【がん治療記x受験奮闘記】抗がん剤治療(1)

 8月31日、抗がん剤治療が始まった。僕は少しワクワクしていた。白金が体の中に入るのだ。どうなるのかとても気になるに決まっている。副作用なんて簡単に乗り越えられるだろうと軽んじていた。ただ、点滴の針を入れるのはどうも慣れない。MRIの造影剤や手術の麻酔で点滴を使ってきたが、皮下注射、採血に比べると痛みが強いのだ。また、血管に管が入っている感覚も気持ちが悪い。さらに、邪魔である。右利きの僕はもちろん左腕に入れてもらうのだが、それでも生活しにくい。
 抗がん剤の点滴を入れるのは医師が行った。看護師も点滴を入れることはできるはずだが抗がん剤となると医師が行うらしい。医師が右腕に入れればその間勉強をさぼれるぞという誘惑をしてきた。しかし僕は迷わず左腕に入れることを希望した。ただそれは僕が真面目だからではない。ただ勉強しなければいけないという焦りに駆られていただけである。この頃から僕は受かりたいからとか楽しいからという理由で勉強するというよりも落ちたくないから勉強するという風に変わってしまっていた。
 抗がん剤治療初日は特に何もなかった。点滴の針が刺さっている部分が少し赤くなった程度で他に何も辛いことはなかった。まだ勉強も楽しむことはできていたと思う。

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