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eスポーツプロゲーマーを中心とした「選手会」が発足 4Gamerとの座談会インタビューが公開

ストリートファイターVのプロ選手であるときど選手やももち選手が発起人となってのeスポーツ「選手会」が設立され、4Gamerにて座談会形式のインタビューが公開されています。

[インタビュー]ついにeスポーツ業界に「選手会」が成立。ストリートファイターの選手5名が先鋒となって,選手のためのより良い環境を模索していく

メンバーは先に挙げたようにときど選手、ももち選手、ネモ選手、ガチくん選手、カワノ選手の5人に加えて、ストVの定期配信や賞金付き大会を運営するTOPANGA代表の豊田風佑氏となっています。

ときど選手がツイッターで選手会発足を報告

選手会発足の理由などはインタビューを見てもらいたいのですが、この記事では個人的に感じた事などを記します。

選手会発足の背景の推測

選手会発足については、インタビュー内容から大きく2つ理由があるのかと思いました。

■1.SFLへの要望を伝える組織団体としての設立
SFL(※)への「ここを改善して欲しい」という要望があるが、選手個人では伝え辛いので、選手を代表する団体で伝えるため、選手会を設立した。
例えば、日程等の問題が兼業選手(※)にとって切迫している(※)が、言い辛い状況になっている。

※格ゲー「ストリートファイターV」の国内最高峰を掲げるリーグ。ストリートファイターリーグ、通称SFL。カプコンが運営。毎年開かれており2022年で5期目を迎える。

※SFLの参加選手には、プロゲーミングチームと契約して選手活動一本の選手が大半だが、団体職員や会社員として働きながら参加している兼業選手もいる。

※直近のSFLでは「ファン交流キャラバン」というファン対応の場が設けられ、試合への出場以外にイベント参加等も選手に要請されている。

■2.JeSU発行の公認ライセンスの諸問題に対応するための設立
現状、大会で上位入賞しライセンスを取得しても、SFLに出られない選手が大半の状況である(※)ため、ライセンスを取得した後のキャリアパスについて整備していく必要があるため。(※)

※いわゆる「いつメン」であるトッププロが毎回SFL主要メンバーとなるため、実績の少ない兼業プロが大会で優勝してもドラフトで指名される可能性は極めて低い。また、SFLの選手枠は現状32名だが、ストV公認ライセンス保有者は70名以上おり、半数以上の選手は希望してもSFLに出る事が出来ない。

※JeSUと選手間はこれまで話し合いの場すらなかったとの事なので、ライセンスの件は一旦置いておいても、まずはそうした場を設ける目的もあったと思われる。

大まかにこの2点が理由として挙げられているように感じます。
他には、若い選手が酷い内容の契約等を安易に締結しないように環境を整備していく目的も挙げられています。

1,2ともこれまで選手個人の配信等で問題提起されていた内容で、特に驚きはないですが、これまでは特定の選手がメーカーに接触する等して、一部選手だけが優位さを手にするような事へのけん制があったのか、選手が一枚岩としてまとまり辛い部分があったのかは分かりませんが、あえて音頭を取って団体化しようという選手はいませんでした。

ただ、今回はTOPANGAの豊田氏が選手間に入る事で団体化をスムーズに進めたのかとも思います。

スケジュール的には、2月にカプコンカップ9とSFLワールドチャンピオンシップ、6月にはスト6発売、8月には例年通りならSFL前哨戦の1on1トーナメントが開かれます。

インタビュー内容である通り、来期のSFLの枠組みが決まってしまう前に要望を伝えるのであれば、選手としては早めに設立に漕ぎつける必要があったと思われます。

逆に言うと、選手会を発足する必要に迫られるくらい、SFLが今の選手にとっては大きな位置づけになっているという事でもあります。

SFLの現状の課題と問題点については、拙noteで以下にまとめています。

【SFL2022】ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2022を終えて次回大会への問題点と課題

人選については適切だったか?

