不思議な感覚に浸れる秀作だと思います。


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