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「仕事」とは何か? (後編)

前編の記事で見ていただいた通り、私の人生はかなりユニークかつ波乱万丈です。すくなくともこれから先、みなさんが生涯の中で私みたいな経歴の持ち主と出会うことは、それほど多くはないはずです。「へー!世の中にはこんなレアキャラがいるんだ!」みたいな感じで、私の経歴を少しでも楽しんでくれたら嬉しいです。

仕事をエンターテイメントにする

さて、この講義のテーマである「仕事とは何か?」という問いに戻ってみたいと思います。この問いに対する私の答えは、「仕事とはエンターテインメントである」です。

仕事を自分にとっての娯楽にする。私にとっての娯楽は、未経験のことに挑戦したり、新しい場所に足を踏み入れたりすることです。昨日と同じ今日ではなく、いつも新しい何かが起きたり、新しい出会いがあったりするような、ワクワクする日々を過ごしたい。53歳の私はシンガポールに来て、素晴らしいエンターテイメントを手に入れました。

仕事はある意味、逆説的で、つまらない生き方をするのはとても簡単です。家の中で何もせずゴロゴロしていればいいだけ、誰にでもいますぐできる簡単な生き方です。一方で、金銭的には困窮し、健康的でもなく、誰にも顧みられることもなく、YouTubeを見る以外に楽しみがなにもない、そんな日々を過ごすことになります。

楽しく生きるためにはある程度お金が必要です。そのためには多くの努力と忍耐が必要です。また健康を維持し、人とのつながりも大切です。家族を持ち幸せな家庭を築くことはとても楽しいことですが、とても大変です。富と名声を築くには並大抵ではありません。楽しく生きるためには大きな努力が必要で、簡単なことではありません。

楽に生きるのは簡単だけど楽しくない。幸せに楽しく生きるのは楽じゃない。このパラドックスに対する私の答えは、仕事を楽しむことしかないと思います。仕事を自分にとっての娯楽にできれば、多少辛くても乗り越えられるし、やりがいを感じることができます。

みなさんはまだ仕事の経験が少なく、何をしたらいいのか悩んでいることと思います。そもそも自分は何をしたら楽しめるのかすら、わからないという方も多いのではないかと思います。大切なのは、とりあえずやってみることです。やってみないと何も分かりません。

仮に失敗だったとしても、失敗することには意義があります。失敗には両面性があり、失敗したからわかること、失敗したからこそできたことというものがあります。例えば、私にとって楽天への転職は大きな失敗の一つですが、それによって起業家になるという道が開けました。何が成功で何が失敗なのかは、時間がたってみないと分かりません。

失敗を恐れず、とにかくやってみること。絶対に忘れないでください。

たった3つの成功の秘訣

成功を手に入れるために、私が大切だと考える3つの秘訣があります。

1. 楽しいか? わくわくできるか?

一つ目は、何を選択をするかです。私は自分が「楽しそう」と感じる方を選ぶことが、正しい選択の基準だと思っています。目先の利益や周囲の評判に惑わされるのではなく、自分にとって「ワクワクするか?」で判断するべきです。

また、多くの人が「できるか、できないか」でものごとを判断しがちです。ですが、「できるかどうか」はあまり重要ではありません。

例えば、私がシンガポールに来た当時、英語がまったく通じませんでした。ここに来てもうすぐ1年経ちますが、いまだに言葉が通じなくてもどかしい思いをすることが多々あります。本当に辛いです。でもそれは時間の問題で、この1年で私の英語はものすごく進歩したし、1年後にはさらにもっと流暢になっているはずです。多くの「できないこと」は時間が解決する問題に過ぎず、自分の力で「できること」に変えられます。

でも、まったく楽しくない退屈なことをやり続けることはできません。いずれ飽きて挫折します。「好きこそ物の上手なれ」とはよくいったものです。だからこそ、楽しいと思うこと、ワクワクすることを選択することが重要です。

2. 絶対に諦めない

二つ目は、絶対に諦めないこと。成果が出るまで諦めずに、最後までやり抜くことが成功へのカギです。

私の関わっているCashWiseは、創業して約半年ほど経ちますが、ようやく先月最初のバージョンのサービスをローンチし、最初のお客様を受け入れることができました。ここに至るまで、共同創業者とは何度も議論が紛糾しましたし、この事業はダメかもしれないと落ち込んだことが何度もあります。

