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首を振れ 3節 アトレティコvsラージョ(A) 2023.8.28

アウェーのバジェカスでラージョ戦。前回対戦

と、プレビュー

ラージョは開幕2連勝。主力の放出が多く監督も変わったシーズンだがとりあえずはポイントは取れている。上積みはあまり感じないがどうなることやら。

アトレティコは前節ベティスと0-0の引き分け。前半の過ごし方が悪く改善ポイントとなった。人を変えるだけで解決しそうな問題なので早速この試合で見せてほしい。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / デ・パウル / バリオス / サウル / カラスコ
グリーズマン / メンフィス

3CBはベティス戦と同じ。
右WBは怪我から復帰のモリーナが早速スタメン。
アンカーはバリオスになった。怪我をしたルマルの代わりにはサウルが今季初スタメンとなる。
FWはメンフィスで。ベティス戦のリベンジなるか

・ラージョ
ディミトリエフスキ
バリウ / アリダネ / ルジュン / エスピノ
バレンティン / ウナイ・ロペス / イシ / アルバロ・ガルシア / トレホ
ラウル・デ・トーマス

いつも通りのスタメンに。FWはラウル・デ・トーマスとなった。



●前半

結論から言うと序盤からラージョはけっこう前プレを仕掛けて来た。思っていた以上に圧力をかけてきたが、アトレティコは最初のプレーでモリーナがサヴィッチとデ・パウルを使って回避成功。2つ目のプレーではバリオスがボールを持って右サイドまで横断。ロングボールを受けたメンフィスにマークが寄せきれず、最後はデ・パウル→グリーズマンで簡単に先制。アリダネはオフサイドだと思っていたのかメンフィスにボールが入ったところで迷いがあったように見えたが、アトレティコはカラスコとサウルが第一陣としてメンフィスを追い抜き、さらにグリーズマンとデ・パウルが第二陣で入ってきてモリーナもこの攻撃に参加できている。ラージョは試合の入り方が悪かったと割り切るしかない失点に。
5分にもアトレティコはデ・パウルの落としで前を向いたバリオスのパスから簡単にプレスを外して速攻。サウルの持ち運びからメンフィスの決定機に繋げている。

この開始5分間の3つのプレーだけで割と前プレは無理そうだなという感じのあったラージョだが、継続した。これは事前に設定されたフランシスコの意思なのか、先制されたから仕方なくなのか。ちなみに7:40くらいに一回中央へのパスを引っ掛けてセットプレーを得るに至ってはいる。失点していなければテンションが上がっていたかもしれない。

15分にアトレティコの2点目。

よくある形のサウルのFW化。CBのアリダネがメンフィスの列落ちを気にしており、SBバリウがカラスコを捕まえている隙間を特攻。折り返しにメンフィスが合わせた。アトレティコの基本形の一つがハマった得点ではあるが、普段から擦り続けている形で簡単に背後を取られたラージョは批判されていいだろう。この試合の立ち上がりにはどことなくスカウティングの甘さを感じてしまう。前プレにいけるという判断もおれの考えるパワーバランスとは異なるので。ちなみにこのプレーはボールを奪ったのもサウルだった。良い働き。
36分には中盤の奪い合いを制してデ・パウル→モリーナで一発裏抜け。バリオスのボール奪取が起点になったが、これもさすがに淡白である。モリーナは自ら復帰を祝う得点で、前半のうちに試合は決まった。


●前半終了

35分にメンフィスにアクシデントがあってモラタに交代しているが、その他問題点は何もなし。
ラージョは前プレを設定したがハマるかハマらないかを確認するよりも前に失点してゲームプランが崩れた。さらに立て直す手段を考える前に2点目を取られて詰んでしまった様子。

アトレティコはラージョの選択肢を確認している作業中、プレスに来たので外したら点になりましたという様子。腕力差がある中で序盤に得点をあげられたのは良かった点である一方、事前準備が良かったことは否定しないがこの45分は相手に原因がある感じ。


●後半

ラージョは2枚交代。
ウナイ・ロペス→パテ・シス
トレホ→エンテカ

ロングボール収めマンとセカンドボール拾いマンを入れるわかりやすい交代。まあ最初からいた方が良かったね2人とも。

そのエンテカのポストプレーやらサイドに流れての粘りでそれなりに攻撃の形のようなものが出始めるラージョ。フランシスコも拍手。シスもミドルレンジの配球が良く、ボールの循環を助けた。右の深い位置までランニングを繰り返したのはそういう狙いなのか彼の好みなのか。55分にはようやくイシのカットインミドルが飛び出し、時間がかかったが普段の調子を取り戻していくラージョであった。

60分、絶望の出来だったR.D.Tに替わってアトレティコから完全移籍となったカメージョを投入。来週から起用法に変化があるでしょう。カメージョは新監督の下ポジションを取るチャンスが来る。逃すなよ。
68分にはデフルートスを入れる。本来ならプラン通りの交代なのだろうが時すでに遅しである。アトレティコはこの時間にジョレンテとリーノを入れる。デ・パウルはお役御免。

