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【STRIVE】ギルティギア新作の不評から見る「初心者向け格闘ゲーム」の話

ちょっと前に「ギルティギア」がTwitterトレンド入りしてて何事かと思ってたんですが新作のオープンβをやってたぽいです。

私自身格闘ゲームはもう第一線から引いて久しい(3~4年レバーに触ってない)んですが、Twitterの知り合いは現役勢ばかりなので特にアンテナを張らずとも一応疎らに情報は入ってきます。


ところが、どうもその評判が芳しくない。


「面白い」という声がTL上から一つも聞こえてこない。

最もポジティブな表現でも
「面白くないというよりゲーム性が好きになれない」止まり。
予約をキャンセルした奴までいます。

尖った格ゲーメーカーの代表格であるアークの新作が賛否両論ですらないというのはいくらβとはいえこれはちょっと妙な話です。

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久しぶりに興味を引かれた案件だったんで軽く調べてみたんですが、
とりあえずざっと流し見てった感じ全体的なダウナー調整に加えて

新規向けを意識したと思われる仕様変更

が特に既存の格ゲーマー層を中心に不興を買っているようでした。

カビの生えかけたギルおじだけでなく嗜む程度にギルティを触る層からもあまり好感触が得られていないあたり問題の根が深そうな感じがするんですが、今回は格闘ゲーム”非”現役勢の視点からこのあたりちょっと思うところを書いていってみようかなと思います。


1. ズレた「初心者向けの格闘ゲーム」の定義

そもそも何を持って「初心者向けの格闘ゲーム」とするのか
という話なんですが、今回の調整を見るに恐らくアークの定義では

「操作が単純で自由度の低いゲーム(With デンジャータイム)」

が初心者向けの格闘ゲームなんだと思います。実際格ゲーマーの中にも
似たような考え方をしている人はいるかもしれません。

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でもこれは誤りだと思います。
一理ありますが本質からはズレています。

というか、初心者向けの格闘ゲームは現状存在しません。

が、過去の時代にはありました。

それはネット対戦が主流になる以前の時代の全ての新作、準新作タイトルです(※幽遊白書とかああいう秒で過疎るクソゲーは除く)。

当時は地方でも一日にハシゴして回れるぐらいの数の
ゲーセンが軒を並べていたということもあり

・強いプレイヤーの集まる店(駅近など街の中心部、ビデオゲーがメイン
・弱いプレイヤーの集まる店(郊外、アミューズメント系の店舗に多い

この2つが明確に分かれていました。

弱肉強食のゲーセンの世界といえど
決して住み分けがされていなかったわけではないのです。

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時には抜けて強い奴が弱いゲーセンに来ることもありますが、
大抵の場合すぐに干されて隣の台で盛り上がる対戦を眺めながら
一人寂しくCPU戦をして帰ることになります。

このように弱いゲーセンには弱いゲーセンなりの秩序があるのです。

私も一番最初は弱いゲーセンの過疎時間帯にCPU相手にレバー操作に慣れるところからスタートしていますし、そこで40連勝、50連勝が出来るようになるぐらい力を付けてから次の店舗へと拠点を移していました。

このあたりの村勇者への道のりは格ゲーおじなら誰もが通った道でしょう。

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このように順序よくステップアップするための導線がしっかりと引いてあり、自分と近い実力の相手がいると分かっている環境さえ担保されていればコンボが難しいとかシステムが複雑だとかは初心者にとっては実際些末なことなのです。

一方だけがこの時点でシステムを使いこなしてくるから
歪みが生じるのであって、互いに手探りの状態であるなら後に残るのは

「先に体力をゼロにした方が勝ち」

というシンプルなルールのみです。そこに敷居の高さはありません。

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ちなみにですが、ネット黎明期の当時でも既に旧作になっていたような
タイトルはゲームが複雑かどうかを問わず参入障壁は高かったです。

たとえばXはシステムこそシンプルですがこの時点で既にプレイヤー層がストⅡ10年選手みたいなおっさんばかりで占められており、ようやくレバーに慣れたぐらいの若造が立ち入るような隙は少なくとも当時の私には微塵も感じられませんでした。加齢臭のするゲームというイメージでしたね。

