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【意外⁉️】文法学習こそ「効率的に外国語を使えるようになる」ための王道である。


新年を迎え、「今年こそは、英語などの外国語の力を身につけたい・もっと伸ばしたい!」と目標を立てている人も多いことでしょう。

その一方で、

  • 小難しい文法を勉強するのは好きじゃないから、効率的に話せるようになる方法はないか?

  • 文法ばかり気にしているから、スムーズに話せなくなる。話せるようになるためには、会話練習をたくさんすることこそが大事なはず!

…といったように考えて、基礎文法の学習を疎かにしたまま、海外旅行やビジネスシーンなどの特定のシチュエーションでの「使える表現・例文」のようなものをひたすら覚えていこうとして、結局はどこかのタイミングで壁にぶち当たって挫折してしまう語学学習者が毎年大量に発生します。

今回の記事では、University College Londonの大学院で Neil Smith Prizeを受賞するような研究活動ができるほどの英語力を身につけ、英語以外にも様々な言語の学習経験を持つガリレオが、まず基本的な文法をしっかり学ぶことこそが、本当の意味で使える語学力を身につけるためには、まさに「効率的」な方法なのだということを、少し独自の切り口から解説してみようと思います。

例)「ワルピリ語を話せるようになりたい!」
→ どこから始める?

そこで例として、日本言語学オリンピック (JOL) 2022面接で出題された、ワルピリ語の問題を見てみることにしましょう:

1. Kurdu ka wangkami.
「子供が話している」
2. Kurdungku ka maliki nyangu.
「子供が犬を見た」
3. Kirda ka wangkaja.
「父が話した」
4. Karnta kulaka parnkaja.
「女が走らなかった」
5. Kirdangku ka kurdu nyangu.
「父が子供を見た」

【出典】CC-BY: 国際言語学オリンピック日本委員会
available from: https://iolingjapan.org/sample-problems/#jol2022-int-2

【注】:本記事を読み進めていくと、こちらの日本言語学オリンピックのお試し問題のネタバレが含まれます。先にこの問題を解いてみたいという方は、以下のリンクをご利用ください。リンク先に公式の解答・解説も用意されています:


ガリレオ研究室の noteを読むような聡明な読者の皆さんといえども、ワルピリ語にめちゃくちゃ堪能という人はほぼいないでしょうし、このような言語があることを今日初めて知ったという人の方が多数派だろうという前提で話を進めていきましょう。

さて、仮に「少しでもワルピリ語を話せるようになりたい」と思っているとして、「子供が話している」をワルピリ語では ‘Kurdu ka wangkami.’と言うのだ…と知ったとしても、それ自体が学習の役に立つでしょうか?

もっと言えば、上の 1~5のようなワルピリ語の例文と日本語訳のペアのリストを数百・数千と増やしていって、片っ端から暗記しようと頑張ったり、繰り返し聞き流していけば、いずれはペラペラになれると思いますか?

文法=その言語の骨格を教えてくれる!

上にあげた例文 1~5を分析すると、ワルピリ語の語彙と文法について、以下のことが分かるようになります:

【語彙】
・名詞:kurdu「子供」, kirda「父」, karnta「女」, maliki「犬」
・動詞:wangka「話す」, parnka「走る」, nyangu「見た」

【文法】
・文構造
主語(S) + {肯定: ka / 否定: kulaka} + (目的語(O)) + 動詞(V)
・名詞のルール:
他動詞文のSの場合のみ -ngku がつく(例文 2, 5より)
→ 自動詞文のSおよびOの場合は何もつかない
・動詞のルール
自動詞「〜している」の場合は -mi, 「〜した(過去)」の場合は -jaがつく
→ 他動詞:例文には、過去形の「見た」しかないため不明

【出典】CC-BY: 国際言語学オリンピック日本委員会
available from: https://iolingjapan.org/sample-problems/#jol2022-int-2

実際の言語学オリンピックの面接では、上記の文法分析をベースにワルピリ語の例文 6, 7を日本語に訳す問題が出題されたようですが、文法知識があれば逆の方向でワルピリ語の作文も可能になります!ぜひ試してみてください:

【問題】6ʹと 7ʹをワルピリ語に訳してください。
6ʹ. 犬が走っている
7ʹ. 女が父を見なかった

「習ってから慣れよ。」
〜骨格が分かれば、あとは単語を入れ替えるだけ!〜

このように、上でまとめたワルピリ語の文構造:S + ka/kulata (+ O) + Vと名詞および動詞の文法ルールを活用すれば、たとえ今日初めて知ったかもしれない言語であっても、少なくとも名詞「子供・父・女・犬」と動詞「走る・話す・見た」を組み合わせた肯定/否定文であれば、他にも:

8. 女が話していない
→ Karnta kulaka wangkami.
9. 犬が父を見なかった
→ Malikingku kulata kirda nyangu.

【注】:例文 1~5から分析できる範囲外の不規則なルールがないと仮定した場合です。

などの文も作れるようになりますし、それ以上に大事なこととして、もしこの先、ワルピリ語の「大人・母・男・猫…」といった名詞を知っていけば、基本的には同じ文法規則を当てはめて文を作っていけることが予想できます。

また動詞にしても、「見ている」のように他動詞が過去形でない場合にどのような語形になるかもデータが得られて、他の様々な動詞もワルピリ語でそれぞれ何と言うのかを知っていけば、ただ「〇〇語で△△と言いたいときは××と言う」のように闇雲に覚えていこうとするよりも、圧倒的に効率よく学習したい言語の表現力が上がっていくだろうということが実感できるのではないでしょうか。

もちろん、ワルピリ語でも何語でも、より複雑なことを表現しようと思えば、他にも様々な文法項目を学んでいく必要がありますし、その学習の過程では、「例外」や「例外の例外」に出会うこともあります。

ですがそれこそ、「外国語なのだから、多少の間違いは気にせずに通じれば良い」のような、よくある論調で言うならば、丸暗記したフレーズ以外は単語をごちゃごちゃに並べただけの発話と、細かいミス(ワルピリ語の例で言えば -ngkuをつけ忘れるとか)があったとしても語順は正しく並んでいる発話を比べた際に、「通じる」可能性が高いのはどちらでしょうか?

骨格標本を見れば、それがどんな動物であるのか想像しやすいのに対し、骨が溶けて肉の塊になってしまったものを見て、元の動物を推定するのは極めて難しいことでしょう。

Natural History Museum(ロンドン自然史博物館)
シロナガスクジラの標本

もちろん、語学学習者のゴールは「骨格標本の収集」ではないので、アウトプットのためのバランスの取れた学習を意識することは大切です。

ただその際に、まずしっかりと、特に語順や否定文・疑問文の作り方、次いで修飾語句の付け加え方…といった基本的な文法に習熟し、学んだ文法知識を使いこなすための練習を重ねるという意識こそが、語学力向上のための王道であるとガリレオは考えています。

「今年こそは!」と様々な目標を立てる時期であるからこそ、この記事が文法学習のモチベーションとなり、より効果的で、一見遠回りに見えるかもしれないけれど実は効率的な学習へと進んでいくきっかけとなれば幸いです!

問題 6ʹ, 7ʹの答え

6ʹ. 犬が走っている
→ Maliki ka parnkami.
7ʹ. 女が父を見なかった
→ Karntangku kulaka kirda nyangu.

【出典】CC-BY: 国際言語学オリンピック日本委員会
available from: https://iolingjapan.org/sample-problems/#jol2022-int-2

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