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これがターンオーバー。 20節 アトレティコvsラージョ(H) 2024.1.31

ミッドウィークはスーペルコパで延期された20節のラージョ戦。前回対戦

7点取った試合。大差すぎてある意味ノーカンとしたいが、CB-SB間が空く特徴は今も変わらないので狙い所。ベベ(カーボベルデ代表)とパテ・シス(セネガル代表)はアフリカネイションズカップ参加中。
余談だがカーボベルデみたいなレア国籍の選手を獲得するときに"この選手はアフリカネイションズカップで長期離脱があるかもな"とか考えるんだろうか。考えないよな多分。


●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ヴィツェル / エルモソ / ヘイニウド
ジョレンテ / フェルメーレン / バリオス / サウル / リケルメ
コレア / メンフィス

これまで見た事がないほどのターンオーバー。エルモソを3CB中央で使い、中盤はフェルメーレンがデビュー。FWはグリーズマンが今季公式戦では3部のルーゴとの試合以外で初めてスタメンを外れた。コレアはアトレティコで400試合目の出場。おめでとう。
当日駆け込みで入団が決まったガブリエウ・パウリスタもベンチ入り。
冬の移籍市場をまとめた記事はこちら

・ラージョ
ディミトリエフスキ
ラティウ / アリダネ / ルジュン / エスピノ
キケ・ペレス / オスカル・バレンティン / イシ / チャバリア / アルバロ・ガルシア
カメージョ

右SBはバリウではなくラティウ。エスピノ、チャバリア、アルバロ・ガルシアと左サイドを担当する選手が多い構成。ウナイ・ロペスは出場停止。


"これもダービーだよね"ってどれくらいの音量で言ったらいいのかわからないのであんまり言わない感じで。さて。



●前半

ラージョの不思議配置に戸惑いながらの立ち上がりだったが、アトレティコの配置から。

中盤はバリオスが真ん中でフェルメーレンが右。ラージョは4-4-2をベースにしているが左SBエスピノがWB(ジョレンテ)に引き出されると前回対戦のように好き放題ポケットを使われる事になるので、左SHのチャバリアがジョレンテにマンツーマンでつく約束。
アトレティコ側もラージョが4バックなのか5-4-1or5-3-2なのかは複数パターン対応を考えていたようで、試合開始直後にシメオネが"4バックだよ"というサインを送っていた。たぶん。

この日のアトレティコの配置で注意して見ていたのは、フェルメーレンが前目なのか後ろ目なのかというところで、結論から言うとおそらく後ろ目(デ・パウルタスク)だと思われるが、別に決まっていないような雰囲気だった。左がサウルなのでどっちでも良いよという緩い設定だったのか、シンプルにあまり作り込めていなかったのか。サウルは前後をうろちょろする必要が出た。この日のサウルはずっとうろちょろしていた。

ただ、ラージョの後方ボール保持がオスカル・バレンティンのCB間サリーorエスピノが最終ラインに残る形で3枚を作り、アトレティコは右CBアリダネのところまでサウルが前進して対応するという仕組み上、それとなくサウルが前、フェルメーレンが後ろの区分けになっていた。成り行き。ちなみにサウルは8分にいきなりネガトラでアリダネを吹っ飛ばしたが、イエローをもらうとマドリーダービー欠場になります。

ラージョはチャバリアを含めた5枚が最終ラインに並び、2CHがその前。カメージョとアルバロ・ガルシアが最終ラインに圧力を掛ける事を優先し、残るイシは基本的にバリオスに張り付いた。2トップはヘイニウドを放置して、5-2-1-2みたいな。
これが試合前にどこまで設計されていたのか不明である。というのも右IHがデ・パウルだったら好き放題ドリブルで運ばれていたのは明らかだから。

新加入のフェルメーレンはまだ探り探りだからある程度フリーにしても大丈夫だろう。
それよりバリオスを見張って最終ラインに人をぶつけよう。
きっとエルモソが真ん中で、左のヘイニウドはある程度放置しても大丈夫だろう。

とはならんだろう。エスパーでもなければ。
という事でラージョはおれの知っている限りは普段と違う事をしているものの、なんだか慣れた感じでやっていた。アンカーを捕まえるより4-4ブロック撤退が優先のイメージだけどね、普段は。
アトレティコは後方からのビルドアップでバリオスがイシに捕まるのならばフェルメーレンが登場する、というのが理想的な配置である事はもちろんそうだが、とりあえずフェルメーレンは右IHっぽい位置に立っといてもらう事の方が大事なのではないでしょうか、くらいの気持ち。見守りの気持ち。