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逆に自由度の高い新作になると今度はランプ1個増えただけでシステムについてこれなくなるモーリスみたいなおっさんが一定数出てきていたので、これは若造の付け入る隙になります。

現にGGSTβでもギルティの水しか飲めないギルおじが頭を切り替えることも潔く辞めることも出来ず、環境の変化に適応出来ないまま苦しんでいます。

やはり格闘ゲームは新作こそが正義です。
間口を広げるという点においてこれ以上効果的な手段は他にありません。




2. 存在しないゲームの話①

上記のネット対戦が主流になる以前の時代を鑑み、
私が思う初心者向けの格闘ゲームに必要な要素は以下の4点。

①面白いゲームである
②発売から一定以上の期間、新規の流入が期待できる
③既存の新規がすぐに辞めない

④狭い世界で一番になれる(なりうる)環境がある

先の例でいえばこの4点を兼ね備えていたのが

90年代~ネット黎明期における弱いプレイヤーの集まるゲーセン

であり、そこで稼働していた新作タイトルだったわけです。
これを家庭用のネット対戦で擬似的に再現することが
個人的には一番の近道なんじゃないかなと思っています。

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なお、新作かつ①と④が担保されていれば②と③は後から勝手に付いてくるので、結局の所ユーザーに求められていたのは①の「面白いかどうか」だけでした。クソゲーは環境が担保されていても早晩淘汰されます。

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ちなみにApex Legendsを始めとするバトロワFPSのように
意図的に運の振れ幅を過剰にすることでカジュアル層を呼び込む
という手段もあるにはありますが、残念ながらその方向に舵を切った時点でそれはもう格闘ゲームではありません。

同じシステムを使った、ただのパーティーゲームです。

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たとえば仮に将棋のルールが「一局中3回までなら将棋盤を揺らしてOK」みたいな頭の悪いルールだったら誰もやり込んでないでしょうし、プロ制度自体成立してないでしょう。夕方のニュースで台揺らして勝ってはしゃぐ藤井聡太二冠が流れてくるとかいくらなんでも絵面が最悪過ぎます。

「初心者でも上級者に勝てるようにする」というのはそういうことです。

間口は広がる一方、そのゲーム本来の面白さは確実に損なわれます。

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アークにもそれが分かっているからこそ意図的な運要素の介入に関してはデンジャータイムというギリギリのところで踏み留まっているのではないでしょうか。まぁ尤もデンジャータイムは現状人口に全く寄与していないので蛇足になってるだけなんですが。



3. 存在しないゲームの話②

上記の4つの要素を満たすためには何が必要かを考えてみます。
パッと思いついたのが下記の3点。

・申告段位制+全てのマッチで段位が変動
・ユーザーのレベルに合わせた導線を張る
・初心者ロビーの細分化

先の弱いプレイヤーの集まる店舗の例からも分かるように、
格闘ゲームに必要なのは「初心者向けのシステム」ではなく

「初心者同士の対戦の場から経験者を排除するシステム」です。

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それにはプレイヤーの強さをより早く、より正確に可視化させる仕組みが必要になってきます。その方法の一つが申告段位制です。

ゲーム開始と同時におおよその格闘ゲーム歴、そのシリーズのプレイ歴を聴取して20段以上の高段からスタートさせることにより

入門(前作文字段) VS 入門(格ゲー初心者)

といった結果の見えたミスマッチが意図せず組まれる事態は原則なくなります。Xrd以前のランクマは正直やる意味のない試合が多すぎました。

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これは昔私が一瞬だけやってたBBCFのSSですが、このようにたとえシリーズ未経験のタイトルであっても一日二日トレモに籠もっただけでおじのランクマは大体こうなります。

たかが20段の証明を得るのに100戦もかかるとか時間の無駄もいいとこですし、可視化されていないだけでこの手の輩に轢き殺されて辞めていったプレイヤーは相当数いるはずです。

その上轢き殺してった当の本人は一ヶ月も経たずに飽きて引退してるときてはもう救いようがありません。

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申告段位制はそういった諸々を解決するための最も簡明な手段になります。