試合は落ち着いてしまったが73分、教科書に載せたいタイミングでライン間ハーフスペースに立ったサウルのワンタッチフリックでモラタがGKと1vs1。大量リード時はパラメータが大幅に上がると定評のあるモラタが綺麗にニアに沈める。ピックアップします。
この得点でグリーズマンを休ませることに。バリオスも業務終了早上がり。彼は後述する。

あとはコレアがディミトリエフスキのミスキックを引っ掛けて5点目、その後ロングカウンター2つでモラタとジョレンテが決めて試合終了。


●試合結果

3-0から先は何点入ろうとチームの差を表すものではないという持論があるのでアレだが、まあ点は取れるに越したことはない。それよりも開幕時期なので3試合を1失点で終えたことにフォーカスしても良いと思う。ということでこの試合の非保持形をまとめる。


・守備対応解説

アトレティコの守備は普段通りの5-3-2で、中央を通過させず相手CBに左右を選択させるいつものスタイル。ラージョはCHを経由して中央から前進することを制限され、出口は両SBになる。こちらも普段通り、アトレティコの対応には左右で差があるので解説していく。たぶんこれが今季の基本形かな。


基本

まずは左側。
ラージョの左側からの配球にはデ・パウルがかなり強めにSBエスピノに圧力をかけていたので、アトレティコはやはりここ(エスピノの足下)を狙い所に設定していた可能性はある。

デ・パウルは"自分はこの選手に強めにプレスをかけます"というのを身体で表現するのが上手い。前傾姿勢と飛び出しの一歩目で"プレスがかかってる感"を敵味方に知らせるのが上手。繰り返しますがアンカーの選手ではありません。
真横のCH(バレンティン)に対してグリーズマンが間に合うのかサウルの助けを借りるのか、この2人がアイコンタクトしている様子が見えてこれも慣れたもの。危機感は一切なかった。デ・パウルの圧力を受け、近い位置へのパスルートも見つからないエスピノの選択肢は前方のアルバロ・ガルシアに後ろ向きで引き取ってもらうか、前に蹴るかの2択になった。これはこれで苦しいながらもラージョとしては計算のうちである。ラージョのパターンは蹴っ飛ばしてハイプレスor撤退。この試合ではハイプレスを選んだ。

一方の右。こちらはSBのバリウまでWBのカラスコが飛び出してくる形を徹底。

この時はデ・パウルがバリオスの横まで降りて2枚並列。バリオスは狙えるなら前に出てきてもいいよという設定。真横のCH(ウナイ・ロペス)のマークはサウルが受け持ち、ここにボールを預ける選択肢は基本的にない。イシのマークはエルモソが対応する形となる。
ここで示唆されるのはエルモソを介護するという考え方がチーム全体で希薄になっていること。エルモソはイシとの1vs1を担当し、降りていくイシにもそのままついて行った。これが足の速い選手であったり順足のWGだったりすると考え方は変わる可能性があるので早くデフルートスに出てきてもらって検証したいところだった。今後も確認できたタイミングでまとめていきます。

左右どちらを選んでもSBの選択肢を前のSHに後ろ向きでボールを受けてもらうor蹴っ飛ばすの2択に狭め、トップ下のトレホはバリオスに見張られた状態で何もボールに関与できなかった。バリオスが真ん中からいなくなっても問題ない人数バランスになっており、トレホの可動域がアトレティコの守備に与える影響がほとんどなかったのも特徴。
この形が成り立つ要因にはサヴィッチ&ヴィツェルで相手のワントップを封鎖することが必須条件となる。"バリオスが真ん中にいないとトップに縦パスが"というのも2人が前進してちゃんと潰していた。
そもそもこの試合に関して言えばヴィツェル一人でR.D.Tを完全封鎖していた。別にヴィツェルをあまり下げる意図はないが、それでいいのかR.D.T。前節同様の酷いパフォーマンスでした。ネームバリューに期待してこの試合のスタメンに持ってきたのかもしれないがシンプルに外れでしょう。

唯一やりたくない対応になったのは前半18:50の場面

記憶力の良い方なら2,3年前にベティス戦でこんな感じで確かグアルダードからの配球でエメルソンに裏を取られて失点に繋がった場面を覚えているかもしれない。エルモソとヴィツェルでサイドの対応をさせられるのは好ましくないので避けたい形。

アトレティコは完全撤退させられた時の強度はこの3試合で確認できていないのでヴィツェルの弱点も特に晒すことはなく。来週セビージャにゴリゴリに押し込まれた時とかに色々確認ポイントが出てくるかもしれない。お楽しみに。

