【詩】生傷は嫌われる
するどく爪痕を残せる獣は、優秀なけもの。
一撃のショックはあれどすぐに死ぬ、致命傷になる、絶命までの時間はわずか数十秒。
一方でへたな獣は、傷をいくらつけても仕留めるには至らない。かすり傷だらけで弱った獲物なのに逃してしまったり、逃した先でのたれ死なせたり。へたな狩り。
にんげんは、きっと下手な狩りしかできない。
だから、みんな、誰かに傷つけられることを恐れている。
するどい狩りは法律で罰せられる、道具を使う、拳銃でいっぱつズどんで終わる。
でも、法律にひっかからない、生傷は、一生ずっとついてまわる。中途半端な傷が生きるのをこれでもかと邪魔をするようになる。トドメのない傷、攻撃こそが残酷だ。
だから、ひとは傷つけられることを怖がる。きっと。殺されるよりも、傷だけつけて、放置するほうが残酷な場面だってあるのだ。
だから、怖がる。
他人を怖がる。
なまきずは、法律でも、常識でも、サバンナでも、嫌われる。
とても残酷にすぎるから。
とても冷酷無慈悲で、生きてるまま茹でられるツラさをずっと死ぬまで味あわせるから。
なまきずは、きらわれる。
END.
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