併せてランクマプレマの区別なく段位が変動する仕様も導入しておけば先々においてもミスマッチの発生率は格段に下がるので初心者と上級者双方にメリットのある仕様となるはずです。パソリロが実際そうでした。

また、戦績についてもパソリロと同様総試合数以外を記録する必要はありません。2000戦13勝 勝率0.65%みたいな自分の戦績見せつけられて一体誰がやる気出すんだって話です。

重要なのは直近20~30戦における実力と勝敗であって、トータルでの勝敗数の表示は百害あって一利なしです。雑魚狩りを助長しています。




4. 初心者狩り、その正体

・申告段位制+全てのマッチで段位が変動
・ユーザーのレベルに合わせた導線を張る
・初心者ロビーの細分化

格ゲーに初心者狩りがいるかいないかといえばまぁいるんですけど、蓋を開けてみればその実態は彼らと同じ初心者、もしくは初級者に毛が生えた程度のプレイヤーだったりすることがわりかし多いです。

(※中上級者が初狩りしないとは言っていない)

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このレベルのプレイヤーは単純な勝った負けた以外のゲームの楽しみ方を知りませんから、それこそなりふり構わずに弱者を狙い撃ちしてきたとしても正直何ら不思議はありません。

下の幼少期のイオタの悟りなどはそのへん実に核心を突いています。
PvPにおける初心者・初級者の偽らざる本性と言えるでしょう。

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尤も客観的な立場から言えばこれは「弱い奴がもっと弱い奴に乱入して勝った」というだけの話で誰が悪いもクソもないんですが、こと家庭用のネット対戦に限っては少々話が変わってきます。




5. 存在しないゲームの話③

・申告段位制+全てのマッチで段位が変動
・ユーザーのレベルに合わせた導線を張る
・初心者ロビーの細分化

家庭用のネット対戦において上記のような
初心者による初心者狩りとも言える状況が頻発する一番の原因は

「購入」 ⇒ 「即ネット対戦可能」

という昨今の家庭用の雑な導線の張り方にこそ問題があると思っています。

本来格闘ゲームというのは繰り返しCPU戦を遊ぶ所から始めるものです。

例えばこれがアーケードであれば1クレ100円の心理的ブレーキが働くので自然とCPU戦に足が向かうものなのですが、家庭用の場合負けたところで失うものが何も無いのでその手のブレーキが全く効きません。

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加えて格ゲー初心者には「初心者同士=自分と互角のはず」といった謎の思い込みでもあるのかこの時点で何故か勝てるつもりでいるのがまた始末が悪く、負けて当然の試合にボロ負けする度に一々ショックを受けてくるので大抵即日~数日で引退していきます。

例えるならこれは攻撃手段が唾とティッシュしかないのに目が合った奴全員に喧嘩を売りに行ってるようなものなんですが、そこに疑問を抱かせない程度にはやはり何か強力な思い込みが働いているんでしょう。

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対戦相手がよーいドンで一緒に始めた友人というならともかく、
見も知らぬプレイヤーを相手に対人戦の席に着くのであれば最低でも

「これが通れば勝てる」

といった武器の一つや二つ装備してなきゃPvPは話になりません。

(※この「初心者の思い込み」の背景については後に考察が進み
 下記の記事で詳しく触れているので併せて読むと面白いかもしれません)


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そんな彼らを自然な流れで対人戦から遠ざけるためにはまずゲーム開始から一定の期間ネット対戦の機能そのものをロックし、その上で格ゲー初心者を長期間一人用に釘付け出来るようなモードが必要だと思います。

早い話が「熱血青春日記2」です。ストーリーモードは捨てろ。

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やってることはチュートリアルを兼ねたパワプロのサクセスですから、購入即ランクマ突撃して一日で引退するプレイヤーの寿命を数日~数週間伸ばすぐらいの効果は見込めると思います。

パワプロは今や完全にサクセスがメインコンテンツで対戦はおまけですし、そのやり方で「野球にも対人戦にも興味ないけどパワプロは好き」という固定層のファンを獲得しています。格闘ゲームもそれに倣って

