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♪生きていてよかった「深夜高速」~ 旧友Mのこと

北海道は大雪とのニュースがあった。私の住む東海地方も、昨日は高山市で初雪が降った。いよいよ冬だ。今朝の散歩は、セーターの上にダウンジャケットを着て、ニットの帽子で耳を覆い手袋をして出かけた。

帰り道、聞き慣れない鳥の声がする。声のする木の上を見ると、お腹が薄いオレンジ色の鳥がいる。ジョウビタキだ。冬の訪れと共に、律儀に今年も戻ってきてくれた。

ジョウビタキ ♂

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今年のプロ野球は変則日程で、一昨日までヤクルト×オリックスの日本シリーズをやっていた。選手はネックウォーマーをして、白い息を吐きながら寒そうにプレーしていた。日本シリーズ中継のCMで、聞き覚えのある歌が流れてきた。♪ 生きていてよかった、生きていてよかった ♪  心揺さぶられるシャウト。そうだ。フラワーカンパニーズの「深夜高速」だ。

それはSMBCの企業CMだった。高校のラグビー部でチームメイトだった稲垣啓太と岡崎体育。ラグビーを続ける稲垣と、会社員になった岡崎がそれぞれの道で奮闘する様子を描いている。CMに使われている曲「深夜高速」は岡崎体育によるカバー。曲と映像が絶妙にシンクロする。仕事を成し遂げて ♪生きていてよかった♪ と風呂で岡崎が叫ぶ場面がとても良い。
最近増えてきている企業CMの中でも出色の出来栄えだと思います。


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「深夜高速」を歌ったフラワーカンパニーズは、1995年にCBSソニーからデビューしたバンド。私の大学時代の友人Mが、デビューからずっとプロデュースしていた。愛すべき変人(?) Mのことを書いてみよう。

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フラワーカンパニーズ

もう45年も前のこと、Mは私が所属していたブルーグラス愛好会にやってきた。ベース弾きがいなくて困っていたバンドから頼まれて、サポート的に参加したもの。ブルーグラスはカントリーミュージックの一種で、この音楽を演(や)る人は、"ブルーグラス一途" 的な人が多い。そんな中、Mは異色だった。たくさんの音楽に興味を持っていて、「いろんな楽器を触ってみたい、音を出したい」という典型的な "音楽小僧" だった。

愛好会のメンバーはMを変人扱いしていたが、今思い返すと、ブルーグラスのような辺境の音楽にハマる人間も、別の種類の変わり者だった。

ブルーグラスの仲間たち

東京出身なのに、中日ドラゴンズの帽子を被って学校に通うM。私も中日ファンだったこともあってか、すぐに仲良くなった。Mはいくつもオリジナル曲を作っていて、それを私に聞かせて言う。「すごいだろ」。

※キャンディーズのスーちゃんを歌った「北千住」というオリジナル曲を覚えている。曲の最後の部分は、♪ 北千住~思い出のない街 北千住~今日も雨降り ♪    *スーちゃんは北千住の田中釣具店の娘でした。

Mの部屋には、膨大な輸入盤のコレクションがあって「すごいだろ」と私に自慢した。Mはたくさんの音楽を先取りして聴いていた。その部屋で、まだ無名だったビリー・ジョエルを教えてもらった。

大学を卒業してすぐの頃、市ヶ谷駅近くの路上でたまたまMに会った。Mは「オレ、CBSソニーに入ったんだぜ。すごいだろ。」と言って名刺をくれた。私は「さすがM」と思うと同時に、ちょっと口惜しかった記憶がある。その後付き合いは年賀状だけになり、いつしかそれも無くなった。

多分1993年だったか、テレビでMが話しているのを見た。それは尾崎豊の追悼番組だった。Mは尾崎豊を見出した最初のプロデューサーだったのだ。さもありなん。私は嬉しかった。テレビに向かって、心から「すごいね~」と言った。

以来私はMの活動を追った。聖飢魔ⅡのほとんどはMのプロデュースだ。他にもたくさんのバンドのデビューに関与していたようだ(多分奥田民生も)。フラワーカンパニーズ(以降フラカン)はソニー時代からMが携わっていて、フラカンがソニーとの契約を切られてからは、Mが立ち上げたレーベルに移籍している。

CMに使われた曲「深夜高速」は、2004年にMが代表を務めるレーベルからリリースされた。この曲は何人ものアーティストにカバーされ、歌い継がれてきた。Mが持つ "いいものをいい!"  "好きなものを好き!" と素直に言える能力は、数々の名作誕生をバックアップしたのだと思う。

※斎藤和義さんによるカバーです( ↑ )。
他に高橋優さんなどもカバーしています。

「生きていてよかった」Mはそう言うのかな。彼のやってきた仕事を見て思う。私も最期にそう言えることを目指そう。

Mとは5年程前に、30数年ぶりに再会し、以降年賀状のやり取りは続いている。今もオリジナル曲を多重録音してYouTubeに上げているようだ。コロナが明けたら会いたいものだ。その時は「すごいだろ」に、素直に「すごいね~」と応えるつもりだ。

< 了 >

 


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