『How Google Works』読後感想|げー読
『How Google Works』をKindleで購入。読了したので読書レビューを上げる。
※本記事は2016年12月25日に筆者のWordPressサイトに投稿した記事をnoteに移行した内容となります。なお一部を加筆修正しています。
グーグル革命の衝撃の記憶
2000年頃、Googleは当時既に検索サービスのファーストチョイスになっており、Googleはそれから検索以外にも手を広げ、Youtube買収、Googleアース、Googleマップ、モバイルOSのアンドロイドと矢継ぎ早に先進的なサービスをリリースし続けている。
当時はなかったナレッジグラフもGoogleインスタントも今では普通のものとなっている。
アドワーズも、最初は検索結果の右端に検索連動広告が表示されていたが、今は右端にはなくなり、検索結果のトップに「広告」としてシンプルに表示されるように改良されている。
2007年にはNHKで「グーグル革命の衝撃 〜あなたの人生を“検索”が変える〜」が放送された。世界に衝撃を与え続けるGoogleという会社やサービスを巡る内容を視聴者にも届けた。
ブリンとペイジのエピソード本でなくシュミットとローゼンバーグ視点の経営者本
本の内容について、最初にこの本はGoogleの創業者セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジが中心ではない。
CEOのエリック・シュミットとプロダクト責任者ジョナサン・ローゼンバーグ、Google社員のアラン・イーグルの三人が執筆者となり、彼らの視点からみたGoogleという企業の経営について書かれているものだ。
外部から来たシュミットやジョナサンから見て、Googleがどのような(型破りの)考え方の会社なのか。Googleがインターネット黎明期から、どのような市場戦略で動き、(爆発的な)成長を遂げたのかが記されている。
特に当時大手IT会社エキサイト・アット・ホーム(Excite@Home)からGoogleに採用され、部門の改革を意気込んだ就任当初のローゼンバーグから見て、Googleの社風や考え方は相当奇妙なものだったことが語られる。
創業当時のアカデミックな雰囲気を持ち込んだGoogleは、歴史上これまで存在しないほどの速度で成長する破壊的なほどオープンで従来の会社の常識が通用しない先鋭的で技術者偏重であった。
普通の企業人だったローゼンバーグの考え方は通用せず、意気込んだ最初の仕事であるプロダクト計画の策定もラリー・ペイジにあっさり否定される。
シュミットとローゼンバーグの二人は技術的なキャリアの背景もあるが、この本ではGoogleサービスの技術的なコア部分についてほとんど触れられていない。
サービスを中止にした考えや背景については書かれており例えば日本でも人気のあったGoogleリーダーを廃止した理由などもシンプルだが説明されている。
Googleの面接
『How Google Works』では社員をどのように採用し扱うかについても詳細に触れられている。むしろ、サービスや技術そのものよりも社員の扱いについての方がウェイトが大きいかも知れない。
Googleが「スマート・クリエイティブ」と呼ぶ技術者、知的労働者は単なる社員の存在を超えており、21世紀型知識労働者の新しいモデルとなっているが、それと現在のIT企業の多くの実態は乖離している。
Googleは最も重要視しているのはプロダクトでありサービスでありそれを使うユーザだが、それを生み出す技術者、スマート・クリエイティブをどのように確保するかについてもかなり気を配っている。
Googleでも通常企業と同様、雇用の際には面接が実施される。Googleの面接はそのサービスの技術的な背景同様、複雑だと捉えられがちだが、この本ではむしろ、Googleの考え方は普遍的なものだと感じられる。歪なのは会社の中の歪んだ慣習や体制によって曲げられた考え方で、Googleではそういったものを基本的には全て否定している。
会社の中で当然とされることを否定することが如何に難しいか、会社に勤めた経験がある人はよく知っていると思う。
なお、Googleの人事制度についてはこの本ではほとんど触れられず、Google人事管理責任者のラズロ・ボックの著書が紹介されるに留まる。
Google人事管理責任者の本
ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える
興味深いトピック
誰にとっても興味深いトピックについては箇条書きで記しておく。
詳細は実際に購入して読んでもらいたい。
章「意思決定 「コンセンサス」の本当の意味」
2009年にGoogleが中国からのハッキングにあった時の社内の様子と対処
章「イノベーション 原始スープを生み出せ」
iOSとアンドロイドの対立の詳細(スティーブ・ジョブズ)
お勧めできる読者・向いていない読者
Googleに関して興味のある人には勿論、企業の経営者やリーダーは読むべきだろう。
本の内容は、今会社を経営している人やこれからベンチャーを立ち上げようとする若手経営者に向けて書かれたような体裁になっている。
普通の会社員でも組織論として、21世紀型サービスの考え方について、天才的な技術者集団を集めた世界の最先端を行く企業がどのような考え方で企業を経営しているのか、あるいは危機に臨んでどのように対処しているのかといったトピックは大いに刺激になるだろう。
学生の人には、経営者層が面接や採用をどのように考えているかを詳細に知る事が出来るという点で役に立つのではないか。
「ブリンやペイジの個人エピソードを知りたい」「Google創業当時の逸話を知りたい」という購買動機の人には余り向いていない。上に書いたように、どちらかというとローゼンバーグ視点のエピソードが多いからだ。
ただ、Googleに問題が起きた場合の社内での意見の割れ方や、どのように収束させていくかといった事は大いに示唆に富んでいる。
Googleの経営者層が書いた本ということで、堅苦しく難しい経営本ではないか、と却って構えてしまう人もいるかもしれないが、ジョーク(やブラックジョーク)、時には絵本のようなイラストなども交えながら息抜きもふんだんにあり読みやすい本だ。
ぜひこの機会に手に取って読んで頂ければと思う。
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