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龍が如く8 クリア後感想(ネタバレ多め!!)

「歌舞伎町」をモデルにした架空の町「神室町」を舞台に、日本の裏社会に生きる漢の生き様を描いた、セガの人気シリーズ「龍が如く」。
その最新作である「龍が如く8」をつい先日クリアすることが出来たので、早速感想を書いていきたいと思う。
タイトルにも書いたように、ネタバレをしていくので、まだクリアしていない方やこれからプレイする予定の方は、見ない方が良い。もしこの記事を見ることで、物語の先が読めないという人生に一度しか訪れない楽しみを失うことになっても、当方は一切責任を負うことが出来ない。


ストーリー

今作のストーリーの感想を率直に言うと、序盤から中盤まではほぼ完璧だが、終盤は失速が目立つというものになる。少し解説していきたい。

前回の記事で語ったが、今作のストーリーは主人公「春日一番」の母親探しを主目的として進む。ゲーム序盤に母親の足跡を追ってハワイへ行った春日は、そこで数多くの新たな出会いを経て、やがてハワイの裏社会そのものと対峙する…というのが今作の大まかなストーリー展開である。

ハワイで新たに出会った人物「三田村英二」「エリック・トミザワ」「不二宮千歳」「ブライス・フェアチャイルド」やハワイのマフィア「山井豊」「ドワイト・メンデス」「ウォン・トー」はいずれもキャラがしっかりと立っており、それぞれ印象深い活躍をして物語を盛り上げてくれる。
また、ストーリー序盤でシリーズの顔役である「桐生一馬」と合流することや、彼の口から語られる衝撃的な事実なども含めて、ストーリー中盤までは新鮮な気持ちでストーリーに入り込むことが出来た。

だが、中盤の終わりごろに春日と桐生がそれぞれ日本とハワイで別行動をとったあたりから、徐々に勢いが失われていくように感じる。
ここからは、春日パートと桐生パートに分けて、それぞれ感想を語っていきたい。

春日パート

今作における春日の目的は、実の母親である「岸田茜」と再開し、「荒川真澄」の遺灰を渡すことにある。
そしてその目的は、ゲーム終盤に差し掛かったころに果たされる。夕焼けの生えるハワイの海岸で、春日が茜に荒川の遺灰を渡すシーンは情景の美しさや声優の演技も含めて印象的であり、今作屈指の名シーンだと感じた。

反面、ここで春日の本来の目的は果たされたためか、後のストーリーはあまり印象に残らなかったのが正直なところだ。

春日パートのラスボスを務める「ブライス・フェアチャイルド」は、ハワイの宗教団体「パレカナ」の教祖という表の顔と、ハワイの裏社会を牛耳る「オーナー」という二つの顔を持つ。
普段の温厚な聖職者と、冷酷なマフィアという二面性が印象的で、今までのシリーズにはない敵に仕上がっており、ラスボスとしてもなかなか魅力的なキャラクターだが、春日とのつながりは薄く、いまいちドラマとして盛り上がらない。

また、宗教団体の教祖だけあって、洗脳した部下は彼の為に平気で命を投げ捨てるなど本来は異常なカリスマを有するはずなのだが、ゲーム中ではそれが伝わってこず、結局ただのマフィアに落ち着いてしまったかのように見えるのが個人的には残念に感じた。

もう一人重要な人物として、物語のキーパーソンの「ラニ」という少女がいる。彼女はパレカナの本来の後継者であり、その立場ゆえにブライスに命を狙われ、ハワイ中のマフィアから追われることになる。

彼女を守ることが後半の春日や桐生が戦う動機付けとなるのだが、肝心の彼女のキャラクターが弱く、主人公たちを戦わせるための舞台装置という印象がぬぐえない。

また、春日パートの重要人物である「三田村英二」の扱いも中途半端に感じた。春日がハワイに到着して初めて親交を深めた人物だが、実は敵と通じており、中盤からは敵対することになる。
その一方で春日は彼に友情を感じており、戦いの中で何度も対話を試みるのだが、なぜか終盤になると三田村はフェードアウトしてしまう。
一応EDでは登場し、春日と三田村との関係にも決着がつくのだが、正直唐突な印象は否めないし、できれば本編のストーリー中で描いて欲しかった。

まとめると春日パートの後半は、いまいち感情移入できないヒロインの為に、特に因縁もない敵と戦うという人間ドラマとしては盛り上がりに欠ける内容と感じた。
春日のキャラクターを考えたら、罪のない少女を守るために巨悪に立ち向かうという展開自体は自然ではある。
ただ、厳しいことを言うなら、それは他の勧善懲悪ものでも出来ること。名作と呼ばれるストーリーには必ずその先があるのだが、少なくとも春日パートでは、それを感じることが出来なかった。

