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素敵なお金の使い道『すてきな 三にんぐみ』

『すてきな 三にんぐみ』
作:トミー・アンゲラー
訳:今江 祥智
出版社:偕成社

<あらすじ>
黒いマントに黒い帽子の三人組は、いかにも恐そうな泥棒です。
夜になると泥棒達は獲物を探して山から下りてきます。出会ってしまうと気を失う者がいるほど。
泥棒達は馬車を見つけると、マサカリで馬車の車輪を真っ二つに切り裂き、ラッパ銃を突き付けて乗客を脅し、金銀財宝を奪っていきます。
ある夜、泥棒たちはいつものように馬車を襲い金目のものを奪おうとしましたが、この時は孤児のティファニーちゃんただ一人。
仕方なくティファニーちゃんを抱きかかえ隠れ家へ。
翌朝、ティファニーちゃんが目を覚ますと宝の山に気づいて、
「まぁぁ、これ、どうするの?」
それから三人組の泥棒達は何かを思いつくと、恵まれない捨て子や孤児を誘拐し始めるのでした。

noteを書く為にこの絵本を出していたら、長男が「懐かしい絵本だね、良く読んでもらってたやつだ」とページをペラペラ捲りながら読み始めました。
独創的で黒と黄色を効果的に使った絵が印象的です。

この絵本の泥棒たちは、財宝を奪うまではするのですが、ため込むばかりで使い道にまでは思いが至っていなかった様子。
夜のとばりの中で強奪をする場面では、暗く恐ろしい雰囲気が漂っていますが、孤児のティファニーちゃんを誘拐したところから、黄色が効果的に使われるようになり、ティファニーちゃんの明るさと、ティファニーちゃんを抱きかかえる泥棒たちの優しさが滲み出るようになります。

物語の中盤に差し掛かったところ、
「まぁぁ、これ、どうするの?」
泥棒たちがため込んだ宝の山を見たティファニーちゃんの問いかけに、泥棒たちは孤児を集めお城を立てて立派な孤児院を作りました。
その孤児たちが大人になり、結婚して子どもも増えて、やがて村になりました。

この絵本で問題になるが、3人の泥棒たちは孤児を集めて人助けをしますが、その為に使われたお金は他人から奪ったものです。
いくら良い人でも泥棒は泥棒。
本当は罪を償い反省すべきなのでしょうが、これはメルヘンです(笑)
一人の少女と出会ったことがきっけで、悪い3人の泥棒は素敵な3人になりました。
人はたったひとつの出会いでも良い方向へ舵を切り、生まれ変わることもできるというメッセージも込められているように思います。

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子どもたちが幼い頃、お小遣いをどうするかで考えていた時期に、この絵本に出会いました。
決まった金額のお小遣いを持たせるようになったのは、中学生になった頃から。
それまでは必要な時に必要な金額のお金を手渡していたのですが、余ったお金はそれぞれで管理させて、自由に使わせていました。
欲しいものがあるとお手伝いなどで、せっせとお小遣い稼ぎをするように。
「なかなか貯まらないよ」と次男は良くぼやいていましたっけ(笑)

お金は使い方次第でトラブルの元になるし、執着すれば苦しく不幸を招くものになりかねません。
反対に素敵な使い方をすれば、幸せを生みたくさんの人を救うことだってできます。

この絵本の3人の泥棒たちも、本当に欲しかったのは金銀財宝ではなく、一人の少女を抱きかかえた時に感じた温もりだったのだと思います。


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