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[スプラトゥーン]ローラーを握れなくなった日

スプラトゥーンに登場するブキは、メインの性能だけで50を超える種類が存在し、サブとスペシャルが異なる100以上のブキ種が存在する。
多様なブキの中から1つをこよなく愛する人もいれば、ルールやステージ、環境等に合わせて数種類を使いこなす人もいる。
やはりどのブキも、勝ち上がるため、楽しむため、得意だと言えるためにはそれなりの知識や練度が要る。そしてそれだけ共に努力したブキには愛着が湧くだろう。

自分が好きなブキは沢山あるが、その中の一つ「スプラローラー」について書いていく。

●ローラーを触れた日

自分が初めてローラーに触れたのは、スプラトゥーン2の試射会の日(2017/03/25)、実に5年半以上も前の事だ。

当時はローラーのサブにキュウバンボムが付いていた。

アクションゲームが本当に苦手な自分はそもそも買う気もなかった訳だが、当時Switchのソフトにあまり楽しめるものが無く、暇だからダウンロードした試射会で遊び、まんまとハマって発売日にソフトを購入した。

しかし苦手なゲームジャンルでなぜハマる事ができたかといえば、やはり「塗れば貢献できる」(実際には一概にそうとも言えないが)というゲームデザインにある。
当時の試射会、本当に自分は敵と戦わずに遊んでいた。
では何をしてたかというと、ひたすらにローラーで丁寧に自陣塗りをしていたのである。
今でも覚えているのが、タチウオパーキングのリスポーン地点から、ひたすらに一段ずつ丁寧に塗りながら降りていき、中央に降りる頃には3分経って結果発表。これをひたすら繰り返していた。

可笑しいと思うかもしれないが、自分はこれでスプラトゥーンにハマったのだ。

TPSでありながら敵を倒すことを避けても勝利に貢献できる(と思っていた)ことは、自分にとって革命的な事であった。
その流れから
ローラー=「敵と戦うにはコロコロしかないけど、いっぱい塗ることができて初心者も活躍できる扱いやすいブキ」
という、大きな勘違いをしてスプラトゥーン2を始めることとなる。

●ローラーを選ぶ

発売日に買って早々にローラーを手に入れ、毎日ナワバリバトルでコロコロとローラーを転がしていたが、ランクが上がるごとに色々なローラーが買えることに気づく。
とても軽そうなカーボンローラーと、とても重そうなダイナモローラーをちらほらとバトルで見かけるようになった。

当時本当にスプラトゥーンというゲームの知識がなく、「ランクが上がって買えるもの=そのブキ種の上位互換」であると思っていた。
なのでランクごとに買えるローラーも、

スプラローラー<カーボン<ダイナモ

と、どんどん強いものが買えるのだと思っていた。
当然そんなわけもなく、
カーボンに「轢きで倒せない!塗り面積小さい!」
ダイナモに「重すぎて動けないし丁寧に塗れない!」
と、当然ながら文句を言っていた。

結局、スプラローラーが一番扱いやすいことに気づいたが、「塗りが強いし、困ったらチャクチが強い!」という、今ではあり得ない感想を引っ提げて、良くも悪くも持ちブキは「スプラローラー」にチャクチしたのであった。

●ローラーを知る

何度もいうがアクションゲームが苦手だ。
なので当然ガチマッチには手を出さず、ひたすらナワバリバトルを繰り返していた。
ナワバリでも勝てれば楽しい。勝てればお金も経験値も多く貰えるから勝つに越したことはない。(当時ランク50がマックスだったりしたので、初期の経験値は捨て要素だったが)

ローラーも使い慣れてきて、縦振りを使って戦ったり出来るくらいにはなっていたので、どういう戦術があるとか、イカニンジャが強いとか、色々調べ出した。ここらへんから塗りが弱い部類のブキであることを知り愕然とした。

ジャンプ横振りが出来なくて何度も練習したのを今でも覚えている。冗談抜きで意図して出せるようになるのに2,3ヶ月くらいかかったと思う。

そんな日々が続き、体に馴染んで来たローラーをいつしか「得意なブキ」として扱っていた。
何となく強い部類のブキでは無いということは分かっていたが、それでも随分キルもできるようになっていた。
ツイッターに上がってる他人のクリップはガチマッチの猛者たちの中で活躍してるシーンばかりだが、自分もこれくらいキルしたことあるから意外とやれてるんじゃないかとまで思っていた。
ナワバリバトルで。
まさに、井の中の蛙大海を知らず。