そしてアトレティコの守備。5-3-2で配置しつつ、相手は後方3枚になりたがるのでサウルがアリダネを見張る。
ラージョはエスピノとチャバリアにプラスしてアルバロ・ガルシアもいる配員で、左サイドに人数をかけて突破しようとしている雰囲気がある一方右サイドはラティウが独占しているのでリケルメは後ろを気にする必要はなく、ここに強気に出ていく。これ、エルモソが左HVでもこんなに強気に出ていくかな?というのは確認ポイント。ヘイニウドが出場しているメリットその1なのかもしれない。ちなみにこの運用でバリウよりラティウが優先された理由はわからん。ただのターンオーバーでしょうか。

イシは普段と違い中央、左ハーフスペースまで出張しており、やはりこっちサイドを解決する狙いかな?という環境を作る。ちなみにイシは自由に動き回る事で長所が出る選手だが、ライン間で速い縦パスをもらってどうこう、という選手ではない。
アルバロ・ガルシアの立ち位置は完全にFWで、ヴィツェルより内側からスタートして外へランニングしていく形が目立った。エルモソ&ヴィツェルの間に背後を狙うスピード選手がいれば当然最終ラインを押し下げる事ができるわけで、これもアトレティコの右HVがサヴィッチではないと見抜いていたような考え方なのだが、やっぱりフランシスコ監督は祈祷師なのかもしれない。

たまに右大外まで出張(というか帰宅)するイシにはヘイニウドが対応していたが、これもなんだか対応を確認されているような嫌な印象。ヘイニウドが大外の対応をするのは問題ないがWBが前を捕まえにいった背後の対応に釣り出されるのは想定していない。


アトレティコはコケとデ・パウル、さらにグリーズマンがいない事で誰がどこからどうやって配球するのか考えないといけないのにそもそもラージョの配置がよくわからないまま15分ほど過ごし、面白かったのはヘイニウドとサウルがお互いの立ち位置の譲り合いが初対面ですかぐらいぎこちなく、左から進まないとどうしようもないだろうと言いたくなる状況。そうなると最終ラインからジョレンテを狙ったロングボールが出始めるが、ロングボール合戦を守り切れるからラージョはこの地位にいるわけで。効果的になる気配はなかった。ここまでが25分前後

ラージョはキケ・ペレスがサウルの前、あるいは背後にポジションするようになってサウルがアリダネまで出て行きにくくなり始める。これでラージョは最終ラインのボール保持環境を確立。キケ・ペレスは良い選手。
ボールを持ったラージョは左サイドを進んでクロスを放り込む攻撃が出始めるが、配置上ゴール前に飛び込むのはイシだったりする。それでもCKを連発してくる攻撃はラージョっぽさが出ていた。

アトレティコはバリオスが3,4人を振り回す意味不明なボールコントロールからコレアに決定機が来るなど。28分にはフェルメーレンも左に寄ってくると良い事があると気づき、メンフィスからコレアの裏抜けを使ってゴールラインを越えるシュートを打ったが抜け出す所がオフサイドだった。惜しい。プレシーズンからその様子はあったがメンフィスはコレアのボールが欲しいところを良く理解している。

脈絡のない先制点は35分。リケルメのFKにファーサイドでヘイニウドが上手く隙間に入り込んで決めた。リケルメのファーに落とすボールは相変わらずの高精度で、ヘイニウドのゴールは皆が待っていた。おかえり。



●ピックアッププレー 〜失点シーン〜

アトレティコは42分に失点。20回ほど見返したが、予想と想像が関わる解説をする。
「フェルメーレンは守備ブロックにちゃんと入れるからいきなりスタメンで使えたんだな、ところで5バックは経験があるのかな?」と思って見ていたら突然穴を空けて裏を取られた形だったが、ラージョは左サイドに人を集めて意識的にこの状況を作ったし、それは別にフェルメーレンの背中を狙い撃ちしよう、なんて話ではないのでたまたま運が悪かった印象はある。

ラージョはバレンティンが最終ラインまで左落ち。左サイドの奥を取りたいならこれが当初から準備されていた形のはず。敵陣に押し込んだらバレンティンが配球サイド(というか左サイド)に落ちてSBを押し出すよっていう。この場面でもエスピノがタッチラインを踏み、前はチャバリアが内側に入ってイシがボールを触りに降りていく。アルバロ・ガルシアはトップポジション。例に倣ってヴィツェル周辺で内と外をチラつかせている良いポジショニング。