「熱血青春日記のついでに対人戦も出来るゲーム」

ぐらいの認識を持ってもらえるのがライト層には一番ベストな形なのではないでしょうか。実現出来るかどうかはさておき。

少なくともFPSに倣って運ゲーにするよりかは
私はこちらの方がよっぽどWin-Winに思えます。




6. 存在しないゲームの話④

・申告段位制+全てのマッチで段位が変動
・ユーザーのレベルに合わせた導線を張る
・初心者ロビーの細分化

オブラートに包まずに言うと初心者以下ロビーの設置です。主な対象者は

「一生上手くならない」
「努力もしたくない」
「でも俺たちを楽しませろ」

というPvPにおけるヒエラルキー最底辺の人達。

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正直向いてないとかそういうレベルじゃないんですが
そこは言いっこなしにしときましょう。買う買わないは当人の自由です。

Xrdは確か同色以外の対戦でもネットワークカラーが変動してた記憶があるので初心者ロビーはそれなりに機能してたような気がするんですが、アレでも実力の近い相手を探すのが困難だというのであれば

勝ってる奴を一般ロビーに追い出すと同時に
負けてる奴をさらに下に突き落とすしかありません。

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勝つための努力を拒否する彼らはお互いに一生上達することは
ありませんからそこでなら永遠に好勝負が展開出来るでしょうし、

>②発売から一定以上の期間、新規の流入が期待できる
>③既存の新規がすぐに辞めない

これらの要素を長期に渡って満たすための受け皿となるのは実は
彼らのような底辺層で燻り続けるプレイヤー達です。元々基本無料でない上

・努力することなく運次第で上級者にも勝てる
・逃げ回ってるだけでもルール上の勝ちになる可能性がある
・負けても味方に責任を擦り付けられる

といったFPSでお馴染みの手法を格闘ゲームが取れない以上、彼ら底辺層のプレイヤーを確保するためにはより一層厳正なマッチメイキングを実現する以外に道はないと思います。

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あとの問題はこれをどうやってオブラートに包んだ表現に言い換えるのかと過疎った時どうすんだという話ですが、些事ですし思いつかないのでこのへんで終わっときましょう。所詮妄説です。




7. 【番外】ロビーとMELTY BLOOD新作の話

ここまで書いて1週間ぐらい下書き放置してる間に知ったんですがGGSTの階層型ロビー、あれ中々具合良さそうですね。デベロッパーズバックヤードを読む限りこの記事で書いた要素の多くを内包しています。ロビーのUIは相変わらずうんこでしたけど。

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個人的には段位に関しては撤廃ではなく青天井のレートポイント制にするのがベストだと思いますが、インフレ&プレマ引き篭もりの2つの問題点に対応している点は革新的だと思います。

惜しむらくはグラブルVSの時にこれをやらなかったことですが。

あとはトッププレイヤーの線引を曖昧にしたことで天上階に弱いプレイヤーが紛れ込む可能性も多分にあると思ってるんですが、そのへんどういう塩梅になっているのかはさすがにやってみないと分からないですね。

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他方、同じく新作を控えるメルブラではここまで初心者を意識したロビーは恐らく実装されないでしょうが、代わりにGGSTβで様子見に入った既存の格ゲーマーがそっちに期待を寄せるモードに入っているのでどちらが盛況になるか見ものといったところです。

メルブラは現状公開されてるトレーラーだとまだ情報が足りないですが、B2ぐらいまでシステムを戻してたらわりとガチめに復権もありそうな気がしています。私も発売したら久々に格ゲーやらんかと身内に誘われてますし(やるとは言っていない)。

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シリーズで最も人気のあった時期の作品にシステムを寄せることで新規勢でも既存ユーザーでもない格ゲー引退勢という第三のプレイヤー層を掘り起こせる可能性があることはXrd-Sign-で実証されていますから、メルブラでも同様の現象が起こる確率は高いでしょう。新規層の開拓が難しいなら既にある所から持ってくればいいという考え方は理に適っていると思います。

結局闘劇時代が一番コアな格ゲーマーの多い時代だったわけですから。

オプーナちゃんは生まれつき心臓が弱く 一カ月以内に心臓移植が必要です しかし移植には100万×7140円という莫大な費用がかかります オプーナちゃんを救うためにどうか協力をよろしくお願いします