桐生パート

もう一人の主人公である桐生一馬は日本を舞台に戦うことになる。
結論から言ってしまえば、桐生パートは春日パートよりも出来がいいと感じた。

シリーズの顔であり作中最強クラスの実力者の桐生だが、本作ではガンを患っており、過去作とは比べ物にならないほど弱体化している。この時点でシリーズファンに与えるインパクトは絶大だが、その後も容赦なく桐生が死にゆく運命であることを叩き込んでくれる。

例えば桐生パートのコレクション要素の一つにエンディングノートというものがある。これは桐生が特定の場所を訪れることにより、過去を思い出すというもの。この過去とは過去シリーズのことを意味し、シリーズをプレイしていればいるほどに過去に思いを馳せることができ、プレイヤーと桐生の感情がリンクする仕掛けとなっている。

また、シリーズを通して桐生の相棒として活躍した刑事の伊達真を始め、2のヒロインである狭山薫、4・5の桐生の仲間である秋山駿などのメインキャラクター以外にも、神室町のホスト一輝とユウヤ、蒼天堀のキャバ嬢ユキと小雪、桐生の師匠的ポジションの古牧宗太郎、かつて桐生が経営していた養護施設の少年太一など、過去のシリーズで桐生と関わった多くの人物が登場し、シリーズオールスターの様相を呈している。

反面、本編のストーリーには気になる点もある。
例えば桐生パートのラスボスを務める海老名正孝。彼は荒川真澄の実の息子であり、春日とは異母兄弟の関係にある。
彼の母親は荒川真澄によって壊滅させられた氷川興産の組長の娘であり、組が壊滅した後は女手一つで海老名を育てるが、心労がたたり彼が中学生の頃に病死する。そんな境遇のため、ヤクザ・特に荒川真澄を激しく憎んでいるのだが、序盤を除き春日と対峙するシーンがないため、いまいち設定を活かしきれていないように思う。
彼は桐生との対峙で荒川真澄を信奉する春日のことを「カルト宗教の信者と変わらない」と吐き捨てたが、それの言葉は本来春日に向けてこそ言うべき言葉であったと思う。

海老名との対決後に桐生に「どんなクズでも生きる事でしかやり直す事は出来ない。」と涙ながらに謝罪されて逮捕されたようだが、物語の決着としてはかなり強引に感じた。
前作の7もラストの流れとしては共通する部分があるが、主人公とラスボスの関係性がゲーム全編を通して濃密に描かれていたという点で決定的に違う。自分は7のラスト、コインロッカー前での主人公とラスボスの対話を何度も観返すほど気に入っているのだが、それまでのストーリーで徹底的に主人公とラスボスの関係を描いたからこそ、最後のクライマックスシーンを盛り上げることが出来たように思うし、主人公の理屈もクソもない感情任せの説得と、それを受け入れたラスボスの姿に納得し素直に感動することが出来た。

今作にも良いシーンはあり、特に海老名の狂気じみた独白シーンや、決戦後の桐生の涙ながらの説得などは確か印象的ではあったが、それは演者の力によるところが大きく、ストーリーそのものの力ではなかったように思う。

まとめると、桐生パートはシリーズファンへのサービス面は出来がいいが、本編はやはり気になる部分が多く、いまいちのめり込むことが出来なかった。

まとめ

かなり厳しいことも書いたが、ストーリー全体としては決して破綻しているわけではない。特に桐生パートはシリーズをプレイすればするほど楽しむことができ、「エモいぜ…」と作中の桐生のような感想を持つことは間違いない。
反面、ストーリー後半になるほど展開に粗さが目立つのが気になる。スタッフは以前ファミ通のインタビューで「8の物語はあくまで春日がメイン」と発言していたが、実際は最後の戦いを桐生で締め、EDのラストシーンも桐生で締めるなど、物語後半は桐生がメインにしか見えない。
これは推測だが、桐生パートを制作しているうちに開発スタッフは桐生に感情移入しすぎたのではないか?結果、初期とはストーリーの構成が変わったのではないかと感じる(上記のインタビューも発売から1年以上前のものである)。
無論、単なる推測で根拠はないが、どうにも後半のストーリーにはスタッフの迷いのようなものを感じてしまう。自分が後半のストーリーにのめり込めなかったのも、そんなスタッフの迷いを感じてしまったからかもしれない。

戦闘システム

最初に結論を言うと、戦闘に関してはストーリーに反してゲームが進むほどに尻上がりに面白くなったと感じた。
7でRPGにモデルチェンジした龍が如くシリーズだが、前作は一般的なコマンドバトルの域を出ず、まだまだ改良の余地があるように思えた。
今作は、一見前作と変わらないように見えるが、独自性を出すことに成功しており、尚且つその独自性は龍が如くシリーズとして違和感のないものとなっている。
前作になくて本作から追加された要素はなにか?それは位置取りという概念である。

