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ここらへんの史跡をゆく⑨~大高城址

今年の note は「ここらへんの史跡をゆく」シリーズから始めることにします。本稿を開いて下さった皆様、本年もご愛顧賜りたく何卒よろしくお願い致します。

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今回取り上げる「大高城址」は、名古屋市の南部 緑区大高(おおだか)町にある。周辺のイオンモールやカインズ、ニトリ有松は正に私の行動範囲内。今はベッドタウンになっているこの辺りに、かつてお城があったことを知る人は少ない。私も「なんか聞いたことあるかな?」ぐらいの薄い認識だった。

次の日曜日 新大河ドラマ「どうする家康」がスタートする。主役の徳川家康を演じるのは嵐の松本潤くん。その第一回の放送に、知名度イマイチの大高城は必ず登場する。桶狭間の戦いで今川義元が討たれたその時、今川軍の若き将であった家康 (当時の名前は松平元康) は大高城にいたのだ。

【俄か仕込み付け焼き刃的解説】
 桶狭間の戦いは1560年5月19日に起こった織田信長軍と今川義元軍との合戦。尾張への勢力拡大を目論む今川とそれを阻止したい織田。それまでの攻略と調略によって大高城、鳴海城、笠寺城、沓掛城など尾張南部の城は今川の手に落ちていた。織田方はそれら拠点間の情報遮断と物資供給ルート遮断を目的として、城を包囲する砦をいくつも設けて対抗した。
 そんな状況を打開すべく今川義元が動く。5月12日 2万の兵(諸説有り)を率いて駿府を出発。17日に沓掛城(豊明市)に入りそこを本陣とした。家康はその大軍に付き従っている。
 18日夜 家康は沓掛城から織田方の包囲網をかいくぐり、孤立していた大高城に兵糧を届けた。そしてそのまま大高城に詰めた。
 19日未明 家康は大高城を出て丸根砦を攻撃、今川軍は同時に鷲津砦も攻撃し同日早朝に両砦を陥落させた。これにより大高城周辺を今川軍が制圧。そのあと家康は大高城の守りに就く。
 19日10時 今川義元の本軍は大高城に向けて沓掛城を出発。12時頃途中の桶狭間で休息を取る。同時刻 中島砦まで来ていた織田信長軍は今川軍の所在情報を入手し、桶狭間に向けて進軍を始める。13時頃降り始めた豪雨に乗じて織田軍は今川軍に奇襲を仕掛けた(正面衝突だったとの異説も有り)。
 14時頃今川義元の首が討たれ、今川軍は敗走、織田軍の勝利が決まる。

桶狭間の戦い前日の勢力分布  *赤が今川軍 *青が織田軍

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私は昨年末、イオンモール大高の帰りに坂を上って丸根砦に行った。そして年が明けた晴天の日の朝、大高城址と鷲津砦(の麓まで)を訪れた。そのあと沓掛城址にも足を延ばした。

このシリーズ の前回⑧は江戸城。江戸城は家康にとっての到達点だったろう。竣工時 家康は既に64歳。それに対して大高城はスタートの城だ。ここを守るよう命ぜられなければ、桶狭間で命を落としていたかもしれない。家康にとって "開運の城" と言ってもいい。

私は「どうする家康」が始まる前に、大高城址とふたつの砦は見ておかなきゃと思い、年末年始に慌てて訪れた次第。一時間程本丸跡を散策したのだが、その間誰一人見かけることはなかった。城跡には音もなく冬の冷たい空気が漂っていた。

私は二千余人の兵を従え、大高城に向かって坂を駆け上がってくる若き家康を想像して佇んだ。その顔は松本潤くんだった。
(最近ようやく徳川家康=松潤と思えるようになってきた。)

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以降は、画像とキャプションだけです。

【概略図】  今川方の大高城と鳴海城 そこを囲むように織田方の砦が対峙する                                 赤白の線は桶狭間の戦い当日の織田軍の行程 熱田神宮から丹下砦に入り砦を経由して移動   
中島砦からは有松方面に迂回して桶狭間を目指した                       
【現在の地図】   大高城 ← 767m → 鷲津砦     大高城 ← 821m → 丸根砦  
大高城址の登り口 坂を上った右に本丸跡がある 高低差約15m
大高城 本丸跡
大高城から見る鷲津砦 拡大すると麓を走る新幹線が見える
大高城下の大高八幡社 家康がお参りしたという言い伝えが残っている            
鶴岡八幡宮からの分霊が由来の神社なので 頼朝好きの家康の参詣はあったかも
丸根砦付近から見る鷲津砦
鷲津砦公園 山道を通り最高地点まで行けるのだが当日腰が痛くて断念 高低差約25m
丸根砦に向かうかなり急な坂道 高低差約30m
丸根砦「戦殉難烈古之碑」
【現在の地図】 大高城(黄色)  ← 7.8km →  沓掛城(橙色)  ※直線上に中京競馬場がある          
大高城  ← 3.4km →  桶狭間古戦場  ← 4.9km →  沓掛城   
沓掛城址 遠景
沓掛城 本丸跡


< 了 >

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