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説得力は自分達で作る 10節 アトレティコvsラージョ(H) 2022.10.18

ミッドウィークはラージョとのホームゲーム。ダービーマッチ。
アトレティコは前節のアトレティック戦にソリッドな4-4-2ブロックで挑み、ポジティブなクリーンシートで勝利。上位直接対決を制して2強を追う。

ラージョは週末ヘタフェとの試合。そういえば2戦連続のダービーマッチだ。両翼を使って攻め立て、後半は途中出場のファルカオが決定機を作るラージョらしい試合が出来たが、ヘタフェの5-3-2守備を切り崩すのに苦労。間に入ってボールを受ける選手があまりいないのでリスクを冒さずボールを持てる一方、決定的な侵入パターンはあまり作れなかった。トレホのPKが入っていれば勝っていたが、0-0のドロー。引いた相手を崩す攻撃はあまり得意にしておらず、アトレティコもヘタフェと同様に堅くブロックを作りたい。

前回対戦はこちら。

CLのユナイテッド戦を勝った直後の試合。1-0で気持ち良さを感じていこう、という試合。ユナイテッド戦後のインタビューでコケの"今はこの勝利をみんなと分かち合いたいが、すでに僕たちは100%ラージョにフォーカスしている"が忘れられない。そのコケは太ももの負傷で3週間ほど離脱する。CLも不在のまま戦う事になりそうな状況。正念場を迎える。partido a partido.


●スタメン
・アトレティコ

グルビッチ
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド
ヴィツェル / コンドグビア / デ・パウル / ルマル
グリーズマン / モラタ

オブラクは前節の負傷でメンバーから外れる。怪我のコケに変わりヴィツェルがスタメン復帰。それ以外のフィールドプレーヤーは前節アトレティック戦と同じ。

・ラージョ
ディミトリエフスキ
バリウ / ムミン / カテナ / フラン・ガルシア
オスカル・バレンティン / シス / イシ / アルバロ・ガルシア
ファルカオ / ホセ・ポソ

CBはムミンが初スタメン。中盤はシスが入る。最前線は、今季全試合出場しているが、スタメンはまだこれが2試合のファルカオが入った。90分やれるのかな。トレホが今季初めてスタメンを外れた。ポソは今季初スタメン。



●前半
アトレティック戦から継続しての4-4-2。5枚並べるかなと思っていたので予想が外れた。保持から見ていく

配球は2CBから。左のヘイニウドはやや低め。右のモリーナはやや高め。それ自体はいいんだが、4-4-2でやろうとするとあんまりバランスは良くならない感じもある。CH次第かな。
そのCHはコンドグビアとヴィツェルはセンターサークル付近でボールを引き出す。そしてSH(と言っていいのか?)のデ・パウル&ルマルは、グリーズマンと一緒にライン間スタート。縦パスをもらおうとする。

ラージョは、トレホがトップ下に入る時は4-2-3-1の配置のまま守備をする印象があるが、この日は明確に4-4-2。アトレティコにアンカーがいる訳ではないし、良いんじゃないでしょうか。この配置で大外、特にモリーナにSHとSBの間に潜り込まれた時の対応に苦慮した。
アトレティコのCHコンビがボールを引き取るのでCH(オスカル・バレンティンとシス)はどこまで追いかけるのかを問われ、バンバンライン間を狙った縦パスを使われる。受け手が主にグリーズマンなので多少パスコースが開くと通される、でも近づかないとターンされる、という状態。グリーズマンはこの日無双状態だった。

ライン間に縦パスが入るとボールは右サイドへ。モリーナが高い位置を取ってデ・パウルが近づく。そこにグリーズマンも関わる。ヴィツェルとコンドグビアがリセットをサポートし、ヘイニウドは逆サイドの大裏を突く機会を伺う配置。