この日のアトレティコは問題なくボールを回収、さてラージョがプレスに来るかどうか、というところで全速力でプレスに来てくれたのであとは外すだけだった。ラージョは目論見が外れた形になる。フランシスコはベティス戦だけ見て作戦を立てたんだろうかと言いたくなるお粗末さだったが、ホーム開幕戦なので強気にいこう、いってみて今季の設定を決めよう、みたいな狙いはあったかもしれない。2分で失点して"じゃあやめよう"とはいかないものなんだろうか。いかないよなそう簡単には。アテが外れたけどもう少し、からの2点目で色々失った。ただし、2点目の対応も甘かった。ボールホルダーがあれだけフリーでは。あのゴールで流れが決まってしまったね。

ともあれ、アトレティコは快勝。前節ベティス戦からの変更と改善が見たかったが個人的希望通りにバリオスのスタメン起用。

・バリオスについて

アンカーポジションで76分プレー。まず、チームの非保持バランスを中央で整える役割をちゃんとやれたのが良かった。プレシーズンマッチの通りのプレーができた。主なマーク対象のトレホが足下にボールを止める選手なので後ろからガツンといけばある程度任務完了だったのは入門編としては助かった。今思えばだが、真ん中からいなくなって列落ちしていくイスコの相手をしなければならないベティス戦でいきなりスタメンは難しかった気がしてきた。ブーブー言ってすまん
非保持ではHV(サヴィッチ&エルモソ)の背後に出てくるボールを追いかけて身体をぶつけた。球際強調月間なのでこの辺は本人も意識的にやっている。

彼の能力を考えればプレス回避の中心になれるのははっきり言って当然のことで、驚きも新発見もない。知ってた。出来ないなら試合に出られないだけ。
ただし、ビルドアップ局面ならまだいいがラージョがスピードを持って再奪回に来ると背中の相手を認識できなくなりコントロールミスを繰り返した。ついに勉強の時間です。首を振れ。ピッチコンディションを言い訳にしていい選手でもないしポジションでもないので頑張ってください。レイオフを受けた時限定で速い縦パスが蹴れていたのが最大の特徴で、ようは視野が確保できていればダイレクトで正確なボールを出せていた。

・サウルについて

サウルのスタメン起用はルマルの怪我が原因ではあるが、バリオスにとっては心強い存在だった。非保持のバランス調整を勝手にやってくれる上にあのへんのエリアのネガトラ対応を全て引き受けてくれる。いるだけで左半分気にしなくていいくらいの存在感がある。
プレス回避でも正確なダイレクトプレーで周囲を助けてルマルとはまた違う魅力があった。フリックが上手いんだよな。当然敵陣PA内のプレーは得意分野。相手ブロックの隙間をすり抜ける得意のランニングで得点を演出し、後半には前を向くグリーズマンに合わせてハーフスペースでフリーになりモラタの得点をアシスト。フル出場は信頼の証。

引き続きセビージャ戦へ向かう。代表ウィーク前最後の試合となる。その前にCLドロー。いよいよエンジンがかかってくる。


8/28
カンポ・デ・フトボル・デ・バジェカス
ラージョ 0-7 アトレティコ
【アトレティコ】'2 グリーズマン '16 メンフィス '36 モリーナ '73 '84 モラタ '79 コレア '86 ジョレンテ


●ピックアッププレー

今季初の。73分、アトレティコの4点目をピックアップする。

スローインを受けようとしたエンテカにヴィツェルが背中から圧力をかけてボールを奪い、後ろに戻してジョレンテがセンターサークルで前向き。フリーで縦パスを入れられる。グリーズマンは前を向くだろう。サウルはハーフスペースへ移動し、突っ立って待つ。

ではライン間ハーフスペースでボールを受けるメリットとは何でしたっけ、という現代サッカー入門編のおさらい。
横幅を擬似的に5分割されたピッチを4枚で守っている相手に対し、SBとCBのどちらがマークすべきかを問うことでしたね。

当たり前のように前を向くグリーズマン。サウルはもう突っ立って待っている。仕方なくボールに出てくるアリダネ。ワンタッチフリックで勝負あり。正しいポジションが取れているサウルのプレーは全く難しくない。正しい判断で事前に正しいポジションを取ったサウルの勝ち。100点満点です。


●ピックアップ選手

バリオス
アンカーでスタメン。配球の中心になって特に序盤戦のペースを決めた。細かいコントロールミスやパスミスも多く、飛び込むべきか留まるべきかの判断も甘かったが勉強。20分のメンフィスのレイオフのミスの時とか。やはり使ってこそなので引き続きアンカー起用に期待したい。

サウル
今季初スタメンで2つのアシスト。どちらも普段から繰り返している得意なプレーで生まれており、中央の守備強度の担保も文句無しでフル出場した。

モリーナ
怪我からの復帰初戦だが普段通りのパフォーマンス。アルバロ・ガルシアを当然のように封殺しながら自分は相手SBの背後を取ってゴールを決めている。無理せず徐々に。

モラタ
3-0以降の彼のゴールはノーカウント

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