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【がん治療記x受験奮闘記】理系トーク~白金~

 治療が始まる前、使うと言われた抗がん剤をインターネットで検索してみた。エトポシドに関しては環構造が多くかなり複雑な構造だったため深くは調べなかった。一方で、カルボプラチンの方は簡単な構造だった。そしてその構造を見て驚いた。2価の白金(プラチナ、Pt)が使われていた。よく考えれば名前にプラチンとは言っている時点でPtが使われていることを想像できたはずだが、僕はそうできなかったため少し悔しかった。カルボプラチンという名前から炭素と白金が使われていることを想像できるようにしていたかった。
 Ptといえば、よくアクセサリーなどに使われる銀白色の貴金属だ。1g当たり数千円もする高価な金属である。Ptの利用価値はアクセサリーだけに留まらない。触媒作用があり、オストワルト法(アンモニアを硝酸に変える工業的製法)や燃料電池(水素などの燃料を利用して電力を取り出す装置)などに使われている。高校で習う範囲はこれくらいだろう。そのため、抗がん剤にも使われていることを知ることができ興奮した。
 ただ、2価の白金というと、完全に重金属イオンである。重金属イオンはたんぱく質の変性などに関わるため人体に有害だ。のちに薬学部の授業で薬物と毒物は本質的には同じであり、抗がん剤は薬の中でも毒性が強いということを習うのだが、この時の僕はそれを知らなかった。そのため僕は困惑した。しかし、それと同時にどのように機能してがん細胞を殺すのかに興味を抱いた。

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