シンプルにこれだけでは点は取れないなという様子。モリーナもデ・パウルもスモールユニットでエリアを崩す説得力に欠けて、常にグリーズマンのサポートが必要。モリーナが背後を取ったとして、PA内はモラタ+いてもルマルくらい。なかなか難しい。そしてモラタは、こういうサイドで作るユニットに関わる意思が本当に薄い。どうにかならんのか
結局、先制点は非保持の良さを活かす形から生まれる事となった。

という事で非保持。

親の顔より見た4-4-2。アトレティック戦と同様に両SH、デ・パウルとルマルの横移動をキーにエリアを圧縮していく。

この日のラージョは結局ポソがファルカオと並列に入って2トップ。このチームのビルドアップはCHの前向きを作るよりも両サイドに早めにボールを入れる形から始まる。そのため、アトレティコは前節はコケがアンカーを捕まえるためにかなり高い位置まで出てきたが、この日は2CHに対してある程度のプレッシャーを感じてもらえれば形を崩すほど強烈に前進する必要はない。相手SBにボールを持たせて、縦方向にボールを進めようとしたところを捕まえにいく

ここ
ラージョの前進は極端に左サイドのガルシアコンビ側からが多く、ポソはここにトライアングルを作りに近づいてくる。ファルカオをゴール前にポジションさせて、逆サイドのイシも内側へ絞って大外はSBバリウに任せた。


・5バックか4バックか
この日は5バックと予想していた。理由はご覧の通り、ラージョのボールの巡りがCHを経由せず、ワンサイド完結を狙ってくるからである。

SH(主に左のアルバロ・ガルシア)にマンマークでつけていれば、あとは近づいてくる人数に合わせて対応しつつサイドチェンジを逆側のWBで警戒。これで十分事足りると思っての発想であった。

実際にはこの日は4-4-2。アトレティック戦から継続した。ラージョがCHの前向きを作らないなら、アトレティコの中盤は前向きの守備がいらないと思っていたのだが、この試合では主にトランジションの局面でヴィツェル、コンドグビアのボール回収とプレス回避の能力を活かし、ボール保持の時間を長くさせた。なるほど。さらに先制のシーン。

まずバリウが保持。CHがボールを受ける意思をあまり持たないラージョ。出し所がない。ポソは近づく動きを見せたがヒメネスがついていっている。

GKを使ってビルドアップをやり直したがモラタが2度追い。4バックの幅が広くなりすぎてサポートが届かない。そして逃げ道を作ろうとした両CHにヴィツェル&コンドグビアが強いプッシュ。これでGKからの逃げ道は左SBのフラン・ガルシアのみになり、ここを狙った。
デ・パウルの良い出足があってボール奪取。グリーズマン→モラタの2人だけで完結した。

この先制点は、5-3-2では奪えなかったもの。4-4-2は当たりだったと言える。

シメオネの発想は"保持時間を長くするならこの日は4-4-2、中盤でセカンドボールを回収する"だったのか、"今のメンバーで点を取ろうと思ったら試行回数も大事だが前プレでハメる必要がある。SBからの配球を狙って奪い切る"というものだったか。どちらにしても狙いが当たっている45分間であった。

●前半終了
ホームゲームで先制して前半を折り返す。文句なしの45分。40分頃ルマルが足を痛めてカラスコと交代。最近怪我人が多い事もそうだが、そもそもカラスコにこの横移動タスクをやり切れるのか不安だ。サウルじゃ駄目だったのかな。
という事で、後半を見ていく。


●後半
ラージョは一人交代を使う。
ポソ→コメサニャを交代。
ポソは結構良い仕事をしていたが、この後の選手交代の手段とも関連してくるがリード出来ない限りはそもそも45分で交代の想定だったと思われる。
アトレティコは選手交代なし。

ラージョはポソが抜けた事でFWはファルカオ一人だけになる。
CHが3人いるようなメンツになったので、それこそ前半のアトレティコのような配置になる。ラージョにこんなパターンあったっけ。
両翼のアルバロ&イシはやや内側に入り、オスカル・バレンティンがCB間ポジションを取って両SBを積極的に押し出していく。面白い。しかしシスは2CHだとあまりボールに触りたがらないがバレンティンと縦関係になってからは積極的にボールを引き出していた。この選手好きなんだよね

