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普段着の質を問う試合に【プレビュー】3節 アトレティコvsラージョ(A)

3節はアウェーのラージョ・バジェカーノ戦。同じマドリードを本拠地とする地元対決ダービーマッチ。ラージョはこれがホーム開幕戦となる。




●先季の対戦

10節 △1-1

28節 ○2-1

案外点が入らないカードである。1,2点の決着が多い。

今季のラージョは開幕2連勝。中盤の要だったサンティ・コメサニャ、左SBでベスト11級の活躍をしていたフラン・ガルシア、DFリーダーのアレハンドロ・カテナが抜け、アトレティコからレンタルしていたFWセルヒオ・カメージョもいなくなった不安なシーズン。結局カメージョは完全移籍で帰ってきました。頑張ってね。最終ラインからはさらにサヴェリッチとマリオ・エルナンデスも抜けて一気に入替が進んだ。

新加入はCBにアリダネ・エルナンデス(←オサスナ)と左SBにアルフォンソ・エスピノ(←カディス)で穴埋めし、中盤はキケ・ペレス(←バジャドリード)を獲得するなど精力的に動いた。先季出番がなくレンタルに出ていたエンテカとべべの筋肉コンビもとりあえずスカッドに加え、レバンテの鉄砲玉ホルヘ・デフルートスも獲得している。2節で早速鉄砲してた。レバンテからはGKの控えにダニ・カルデナスも連れてきている。

何よりチームをここまで完成させたアンドニ・イラオラ監督の退任が大きく、代わりに就任したフランシスコにとっては大きなチャレンジとなる。


●開幕2試合振り返り

vsアルメリア(A) ○2-0
vsグラナダ(A) ○2-0

ともにアウェーで2-0のクリーンシート勝ち。先季までと同様、ボールを持てずペースを握れない展開でも中盤のデュエルでファールを含め相手の攻撃をぶつ切りにし、ペースをゴチャつかせていく。先季はカテナが跳ね返すことを基準としていたがアリダネ、ルジュンのCBコンビがどこまで頑張れるかはポイントとなる。
攻撃では2試合ともスタメン起用されたエンテカの出来が良かった。想定以上にロングボールを収め、さらにワンタッチのポストプレーも巧みでチームの前進を促した。こんな選手だったっけ。レンタル先で教わったのかな?でもエルチェだしそれはないか(失礼)

アルメリア戦の得点はPK2発。グラナダ戦は後半30分以降まで糸口を掴めなかったが、相手の対応が緩くなったところを突いて2点を奪っている。
ラージョは攻撃の可能性が見出せない時間帯に上記の中盤のデュエルを含めて試合を殺していき、じっと耐えることができる。この試合巧者ぶりは今季も変わっていない様子が見て取れた。

選手交代は中盤にパテ・シスを投入するクローズパターンが定番。また、デフルートスを右サイドに入れてイシとは違う縦の特徴を出すことも出来る。デフルートスとアルバロが両サイドを突っ走ってくる攻撃はどこのチームも嫌だろう。
FWは途中からアルメリア戦はファルカオを入れ、グラナダ戦はラウル・デ・トーマス(以下R.D.T)を入れたが、R.D.Tは今季も身体が重そうに見えた。メンタル的にもあまり試合に入れていなかった印象。今後はカメージョも選択肢に入ってくる。先季は普通に1stチョイスだったのでいきなりスタメンもあるかも。


●予想スタメンと想定

予想スタメン

ということで予想スタメン。
まずアトレティコだが、2節のレビューの通りアンカーはバリオスと予想する。というか期待する。
モリーナ復帰という話もあるのでいきなり右WBでスタメンもあるかも。その場合もIHはデ・パウル。最終ラインはアスピリクエタを外す理由が見当たらず、そろそろソユンジュが出てくるかなと予想してこの3人。トップはモラタをスタートとした。

ラージョはここ2試合と同じスタメンを予想。パテ・シスを頭から使う可能性もあるがその際はウナイ・ロペスと入替orウナイ・ロペスがトップ下でトレホが外れるパターン。イラオラなら色々変えてきそうだがフランシスコはわからんな。


●ラージョの守備

アトレティコの攻撃、保持局面から。

ポイント:アトレティコのHVまでプレスが来るかどうか

ラージョは"ガンガンプレスに来る"という印象があるが、どちらかというと"蹴っ飛ばした後、ボールロストした後の再奪回に積極的"という感じだと思う。ブロックを作る時は低い位置にブロックを置く。トップ下のトレホもFWと並列の4-4-2というよりは2CHと距離感を近づけて中央を封鎖する、というイメージがある。4-2-3-1。アトレティコの3CBの配球を止めるよりはアンカーを捕まえることが優先されると思われる。トレホはアンカー番。イシは割と前まで出てくるのでエルモソまで来るかも。このバランスは押し引きのポイントなので確認していきたい。