●ローラーで守る自尊心

その後も変わらずローラー使い。
塗りが弱いブキを使って勝てるという優越感と、ナワバリバトルの負けても失うものがないというストレスフリーな環境は居心地がいい。

一方で、そろそろやるかとガチマッチを潜ってみた。これだけ練習したんだから最初は難なく行けるだろうという慢心すらあった。
が、みんな当然強かった。
A帯に上がる頃には、自分より強いプレイヤーしか居なく、特に同じスプラローラーを持つプレイヤーとのレベルの違いを感じるのが辛い。
そこで戦っていける自信は当然なく、
難しいルールやセオリーがあるだろうとか、
他のゲームもやりたいのにハマったら大変だとか、
当時は色々言い訳を考えていた気がする。

しかし今ならハッキリと分かってしまう。

当時の自分は、ローラーを使っても弱いということを証明したくなかったのだ。

前述の通り、自分はほぼローラーしか使ってこなかった。
さすがに少しは違うブキを持ってみたりもしたが、結局ローラーに戻ってくる。
性能の勘違いからとはいえ、ずっとずっと最初からこのブキを握ってきて、このブキと成長して、やっと今、TPSというゲームジャンルを楽しめているのだ。

かけた時間の問題でもないし、センスも経験もないから弱くても仕方がないことなんて頭では分かっていた。
ただ、ローラーを持っている自分を否定されるのが怖かった。
このゲームを当時既に千時間近くやって来たという事実に対して、この時間かけて見合った技術や成果が出ていないことへの恥ずかしさや、「上手いかもしれない」と少しでも思った自分への嫌悪感が、ガチマッチというルールから遠ざかる最たる原因だった。

結局戻ってきたナワバリバトルでは、自分より格段に弱い人間などほぼ居らず、どこに行ってもローラーでは勝てなくなってしまった。
次第にローラー以外のブキを持ち始めたが、やはりどれを持ってもあの爆発力のあるブキよりも楽しめるブキが見つからず、ローラーというブキに惹かれていたのは他のブキを持つほどに実感してしまう。
でも、持てば勝てない。

次第に自分は、この負けを「ローラーというブキが弱い」として、ブキを盾に自分の心を守った。

●ローラーを握れなくなった日

「ローラーは好きだしまぁまぁ扱えるけど、弱いから普段使いできないな。」
というのが当時の自分の結論だった。

結局ナワバリバトルでも、シューターを持つことも多くなる。ローラーでキルが取れないなら、下手でもシューターを持って塗ったほうが勝てるのは当然だった。

スプラをする友達もできて、モチベーションが上がっていたこともあり、ガチマッチもそれなりに再開し始めた。
エリアはわかば、
ヤグラはローラー。
適正のあるブキで、ルールも立ち回りも勉強し直した。
しかしローラーはA帯を維持するのも難しい反面、若葉で潜ったエリアは簡単にウデマエが上がる。
練度が高いはずのローラーよりも、わかばで潜ったエリアの方が評価されてるということに、ローラーに対する自分の適性の無さが見えてきてしまう。

好きと上手は違う。
とはいえ、好きなもので勝つという憧れはまだ辛うじて残っていただけに、他のブキより見劣りする成果に悲観的になっていた。

そんな中、友達の声がけでプライベートマッチやリーグマッチに誘ってもらい、そこで出会った「彼ら」の強さに、ローラーを使うことがついに出来なくなる。

彼らの使うスプラローラーは自分のローラーとは全く異なり、「ローラー使いとはかくあるべき」ということを見せつけられているような、セオリーに反せず、それでいて型にはまらない強さも持ち合わせる。そういうプレイヤーだった。
これが他のブキを得意としていたらまた話は変わるのだろうが、自分がまがいなりにもローラーを好きで使っていただけに、彼らの強さは誰よりも分かる。
そしてそれ自体が、自分で自分の「ローラーが得意」という、言わばスプラトゥーンにおけるアイデンティティ(秘めていた自尊感情も含め)を真っ向から否定した。
彼らのことを邪険に思うとか、そう言うことではない。むしろ好きなブキをうまく使えてる姿はや、さらに強さを求める向上心はいつも尊敬している。
ただその時、自分が使うローラーは誰かに見せられるものではないなと悟った。

