【がん治療記x受験奮闘記】脳腫瘍の発見(2)

2020年8月

 大学病院での造影剤を使ったMRI検査により胚細胞腫瘍の可能性が高いことが分かった。僕はその中でもジャーミノーマである可能性が高いと言われた。しかし、それでも治療を開始するわけにはいかないと医師は言う。もしジャーミノーマであれば放射線治療と抗がん剤治療を並行するのだが、ジャーミノーマでなかった場合に放射線治療の受け直しができないからである。そのため、治療の前にジャーミノーマであることを確かめる目的の手術を行うことになった。手術の内容は以下のとおりである。
 術名、みぎ前頭開頭内視鏡下腫瘍生検術。この術名を見た時なんてわかりやすい名前だと思った。医師からの説明と照らし合わせればまさに読んで字のごとく、前頭部の右側の一部を切り開き頭蓋骨に穴をあけそこから内視鏡を脳内に入れ腫瘍を一部採取し検査するというものである。この手術に関しては後々より詳しい話を書こうと思う。
 手術日は8月13日、入院開始日は8月11日と決まった。術後の容体が良ければ一時退院し、手術の結果を見て治療を開始する予定だった。僕は何としてでも退院しなければならなかった。なぜなら8月23日に英検の準1級の2次試験が迫ってきていたからである。僕の受験する大学では英検のスコアによって加点がある。準1級に合格すれば10点の加点されるのだ。それは何としてでも取っておきたい10点だった。英検S-CBTの準1級で不合格となっていた僕にとって従来型の準1級1次試験に合格したことは奇跡であり、このチャンスを逃したくはないと思っていた。僕の腫瘍がジャーミノーマでなければ治療期間は長くなるかもしれなかったが、手術の結果がジャーミノーマであり、治療が3ヶ月で終わり、術後経過も良く、退院し英検準1級2次試験に合格することができれば僕の第一志望合格の可能性は高まる。僕はそうなると信じて前を向いた。

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