中央へのパスを狙っている。しかしアトレティコはサイドチェンジを繰り返したい。

そして、サイドの守備はSBとSHが連携して突破は許さない。ブロックを作ったラージョが背後を使われるイメージはあまりなく、気合で守っていく。そして狙い所は中央付近、2CHが出足と球際の強度を発揮してガツンといく。ここでボールを奪い、一気に両サイドが全力で疾走してカウンターでゴールまで。という形を狙う。アトレティコはリスクを冒したくはないが、ラージョのコンパクトな守備陣形を動かすために中央を使ったサイドチェンジを繰り出す状況は作りたいのでデュエルはポイントとなる。デ・パウルとバリオスの立ち位置が重要。モラタも左右に動いてほしい。その点はメンフィスより優れているので。
ラージョは中央以外にボール奪取位置の指定は特になく、サイドを進まれたなら進まれたでハーフスペースへ侵入されるだけことを防ぎながら、クロスだったらCBコンビで跳ね返す(セカンドボールはCHの気合)、あるいは1vs1に強いビッグセーブメーカーのGKディミトリエフスキのセーブに期待する。

ボールを奪っても、良い形の速攻が出せなそうだったらシンプルに前線へ蹴っ飛ばすことも厭わない。今季エンテカが良いのはここでボールを収められること。いい仕事してる。この、相手に深くまで攻め込まれるけどPA内の脅威はないという守り方をし、ボールを奪って蹴っ飛ばし続けるというフェーズがループすると、どんどん試合が死んでいく。ラージョはこの作業をチャンスが来るまでずーーっと繰り返せるチーム。アトレティコ戦も、この展開になるケースは十分に想定される。"おもんないな"と思ったらそれはラージョのペースかもしれない。こういう展開を避けるためには前半早めの先制点が取れるといいんだけどね。

試合が落ち着いてしまうと、アトレティコがボールを前線に送り込むも奪われ、再奪回にいくと迷わず蹴っ飛ばしてくるので楽々回収、の繰り返しの展開になり得る。アトレティコの場合はこうなった時にはIHのポケット特攻で無理矢理チャンスを作り出してしまう理不尽さがある。この試合はジョレンテ&デ・パウルのコンビに期待したい。マイナスの折り返しをルマルが思いっきり外すシーンが頭に浮かんでしまった。


●ラージョの攻撃

アトレティコの守備。

強く寄せてもリターンはあまりないが、さっさと蹴らせたい気持ちもある

さっき書いた通り、ラージョの最終ラインは無理なら普通に蹴ってくる。ただし、オスカル・バレンティンが広範囲に動き回ってボールを引き出し、SH&トレホと協力して地上戦で侵入してくるパターンも持っている。アトレティコが前プレにいくこと自体は反対しないが、一応CHを空けると危ないという感覚は持っておきたい。DFに蹴らせないために寄せすぎて目の前でバレンティンがフリーでした、みたいなのは避けたいところ。アトレティコは普段通り5-3-2を設定して大外を取り所に設定。まずは普通に、普段着で、いつも通りに。

相手SBから持ち出されるいつもの形。HVのインターセプトをポイントにしたい。

HVがどこまで出ていくのかの設定を共有しておきたい。あくまでも強気に。

ところで、ラージョのカウンターが鋭い、特に左のアルバロ・ガルシアに裏を取られたら万事休すである、という認識は対戦する全チームが既に持っているところ。なのでボールロスト時に即時撤退する対戦相手も増えている。よく考えたらこれもラージョの試合が死んでいく原因かもしれない。
この問題に直面したラージョは先季、引いた相手を崩す手順を考える必要があり、そこに着手した。ちなみに20-21シーズン、セグンダからの昇格プレーオフでは相手がドン引きしてきたのでこんなサッカーをずっとやってました。余談だがおれの中のラージョはそのイメージだったので、昇格後メンバーがほとんど変わらないのにカウンター集団になって驚いたのであった。

崩しの局面の各選手の矢印

4-2-3-1で綺麗に配置する。両SHは内側に寄ってくることが多いが、大外でこそ輝くアルバロ・ガルシアは外に張り付き、後方の左SB(先季まではフラン・ガルシア)が内外を選んで侵入する形を使う。その場合はトップ下のトレホが左寄りにポジションし、ハーフスペースに居座っていた。トップのカメージョは右寄りを選ぶことが多くなる。
逆に右サイドは、イシが内側へ侵入する動きとバリウが大外を駆け上がる動きを連動させてチャンスを作る。ハーフスペースに空白を作ってそこにイシが飛び込んでくる。このコンビは撤退守備を壊す相性が非常に良い。というか先季"ラージョはどうやって引いた相手を崩したか"と言われれば"この形でイシがけっこうミドルシュート決めました"という回答になる。彼は21-22シーズン2点、22-23シーズン9点(そのうちPK1点)なのでまあ6点分くらい引いた相手の破壊の中で決めたんじゃないか。ざっくりだが。


