石田真弓「音あつめ -afternoon-」
まず初めにご紹介する1点は、石田真弓さんというアーティストのアクリル画にしたいと思います。以下の画像が絵の全体です。
「音あつめ -afternoon-」(2019年)キャンバスにアクリル絵具。24.2x33.3cm。
当社でお手伝いし、2020年1月に恵比寿ALにて石田真弓さんの個展「音楽がきこえる」が開催されました。「音あつめ -afternoon-」はその個展でも展示された作品です。
「抽象画はきれいだが、どう受けとめていいか分からないので苦手」という方はとても多いと思います。私自身も苦手ですのでエラそうなことは言えません。
おすすめしたいのは、ヤボに聞こえる方法ですが、まずその作家さんがどうしてその描き方をしているのか、その描き方ではないとダメなのか、由来やストーリーを知ることを入り口にしてみることです。
石田真弓さんは、生活に支障がない範囲ではありますが、幼いときからシナスタジア(共感覚)といって、特に「色聴」(音から色が見える)の自覚がある方なのです。超能力者みたい!? と驚く方もいらっしゃいます。
共感覚については、以下のような記事をご参照ください。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55422
つまり、ある環境で聞こえてくる音が、そのまま画想(色や形、絵の構想)になっているということ。非常に独特な才能ですよね。彼女は、それをこのようなアクリル画や油絵に残しています。様々な音が彼女の感性フィルターを通ることで私たちの目でも分かるように映像化される。そう考えれば近いでしょうか。
本作はよく見ると、ケミカルな色、ざわついた気持ちになる色、美味しそうに感じる色などがポタポタと筆で置かれて混じっていますが、それは私たちが個人の経験をもとに、その色や形から得る連想に過ぎません。絵からさかのぼってその時の音を思い出せるのは、石田さんただひとりですから。わからなくて当然。
でもそれでいいのです。見ることで、こんな印象だったのかな、ということをうっすら感じたら、石田さんと絵でつながれたことになると思います。
彼女のアトリエでは、片側ではキーボードでいろいろな音を作りながら、片側では絵を描く、という不思議な創作風景が展開されることもあるそうです。それが以下の写真。(石田さんからお借りしている画像です)
この「音あつめ」シリーズは文字通り、石田さんが散歩をしていて聞こえた木々のざわめきや人の声、小川の流れや鳥の声などを絵にしているものです。キャンバスを持っていって、その場で得た印象と音の色・形を描き、その後アトリエでじっくり加筆するのだそうです。
抽象画は即興というイメージがあると思いますが、こちらの場合は約5日かかって完成させたという、実はなかなか緻密なものなのですね。
「音あつめ」シリーズは、そんな彼女の創作エピソードが分かりやすいエントリー作として、おすすめです。
個展で展示したのはこの「afternoon」の他に「floral」と「morning」でした。なんとなく散歩した時の情景がヒントのようにタイトルになっています。どれも好評で、3点のうち「floral」「morning」はすでに売約済みとなり、残り「afternoon」の1点になっています。
より詳しい情報は、当社で卸しをさせていただいている現代アート通販の「タグボート」さんのページをご覧ください。
石田さんのインタビュー記事はこちらです。美大在学中にシナスタジアに気づくまで、皆そんな感覚なんだと信じていた話など、いろいろ語っていただいています。
https://www.galleryspeakfor.com/?mode=f14
ということで、抽象画にも少しご興味をお持ちいただけたら幸いです。
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