諦めるのは、本当にどうしようもないところまで追い込まれて、それしか選択肢がなくなるまでとっておきましょう。

3. 言い訳をせず、結果を出す

三つ目は、何があっても結果をだすこと。状況が厳しい時でも、何か行動することが大切です。他人や状況のせいにするのではなく、自分ができることをやり抜く姿勢が求められます。

本当に多くの人が、なんとなく自分にできそうなことに飛びつき、うまくいかないとすぐ諦め、誰かに責任を転嫁して言い訳をします。言い訳を言い尽くすと、また最初から同じことを繰り返します。そういう人は、いつまでたっても成長しません。

どんなに理不尽な状況であっても、あなたの給料は結果を出すために支払われているのであって、決してあなたの言い訳を聞くためではない、ということを忘れないようにしてください。

どんなに困難な状況であっても、あなたにしかできない行動があり、それこそが困難を乗り越える唯一の方法です。

ここに書いた成功の秘訣は、とてもシンプルで当たり前に聞こえるかもしれません。ですが、驚くほど多くの人にとって、この3つの簡単なことが守られていません。言い訳と文句を言い続けるだけで、前に進もうとしない人を本当にたくさんみてきました。逆に言えば、この3つの秘訣を実践するだけで、あなたは大きなアドバンテージを得ることができます。

日本の将来について

最後に、みなさんに考えてほしいことが一つあります。それは、日本の人口減少についてです。日本の人口は、世界最速で減少し高齢化しています。

日本の人口予測

人口の減少は、日本全体のお金の総量が減っていくことを意味します。お金が減ると、誰かが損をします。あるいは、自分の収入を得るために必要な労力が増えることになります。

また、高齢者はあまりお金を使いません。人生の中でもっともお金がかかるのは子育てであり、高齢化で子育てをしない世代が増えたり、少子化で子供の数が減ると、世の中のお金の流れが滞ることになります。

これまでは人口が増えていたので、人々は比較的容易に明るい未来を夢見ることができ、幸せを手に入れることができました。ですが、これから先、そういったものを手に入れるのは、どんどん難しくなります。少なくとも、普通に働いたら普通に生きていける世の中、というどこかの政党が掲げるような世の中は永久にやってきません。

将来の日本を住み良い国にするためにこの国で頑張るのか、あるいは私のように他の国で理想の地を見つけるのか。日本で生きていくのなら、どのようにして小さくなる一方のパイを切り取るのか、戦略的かつ現実的な判断が必要です。

さらに言えば、税金や社会保障の問題も考える必要があります。私がシンガポールに移住した理由の一つはこの問題です。日本では所得税の最大税率は55%ですが、シンガポールでは22%しかありません。消費税も8%です。何よりもキャピタルゲインへの課税がないため、株式の売却益に対する税金がかかりません。

増え続ける高齢者と医療費のために、日本で働く現役世代は多額の社会保障費を負担する必要があります。おそらくみなさんは、就職して初任給の給与明細を見てびっくりするはずです。非常に大きな金額が勝手に給与から天引きされてしまうからです。その大半は見知らぬ高齢者の年金や見知らぬ誰かの医療費、そして過去の政府のツケの返済に充てられ、自分や自分の家族のために使われるのはほんのごくわずかです。この先状況は悪くなる一方で、改善する可能性はまったくありません。

すくなくとも私は、少子高齢化が進み、税金や社会保障費の負担が重くのしかかるこの国で、これ以上仕事をする気にはなれませんでした。

為政者への悪口はなんの解決にもなりません。将来の日本の状況について真剣に考え、戦略的な選択が必要です。

まとめ

私の話は以上となります。みなさんには、これをきっかけに自分の人生について深く考えてみて欲しいと思います。どんな人生を歩みたいのか、どんな幸せをつかみたいのか、みなさんが自分で考えて行動しなければ答えは見つかりません。

「大企業に行けば安泰だよね」とか「スタートアップに行けば楽しい仕事ができるよね」という単純な方程式もありません。長い人生では「勝ち組」がいつの間にか「負け組」になり、「負け組」が一発逆転することだっていくらでもあります。

世界は、本当に途方もなくたくさんのチャンスに満ち溢れています。起業家の世界にいると、突然友達が途方もなく大きな成功を手にする瞬間に出くわすことがよくあります。まったく特別なことではなく、誰にでも可能性があります。つかみ取れるかどうかは、あなた次第です。少なくとも、「チャンスを掴みたい」と思って行動しなければ、永久にチャンスはやってきません。

この講義を聞いてくれた学生のみなさんの誰かが30年後、私と同じ教壇に立ち、後輩たちに自分の経験を熱く語る日が来ることを願っています。


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