●トランジション局面

ということで、再奪回の局面。
主に右はバリウ、イシ、FWの3人、左はエスピノ、アルバロ・ガルシア、トレホの3人に、近い方のCHがいることが多く、ボールロスト時4人くらいで再奪回にいく。強度のあるプレスを軸とするチームで、奪い返してそのままゴールに進む形を得意とする。アトレティコは普段通りのプレス回避を見せてほしいし、アトレティコ相手に再奪回は無謀だぞというカウンターで仕留めてほしい。トランジションで後手に回ってラージョに負けました、ではお話になりませんので。早めにアウェーでラージョと試合ができるのはいい機会だと思っている。特別なことなくプレスを外して得点に繋げてください。


●課題点

今季の課題点。まずはスタメン、しかも主役級の3人カテナ、フラン・ガルシア、コメサニャがいなくなったことによるバランスの変化を乗りこなす必要がある。
おおまかにまとめると

カテナ→PA内でクロスを跳ね返すという守備設定・CKのターゲット
フラン・ガルシア→大外の対人守備・前のアルバロを追い越す、協力して崩すという部分・内側での仕事、PA内侵入
コメサニャ→ビルドアップ貢献・動き回るバレンティンに対して中央に留まり、ドリブルで前進する部分

を担う主力選手であり、替えの効かない存在だった。全員。
アリダネにカテナの代わりがどれくらい務まるかは未知数であり、少なくともカテナより空中戦に強いということはない。
また、フラン・ガルシアがいなくなることはシンプルにアルバロの攻撃力低下に繋がる可能性もあり、このチームの生命線に影響を与える事態になりかねない。まあシーズンベスト11の選手が抜けるんだから当然。代役となるエスピノは対人守備やネガトラダッシュなどは問題ない(というかそれが評価されている選手)だが、攻撃貢献はフランとは比べるまでもなく圧倒的に低下する。ここまでの試合を見ても単純なビルドアップでも選択肢を絞られると結構厳しく、アトレティコがここを狙う守備対応を設定することもあり得る。
コメサニャに関してはドリブルでボールを進められる希少価値の高いMFで、相手ゴール前まで飛び込んでいけるセンスも高い選手だった。この穴を埋める補強と言われるとオイアン・サンセ(アトレティック)とかが必要なレベルで、現実的ではない。当面はなんとかオスカル・バレンティン、ウナイ・ロペス、パテ・シスの3人で回していくことになる。新加入のキケ・ペレスがどの程度フィットできるか、実は要求がかなり高い。


●交代策

選手交代は同ポジションでの入替が多く、基本的にFWはフル出場させない。
今季はエンテカがスタメンで使われ、アルメリア戦はファルカオ、グラナダ戦はR.D.Tが途中から出てきた。今後はカメージョも含めた争いになるため、2トップの選択肢も出るかも。グラナダ戦で見たR.D.Tの出来が酷かったので考え物である。カメージョが出てくるんじゃないかと。終盤に1点必要ならファルカオが出てくる。
トップ下のトレホも途中で交代することが多い。ウナイ・ロペスをトップ下に上げてCHを入れるパターン(主にパテ・シスを入れて守備固め)が多いが、今季は右SHにデフルートスを補強したのでグラナダ戦ではトレホ→デフルートスを交代した。左右にデフルートス&アルバロ・ガルシアがいる構成は脅威。
この場合、トップ下に移動したイシがカウンターの先頭を走れる確率が上がり、単独で突っ込んでいくことも多い。また、イシは小柄な選手であるがロングボールを足下で止めてキープしちゃう能力に長けている。メッシとかパプ・ゴメスとか、香川真司みたいな。そのためハイボールのターゲットとなってボールを収めてカウンター、のような場面を作れる。グラナダ戦の2点目はこれが起点だった。
中盤はパテ・シスを入れるのが終盤の定番。この選手はアンカーポジションからの配球も落ち着いているので実はボールを握れる試合のポイントになれる選手でもある。人の話を聞くタイプのイドリス・ババって感じ。いやババがどうなのかは知らんけど
最終ラインではCBのムミンを途中投入することが結構ある。これは守備固めなのか、ムミンに出場時間を準備したい都合があるのか、という感じ。この選手は良い選手なので今季どこかでスタメンになると予想する。


●まとめ

ラージョは良いチームで、今季も問題なくラリーガに残留するクラブ。監督交代と主力選手3人含む大量移籍を乗り越えてリーグ中位のポジションを確立し、欧州圏への夢を追うクラブである。おれも好きなチーム。ラージョといえばこんなサッカー、も定着してきているイメージがある。

アトレティコは前節で改善ポイントをいくつも晒した。まずはアンカーポジションを安定させること。ラージョの選手相手に対人で劣る箇所は考えていないので、まずは敵陣に閉じ込めてから考えたい。解決手段はジョレンテ&デ・パウルになるか、グリーズマン周辺になるか、カラスコの質になるか。準備したパターンをこれでもかと擦り続ける試合にしてほしいところ。その先に課題や亜種への変化が待っている。
と思いつつ、"準備したことをやれ"という考え自体が"おれがレビューやプレビューに書いた通りに事が進め"と思っているおれのエゴなのかもなと思い始めている。という独り言。プレビューって楽しいな。ワクワクしてきた。



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カンポ・デ・フトボル・デ・バジェカス
ラージョvsアトレティコ


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