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7月20日

今後の説明がある日。緊急入院からちょうど1か月たった。

今日は血液検査があった。

赤血球 313 /μl    (標準値:380~480/μl)
ヘモグロビン 9.5 g/dl (標準値:12~16g/dl)
血小板 59.5 万/μl   (標準値:10~49万/μl)
白血球 2740 /μl    (標準値:4000~8500/μl)

数値は18日から比べて、さらに改善している。

14時過ぎに家族が到着し、しばらくして主治医の先生も合流し、病状説明書と補足資料を渡され説明が始まった。

急性骨髄性白血病の正常核型、予後中間群で、ダウノマイシン+キロサイドによる化学療法を行い、現在血球は回復している。
7月18日の骨髄穿刺検査で、骨髄中の白血病細胞は5パーセント未満になり、完解達成している。
今後は地固め療法を3~4コース行う予定。

気になったのは、予後中間群という表現だった。

詳しく説明が追加される。

中間群とは具体的には、化学療法のみで経過した場合の5年生存率は30~35パーセントだということ。

これは統計による数値で、最新の患者データが反映されているわけではなく、もう少し改善されている可能性も高いと説明されたが、思っていたよりも数値が低くてショックを受けた。

ただあくまでも過去のデータであり、現在は薬剤も良くなり、治療効果もどんどん上がっているので、この数値を悲観しないでほしいと言われた。

それから気になっていた移植に関しての説明が入った。

私の病型の場合、兄弟間でHLA型が一致した場合、移植を行うほうが予後が良くなる傾向にあるので推奨しているとのこと。

また、今後治療の最中に白血病が再発した場合や、治療後に白血病が再発する場合は、すぐに抗がん剤による化学療法を行う。

治療効果が出て再度完解が得られれば、血縁者・非血縁者を問わず移植治療することが望ましいとのことだった。


周囲からは、治る病気になった、有名人の誰それも治って元気に活動しているとか、良い情報だけを聞き、目にするように努力してきたけど、初めて現実を突きつけられて、胸の真ん中に真黒くて重たい何かがドスンと落ちてきたような感覚に襲われた。

家族の顔はとても見られたものではなかった。妻も両親も取り乱さずに冷静さを保っていたけど、血の気が失せていた。

緊急入院で治療が始まって、毎日訪れる体験したことない副作用と付き合って、知らないことを看護師さんに教えてもらいながら、忙しく過ごしていて自分のことで精いっぱいだったから、ゆっくりと状況を把握し考えたのはこの日が初めてだったかもしれない。

妻はものすごく不安になったと思う。

病気になってしまい申し訳ないと、心から感じた瞬間だった。


第2クールの治療に入る前に、兄弟のHLA型の検査を進め、同時に骨髄バンクへの問い合わせも行うことになった。

HLA型とは、ざっくりいうと白血球の型のこと。

兄弟間で一致する可能性は、25パーセント。骨髄バンクでの非血縁者での一致確率はかなり低い。

主治医の先生が心配していたのは、兄弟の仲。まれに仲が悪くて協力をしてくれないという患者さんもいるらしい。

幸い私たち兄弟は仲が良かったので大丈夫とは思ったけれど、説明が終わった後連絡を取ったところ、検査を当然のように快諾してくれた。

予想通りとは思ったけれど、より良い治療の希望となるので、ありがたかった。


説明が終わり、家族が帰ったあと、看護師さんから大丈夫ですか?と声を掛けられた。

たいていこういう説明の後、患者さんはメンタルをやられるらしい。

しばらくは平気だったけど、一人になり、夕食を終えて夜が深まってくるのに合わせて、余計なことを考えるようになってくる。

どうしても生存率の数値が頭をよぎってしまい、楽観的でポジティブだと思っていても、さすがに不安が押し寄せてくる。

看護師さんが巡回の時にその様子に気付いてくれ、会話する時間を設けてくれた。

看護師さんから見る私は、言われたセルフケアをしっかり実践して、前向きにリハビリにも取り組んでいて、看護師さんたちがケアしやすい模範的な患者らしい。

副作用の出方や、数値の変化は、看護学校や病院の研修で学んだとおりの見事なくらい教科書通りに症状が出てくるのでケアしやすいらしい。

治療からの回復が平均よりも早いのは、前向きに努力した結果がきちんと治療実績として表れているからだという。

たくさんの患者さんを診てきて、このあたりのことは経験上わかるらしく、太鼓判を押された。

心強い言葉だった。

悲観していても良くなることはない。

自分ができることは限られているからこそ、前向きに取り組んでいくしかない。

ほめてもらったセルフケアをしっかりと続けて、リハビリもきちんとして、治療がうまくいくように願いながら、今できる、自分ができることをコツコツとこなしていくしかない。

続く

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