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ガリレオ解説|Winnie-the-Pooh #5

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まえがき/Introduction (4)

もちろん、プーはクリストファー・ロビンのいちばんのお気に入り。それを「ちがうよ」と言うことはできないけど、それでも、プーではいけなくて、ピグレットの出番になるようなこともたくさんあるんだ。

Pooh is the favourite, of course, there’s no denying it, but Piglet comes in for a good many things which Pooh misses;

(34) the favourite

favouriteとは、‘a person or thing that you like more than the others of the same type’ (OALD)。もともと最上級の意味合いを持っているため比較級・最上級の形では用いない:my favourite food = the food I like the best.

(35) there’s no denying it

「そのことには否定の余地がない」(cf. there is no denying that Pooh is the favorite).

(36) comes in for

forで導かれる対象(a good many things)に対して「中に入ってくる (come in)」。ここから派生して ‘to receive something’の意味合いを表す。

come in for criticism「批判の的になる」のように、マイナスイメージの物事を受け取るという意味で用いられる場合も多い。

(37) a good many things

a large number of thingsの意。ここでの goodは manyを修飾する副詞で「たっぷりの」という意味。‘a good many ~s’と複数扱いになることに注意。


だって、みんなに気づかれないように、こっそりプーを学校に連れて行くなんてことはできないけど、ピグレットなら小さいから、するっとポケットに入れちゃうもんね。そして、「7かける2は12だったっけ、22だったっけ?」と、よくわからなくなったとき、ポケットの中のピグレットに触ってみれば、どんなに心が落ち着くだろう。

because you can’t take Pooh to school without everybody knowing it, but Piglet is so small that he slips into a pocket, where it is very comforting to feel him when you are not quite sure whether twice seven is twelve or twenty-two.

(38) because

前言 (Piglet comes in for a good many things which Pooh misses)の理由を導く用法.

(39) without everybody knowing it

everybodyは動名詞 knowingの意味上の主語.

(40) so small that he slips into a pocket

so smallの程度は that節の内容で具体化されている。動詞 slipは「移動概念+様態」を様態に注目して表現する形 (cf. 注 (24))。

(41) it is very comforting to feel him

it(仮主語)= to feel him(真主語)。feelは「触って感触を確かめる」というニュアンスを持つ(cf. touchは単に「触る」)。「彼に触ってみること」が人を confortさせるという能動関係 = 現在分詞 confortingで表す (cf. 注(9)).

(42) twice seven

直訳すれば「2回の7」= 7x2。答えの候補として挙がっている twelveや twenty-twoには「『2をかける』のだから答えにも2が含まれるはず」という素朴な考え方が伺える。


ときどき、ピグレットはポケットからするっと抜け出して、インクつぼの中をじーっとのぞきこんだりもするから、そんなわけで、プーよりも高い教育を受けているってことになるんだ。もっとも、プーは気にしてないけどね。

Sometimes he slips out and has a good look in the ink-pot, and in this way he has got more education than Pooh, but Pooh doesn’t mind.

(43) slips out

slips out (of the pocket)のこと。前文の he slips into a pocketが前提となっている。

(44) has a good look

have a lookは「一瞥する」.このような ‘have + a + 動詞派生名詞’の形で表される行為は「ちょっと〜する」というニュアンスを持つ:

have a swim「ひと泳ぎする」
have a rest「休憩する」
have a chat (with 人)「<人>とちょっとおしゃべりをする」

ただし「十分な・相当の」の意味を表す goodの存在により、have a good lookは「じーっと見る」という感じ(cf. have a good sleep「よく眠る」)。manyや longを修飾する副詞用法の goodについては注(37)を参照。

(45) he has got more education than Pooh

ここでの moreは muchの比較級。(cf. How much education does he have?「彼はどのくらいの教育を受けていますか?」)


知恵を持つのもいるし、持たないのもいる、とプーは言うんだ。そういうものさ。

Some have brains, and some haven’t, he says, and there it is.

(46) Some have brains, and some haven’t

代名詞用法の someは強形 / sʌm /(不定形容詞の場合は弱形 /səm | sm/)。不特定数ながら「存在がある」ことに注目する言い方.しばしば othersと呼応するが,このように some … some…と列挙して対照する場合もある。

haven’tは一般動詞の haveを否定したもので,イギリス英語で見られることが多い(ただし最近では do not haveの使用頻度が増えてきている)。初期近代英語以前では、一般動詞であっても I say notのように notを動詞に後続させて否定文を作っていた(cf. 家入 (2007: 97))。

(47) there it is

‘that is the situation’ (OALD)。この thereは強形 / ðeə / で発音される。プーが ‘Some have brains, and some haven’t.’と言ったことを受けて筆者のミルンが「実際にそういうものなのだ」と付け加えている。


さぁ、他のみんなも言いだしたよ、「ぼくたちのことは?」って。

And now, all the others are saying, ‘What about Us?’

(48) all the others

クリストファー・ロビンのぬいぐるみのうち、ここまでに登場したプーとピグレットを除いた「残り全員」


だから「まえがき」はこのくらいにして、お話にとりかかる方が良さそうだね。

So perhaps the best thing to do is to stop writing Introductions and get on with the book.

(49) perhaps

話者の確信度は高い順に probably → likely → possibly → perhaps / maybeとなる。よって perhapsは「ひょっとすると」くらいのニュアンス。

(50) get on with the book

‘get on with something’で「〜を続ける」。

英語原文はこちらから↓


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※本記事掲載の訳は、推敲の上、加筆修正を施す可能性があります。

©翻訳: Hirohito KANAZAWA

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