フェルメーレンは裏へのアクションを入れたチャバリアに吸われて落ちていく。

この場面、フェルメーレンは正しくはここにいるべき。基準点は最終ラインでもマーク対象でもなくバリオス。バリオスの横。
相手を基準にするならばバレンティンの正面。ゴール方向への縦パスに引っかかる位置。大外(エスピノ)に目が届く位置。チャバリアが自分の関与エリアにいるからといって吸われなくて良かった。これは、これまでの経験値の都合であり、5-3-2のIHどれだけやった事ありますか的な話なので良い悪いで語られる箇所ではない。これまでいたチームが人を基準に守って責任マークを追いかける約束だったのかもしれないし、それはおれは知らない。ただ、今のアトレティコのIHにあそこで必要なのは大外のランニングではなく3CBの前のゾーンにいる事であり、警戒するのはボールホルダーがどこに向かってボールを離すか。ネクストアクションはSBエスピノへの前進か、チャバリアへ出たハイボールに反応してマイナスのカバーポジションまで落ちる事。トランジションに備える事。トランジションの役割は前進?1stレシーバー?考えるべきはその辺り。

ボールがエスピノに入るとフェルメーレンが届かないのでジョレンテが出ていく事に。真ん中で浮いたイシを使ってチャバリアが裏抜け。マイナスで待っていたアルバロ・ガルシアがフリーになった。バリオスはイシに吸われていてマイナスの角度がぽっかりどフリーに。

フェルメーレンは最終ラインに吸われずにバリオスの横を保つべきだったが、チャバリアに吸われた。この辺は本人のアラートの問題かもしれないし、前いたチームではそういう対応だったのかもしれない。まあ正直相手が後方3枚でどこにボールがあったらどこに立てなんてところまで意思共有が進んでいるはずもなく、こういう粗を出すために試合に出したとも言える。ハーフタイムで変わったが、1-1で折り返したなら勝つためには既定路線の交代で、別に懲罰ではない。
そしてフェルメーレンの立ち位置は単純にミス(というかエラー)だったが、ジョレンテとヴィツェルから声がかかっても良かったのではないかと。それはコミュニケーションエラーです。君達もフェルメーレンがどこにいるのが正解かわからなかったなんて事はないですよね?

ジョレンテはエスピノの対応に自分が出ていく必要も特になかったし、出ていったのはきっと背後の管理はフェルメーレンがやるだろうという思い込みによるもので、そこに確たるコミュニケーションはない。
個人的にジョレンテのコミュニケーションを擁護するとしたら、攻撃でなかなかフェルメーレンから良いボールが出てこなくても要求せずに大人しくしていた印象だったので、「守備でもあんまり言わないようにしよう」みたいな優しさがあったのかもしれない。
ヴィツェルのカバー距離も同様。そしてゴール前の人数は足りていたのでエルモソはヴィツェルをボール対応に飛ばすべきだった。この辺はエルモソが不慣れなポジションをやっているから生まれたエラーでもある。
フェルメーレンを前に押し出すorチャバリアの管理を最後までやらせるのは周りの選手の責任であるべき(フェルメーレンは"5バックだしポケットまで追いかける必要があるのかどうか"も把握していなかったと思われる)であり、トータルで全体的な不慣れ感とコミュニケーションエラーが原因だったと結論付ける。

・とはいえ
とはいえここはアトレティコで、CLクラブである。本音を言えばフェルメーレンは立ち位置を間違えたしジョレンテは判断ミスだしヴィツェルはチャバリアへのボール対応を甘く見たしエルモソはCCBのくせにゴール前の人数バランスすら把握できていなかった。
確かにコミュニケーションエラーではあるが"デ・パウルなら出来るよ"で済む話でもある。そしてフェルメーレン自身は裏を取られて失点を招いた。とか言っちゃってもいいんじゃないでしょうか。優しいverと厳しいverのどっちの結論を選ぶかはお任せします。まさかのマルチエンディング。



●前半終了

1-1で折り返し。ラージョの配置と失点シーンを中心に振り返ったが、もっとマクロな話をするとアトレティコは派手なターンオーバーを使っている試合で主役がおらず、どうやって侵入したら良いかわからない状況で都合良くセットプレーで先制した試合。しかし失点はベストメンバーでない事に起因して発生したものであり簡単にはいかないものである。ただ、一つ言いたいのはラージョの得点シーンは狙った形を出されたという事。この意味はちゃんと押さえておくべき。

マドリーダービーのためにターンオーバーしておいてそのホームゲームで負けていては意味がなくなってしまうので後半は主力がワラワラと出てくる事が確定。繰り返すが簡単にはいかない。しかしこれから出てくるメンツはハーフタイムに今季限りの退団を発表したオルテガおじちゃんとイチャイチャして遊んでいた。頼もしいですね。