選手会はときど、ももち、ネモ、ガチくん、カワノの5選手と豊田風佑氏がメンバーとなっています。

ときど選手は実績、実力ともトップで東大卒という肩書きがあり、ももち選手は選手兼オーナーでJeSUのライセンス発足の際問題提起したことがあり、ネモ選手はスクエニ兼業時代などで会社員も経験しており幅広い見識を持つため、この3人はメーカーやJeSUとの交渉に当たって中心人物になると思います。

ガチくん選手とカワノ選手は、カプコンカップやEVO優勝などトップクラスの実力がありながら、メーカーや団体を相手に交渉が出来るかと言うと、社会人経験等から疑問符が付きます。ただ、中堅・若手世代を入れることで幅広く選手会をまとめていく、という点で初期メンバーに入っているのだと思われます。

今回のメンバーでは、FGC(格ゲー業界)の中心であるウメハラ選手や、ベテランのsako選手、板ザン選手、ウメハラ選手と同じチームのふ~ど選手等はメンバーに入っていません。
現在は取り急ぎ発足したという段階なので、今後メンバーに入ってくる選手もいると思います。

今後選手会に入る可能性が高い選手としては、
ウメハラ選手、sako選手、板ザン選手、ボンちゃん選手、あきら選手、どぐら選手、eスポーツキャスターのハメコ。氏の7名です。
ウメハラ選手は高いブランド力と格ゲー界の重鎮・ご意見番として、
sako選手は大手のKADOKAWAの代表選手兼現役最年長として、
板ザン選手は早大卒の学歴とDetonatioN代表選手として、
ボンちゃん選手はガチくんと同じくレッドブル代表として、
あきら選手は兼業プロ選手の代表として、
どぐら選手は関西の選手代表としてです。
初期メンバーが全員関東を拠点としているため、関西の選手代表として最低一名は入るのではないかと思われます。
ハメコ。さんはストVや鉄拳の公式大会実況解説者として有名ですが、豊田氏とGCN(Gaming Community Network)の設立メンバーに加わっているため、アドバイザー的な立場で参加するのではと思います。

選手会が発足した事の意義

これまで格ゲー界で「選手会」というモノが発足・設立した事がなかったため違和感は感じますが、SFLという国内リーグが一定の歴史を作っている中、選手活動がSFLを中心に年間スケジュールが動いている事、JeSUというライセンスもリーグ参加に必須となっているため、選手がそこに絡んでいくための組織設立は必定の流れかなとも思います。
やはり一選手としての立場では、メーカーやライセンス発行機関と対等に物申していくのは難しいと思われます。

SFLという観点では、一視聴者として不満に感じている点が選手会を通して改善に向かうのであれば、歓迎すべき事だと思います。
一方で、選手会に入っている選手だけに有益な情報や付加価値が発生する事は望ましくないので、今後はそうした対応も必要になってくるとは思います。

今後の選手会の活動内容とは?

既に発足前後でメーカー(カプコン)やJeSUと会合しているようなので、活動自体は始まっているようです。
また、会則がまだ定められていないようなので、会則を定義し、活動内容を定めていくのだと思われます。
(会則とは、組織や活動内容について定める規約や規則となります。)
合わせて、選手会の活動をライセンス所持者や、諸団体に向けて告知し、内外の理解を得ていく段階になると思われます。
その後、時機を見て法人化も進めていくものと思います。

アークゲーや鉄拳、スマブラなど他ゲーの選手はこの選手会に含まれるのか?

含まれません。インタビュー内容から、「(ストV)選手会は一つの枝で、枝が集って木になる」と構想を述べているので、まずはストシリーズ選手だけで選手会として動いて、他の格ゲータイトルの選手会が大きくなったらそこで合流してもいい、という考えのように思われます。

そもそも選手会とは何か?

プロ野球の選手会は時節ニュースで聞くこともありますが、そもそも選手会とは何をする団体なのか?
選手会とは、「プロスポーツ選手によって組織される団体」という定義が一般的なようです。
活動内容としては、賃金・労働条件に関する交渉等、選手の地位向上や競技の普及・振興を目的として活動するケースが多いようです。

選手会の定義

プロスポーツの選手によって組織される団体のこと。賃金や労働条件に関する交渉など、選手の地位向上を目的とした労働組合としての活動や、スポーツの普及振興を目的とした、スポーツ教室やチャリティなどの社会貢献活動などを行う例が多い。

https://www.weblio.jp/content/選手会

日本プロ野球選手会の定義

労働組合選手会は選手の待遇改善、地位向上を目指し、社団法人選手会は野球全体の発展を目的として、野球教室やチャリティ活動などを展開している。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83%E9%81%B8%E6%89%8B%E4%BC%9A

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