前作では味方キャラ同士の位置によって通常撃後に追加攻撃が発生するというシステムが存在したが、なぜかキャラを直接移動することができず、追加攻撃の発生は偶然に頼るしかなかった。
今作ではコマンド選択時にキャラを移動させることができ、能動的に追加攻撃が狙いやすくなった。さらに、背後から攻撃するとダメージが1.5倍になるという仕様も相まって、バックアタック・追加攻撃・ダウン追い打ちが重なると通常攻撃とは思えないほどの大ダメージを与えることが出来るようになった。
また、仲間との絆が重要視されているシリーズだけあって、仲間が増えるほど追加攻撃が発生しやすくなるほか、仲間との絆を深めると追加攻撃の性能が上がるなど、シリーズの方向性と戦闘システムが見事に合致している。

また、通常攻撃と極技のバランスのとり方も良い。極技の仕様こそ前作と変わっていないが、通常攻撃がパワーアップした分「ノーコストではまった時には強い通常攻撃」と「MP消費するがお手軽にダメージを稼げる極技」との差別化がしっかりできており、後半は強力な極技を連発するだけになりがちだった前作7から大きく進化している。

他にも、ジョブチェンジシステムも前作から進化している。
前作ではせっかくジョブを鍛えて覚えた極技も、ジョブを変えると一部を除き使えなくなったが、今作ではほぼ全ての極技をジョブチェンジ後も使えるようになり、戦略性が大きくパワーアップしている。
反面、一度に仕える他ジョブの極技の数に制限は出来たため、この点は劣化していると言えるかもしれない。
もっとも、この制限が無いとジョブの強さがパラメータだけで決まってしまうため、この点は仕方のないことだろう。
ちなみに個人的には、千歳をくノ一にしてウォームアップ×3→分身切りが気に入っている。準備に3ターンかかるが、発動すれば圧倒的な火力をたたき出し、非常に気持ちがいい。
こういったシステムの効果的なシナジーを発見する喜びは、RPGならではのものだと思う。前作ではその点が弱かったが、今作ではRPGとしてしっかりと正当進化しているのが、何よりプレイして楽しかったところだ。

他に今作の戦闘で外せない特徴として、絆技(絆覚醒)というものがある。
これは戦闘中に行動するたびにたまっていく絆ゲージを最大にすることで使える技で、基本的には仲間と主人公の合体攻撃という具合である。
特筆すべきは桐生の絆覚醒であり、彼で発動すると全盛期の如く戦闘フィールドを自由に動き、アクション操作でパンチやキックを放つことが出来る。
攻撃力も非常に高く、他のキャラの軽く2,3倍の大ダメージを与えることが出来る。
これは6以前のA.AVGの龍が如くをもう一度プレイしたいというユーザーの要望を叶えるために実装したともいえるが、個人的には仲間の絆の力で、短時間とは言え全盛期の力を取り戻したという解釈をしたい。

その他システム

ここまでは戦闘システムについて語ってきたが、その他のシステムについても語っていきたい。

龍が如くと言えば多数のプレイスポットが挙げられるが、今作でも非常に多くのプレイスポットがある。
カラオケ、麻雀、将棋、バッティングセンター、キャバクラと言った基本的なものから、マッチングアプリ、クレイジーデリバリー、不審者スナップと言った本作ならではのもの、さらにはスジモンバトルやドンドコ島など、もはや一つのゲームとして成立しそうなものまで多種多様にそろえてある。

ちなみに筆者はこれらミニゲームは基本的にはプレイしていないが、クリアまではおよそ50時間ほどかかった。
もしミニゲームをやりこんだらさらに数十時間は上乗せした可能性が高く、一つのゲームとしてのボリュームは申し分ない。

総評

まず初めに断っておくと、筆者はストーリーを最も重視してゲームをプレイするタイプである。
その観点から見れば、今作のメインストーリーはシリーズでも特に評価の高い0や7には及ばなかったというのが正直なところである。

反面、システムの完成度やボリューム、ファンサービスという観点から見れば、シリーズでも最高峰にあると言える。
特に桐生パートはシリーズオールスターともいえる内容となっており、過去にプレイしたシリーズが多いほど楽しめる内容となっている。

シリーズファンはぜひプレイして、死にゆく「堂島の龍」最後の戦いをぜひ目に焼き付けてみてはいかがだろうか?
長年に渡り他者の為に戦い続け、名前すら失った漢が最後に手にしたものはなにか?プレイヤー自身の目でぜひ確かめてほしい。


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