●後半

アトレティコはフェルメーレンが45分で退く。モリーナを入れてジョレンテがIHに動いた。

後半

ジョレンテが高い位置に出ていく事で、ヴィツェルがバリオスの隣まで出てくる形に。普段左でエルモソがやっているような。

エルモソは真ん中でサイドチェンジを蹴る担当。ヘイニウドはビルドアップの仕事から解放されていく。これ、サヴィッチが右だとあまり機能しない形に見えるので新鮮。
周囲のサポートを得てプレッシャーから解放されたバリオスはドリブルで何度も持ち運び、試合を動かし始めた。ラージョはラインを高く保ちたいが背後を狙ったボールが何度も飛んできて試合展開はオープンになっていく。ただ、アトレティコからしてもデ・パウルとグリーズマンがいない事で背後を狙う事の優先度が高まりすぎている淡白感はあった。

58分にアトレティコは3枚替え。
コレア、ジョレンテ、リケルメを下げ、
グリーズマン、デ・パウル、リーノを入れる。

これで得点への方向性を強めつつ、オープンになってヴィツェル&エルモソで構成している最終ラインが無事で済むとも思えず、デ・パウル&バリオスに冷静な判断を要求するという生唾を飲んでしまうようなびっくり環境が作られた。これぞターンオーバー。

オープンな展開に

どこかの対人でやられる予感はあまりないが、変な失い方をした時に後方カバーがヘイニウドしか期待できないというスリルのあるオープンバトルとなった。両サイドにもスペースを与えており、シメオネも胃がキリキリしつつ、でも勝つしかないという難しいミッションに。

ラージョは右SBバリウと同時に、フェネルバフチェからレンタルで加入したミゲル・クレスポが早速出てくる。中盤の選手だが強度と荒っぽさと推進力があり、なかなかラージョらしい選手。この試合展開にジャストフィットする選手だった。
アトレティコは69分、この状況にコケを放り込む。「どうにかせい」と。サウルは5枚目のカードをもらう事なく交代。コケも4枚持っているが。

度々カウンターをもらいながら基本的にはアトレティコがボールを保持。81分にはまた中央をバリオスが切り裂いてメンフィスにプレゼントパスを届けたが、かなり微妙な判定でオフサイドに。メンフィスの肩のライン、そこ?っていう。

結末は90分。コケから右大外のグリーズマンに配球し、対応したチャバリアが倒れていたが笛は鳴らず、メンフィスのゴールに繋げた。今日も見事なフィニッシュで試合を決めたのはメンフィス。



●試合結果

結末は突然訪れた。頭同士の接触はあったがラージョがセルフジャッジしてしまったのは残念。

アトレティコは主力のプレータイムをコントロールしながら、3ポイント取らないと実質シーズン終了という難しいミッションでヒメネスとモラタが欠場。グリーズマン、コケ、デ・パウルを30分未満の出場に制限する事ができた。
メンフィスがモラタの代わりを務めて公式戦3試合連発。バリオスは中央で90分間攻撃をリードした。おまけにアルトゥール・フェルメーレンをホームでデビューさせた。正直ここしかなかった。

出場停止リーチのコケ、サウルはカードをもらわずに勝つというミッションもあり、そこも完遂。シメオネ以外誰もカードを貰わず勝った。

ラージョは得点に苦しんでいるとは思えないほどに狙い通りに得点を奪ったがこれで勝ち点を取れないのはなかなかしんどかった。ただ新加入のクレスポも当たりっぽいのでどうにか安定感が欲しいところ。

アトレティコは勝たなければならない試合だったが、割と普通に戦っていた。焦りはない感じで。
最大の関心事はやはりアルトゥール・フェルメーレンのデビューで、まだ未確認の箇所が多いがここから徐々に、という感じでしょう。ポジションが被りそうなデ・パウルがあまりにも好調なので出場機会は少ないと思われる。CL前後のターンオーバーで少しずつ特徴を探していきたい。

さて、週末はマドリーダービー。そして国王杯準決勝へと続いていく。テンション高めていきましょう。引き続きよろしくです。私は負けません。もちろんアトレティコも。


1/31
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 ラージョ
得点者
【アトレティコ】'35 ヘイニウド '90 メンフィス
【ラージョ】'42 アルバロ・ガルシア



●ピックアップ選手

バリオス
中央でクオリティを発揮し、プレス回避とドリブル前進を連発。試合を動かした。

ヘイニウド
対人とカウンター対応。前半はチャンスを作れない時間帯にセットプレーから先制点。皆が望むヘイニウドが戻ってきた。

メンフィス
フル出場し何度もゴール前に顔を出した。チームが望む結果を追い求めて最後は試合を決める得点。ストライカー。

フェルメーレン
アトレティコデビュー。中盤右で周囲との連携を確認しながら過保護されながら45分間プレーした。失点に絡んだが勉強。

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