その日から自分はローラーを持てなくなった。

ローラーを使わなくなっても、スプラトゥーンというゲーム自体をやめることはなかったが、何か得意を見つけたいという事に必死だった。
その時すでにプレイ時間は3000及び、それでいて何の成果もなし得ていない。
好きは得意にできなかった。

それでいて周りの友達は皆それぞれ何か個性や強さを持っている。自分も何か持っていたい。何か人から認められるものを持っていたい。
周りから離されていく焦りや、プレイ時間に見合わないスキルの無さを悲観しながら、
個性を求めて色々なブキを触って、
色々なルールに触れて、
好きも嫌いも関係なく、
このゲームの隅々まで遊んだ。
しかし、しまいには唯一得意と言える可能性のあったわかばシューターでさえ、色々なブキの使用感を試しているうちの雑多に消えた。

●いつも何処かにローラーを担ぐ

自分の好きなブキで勝つことを諦めた自分にとって、他のブキを使って勝つ事にもはや抵抗は無かった。
その当時はスプラ2も終盤、スプラ3も発表されて、とにかく何か成果を残したいという焦りがあった。
勝てるようになりたいと必死に練習したのは、エリアはわかばとZAP、ヤグラはスシベ、ホコはクラブラネオ、アサリはダイナモベッチュー。
結局どこにもスプラローラーは使えなかった。

使いこなせないブキを何百時間も練習してたということは悔やまれる。
自分の好きを無駄だと言ってしまうことも悔しい。

そんな感情を抱えつつ、持ち替えたブキを練習してなんとか勝てるようになってきた頃、ふと、戦況を見ながら考えていた。

「味方ローラーの潜伏刺さりそうだから、アーマー遅らせて今はボム入れてヘイト買うか」

自分だったらそうして欲しい というローラー側の気持ちをなんとなく察し、見事に味方ローラーは前線で暴れて相手の打開を防いだのだった。

今思えばこれは自分のローラーへの知識があってこその選択だった。
その時初めてローラーを使っていた経験が、間接的だが活きていることに気づく。

よく考えれば常にそうだったかもしれない。

クラブラを使ってるときのカーリングボムでのフェイントも、
ダイナモを使うときの曲射当てやジャンプ横振りも、
角待ち潜伏やスニーキングも、
果てにはジャイロ操作やギアの知識も全て最初はローラーが使いたくて身につけたものだった。

そんなこと他のブキでも変わらない
と思うだろうが、これらの基礎を学んだのは自分にとって全てローラーじゃなきゃ駄目だったのだ。
ゲームを継続して遊び続ける前提として、「楽しい」を教えてくれたのは間違いなくこのブキであり、経験も知識も全て他のブキを持つ中でも活かされている。
このブキに出会えてなかったら、
そもそもこのゲームを買うことは無かっただろうし、継続して遊び、今一緒に遊んでくれる友達にも巡り合うことはなかっただろう。
今、楽しくスプラトゥーンをしていることもなっただろう。

ローラーを使っていた時間は無駄ではなかった。
何時だって自分のプレイの基礎にはローラーの影があったのだ。

●結局ローラーに生かされている

今では何処にでもローラーを持っていくことは無いが、陰で密かにこのブキを持って遊んでいる。
当然ながら勝ちたい勝負に持っていける練度も、実際勝てることはほぼ無いのだが。
それでも、ローラーで活躍できている瞬間が一番楽しい。
何のブキで負けるよりも、ローラーを使って負けることが一番悔しい。
ローラーを持っているときが一番自身を持って前線を張れる。
自分にとってそういうブキであることは今でも変わらない。

色々なブキを使ったおかげで分かったこともある。
恐らく自分は前衛を張るブキよりも、前衛をサポートしてルール関与する中衛が得意だ。

好きと得意は違う。
だが、「自分の好きなブキ」をサポートする事が出来る。そういう戦い方もまた好きだ。

好きなものが、得意を好きにしてくれる。

だからこのゲームを遊び続けるだろう。

おわり(o・~・o)。

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