これでラージョはSBとSHの距離を近づける事が出来るようになった。前半出来なかった点を早速修正した。アトレティコの両SBは2vs1を仕掛けられるリスクが出てくる。


・見えてきた変更点
アトレティコは前半余裕を持っていた両SB(モリーナ&ヘイニウド)の守備対応が重要度を増す。特にヘイニウドは対人最強だがボールに吸われすぎるところがあるので、複数人で自分の持ち場にラッシュされると間違いが起こる可能性がある。カラスコの効果的なサポートも期待し辛く、テコ入れしたい箇所は明確になってきた。サイドで2vs1を作られたくない。

後方5枚にして大外を使われる事だけ拒否する形にすれば、ラージョは別の手段を選ぶしかなくなる。となると選手交代は
”非保持でSHの位置を出来る選手を入れる”という事で投入はコレア。
“中央のフィルターは2枚になる場面が出てくるのでコンドグビア&デ・パウルは残したい”という事で交代はヴィツェルだ。シンプル。正直リアルタイムに指摘出来るくらい納得感のある交代。
もう一枚はモラタ→クーニャ。これはプレータイム調整でしかない。
ちょっとだけ指摘しておくと、こういうボールが前後に行き来する試合はモラタの出番があまりない。ロングボールを収められないから。点を取ったからいいのかもしれないが、満足感のあるパフォーマンスとは言えない。

大外を介護するつもり

で、こうなる予定だった。カラスコが最終ラインに入らず4-5-1でもいい。
が、同時にラージョも選手交代を使う。オスカル・バレンティンに替えてカメージョ君だった。わかると思うがこれでアンカーがいなくなったのでSBを押し上げるサイド押し込みをやらなくなる。なんでやねん

という事でアトレティコは5-4-1がいい?4-5-1にする?もう4-4-2に戻す?という事でグリーズマンを前に出して4-4-2に戻る。

戻る。ラージョの試行錯誤は続くが、ここから10分間でカメージョを起点に2つチャンスを作った。

一つはライン間に差し込んでターン&シュート。良いターンだった。

もう一つはワイドに流れながら縦パスを引き出し、嘘みたいなトラップミスで華麗にヒメネスを交わし、ファルカオへラストパス。
なるほどカメージョはこのチームではライン間でボールを引き出す役割が出来る選手なんだなと。2トップの方がいいねこの選手は。

同じ時間帯にはアトレティコの元気印クーニャが4,5回背後へボールを引き出し、オフサイドになってしまったがグリーズマンにスルーパスを届けるなど躍動。彼が絡むプレーはどうして点にならないのか。動きもキレていたし突拍子のないタイミングで簡単に背後を取れる特異な能力を持っている。シュートが下手っていうかアテンプトが悪い。ひとつ前のタッチのボールの置き所が悪くてどっちにシュート打つかバレバレ、みたいな感じがしてきた。なんでもいいからそろそろ決めてください

逃げ切り猛攻かと思われたが、その後ラージョはさらにエンテカを入れてスクランブル放り込み体制。そのエンテカ目掛けて蹴ったボールの跳ね返りが微妙にヒメネスの腕に当たってPK献上。ファルカオに決められて同点。試合終了。


●試合結果
ロスタイムのPKで追いつかれて悔しい引き分けとなった。
逃げ切れなかったと文句を言えるならいいんだが、選手交代含めなんの問題もない選択が出来ていて、実際決定的な場面はファルカオの1vs1くらいしか作らせなかった。失点はPKだし。ファールとかじゃなくて腕に当たったハンドだし。それをピーピー言っても何も生まれない気がする。いい試合が出来ました。

アトレティコのこの試合へのアプローチとして、まず4-4-2を選んだ事。
途中で書いた通り、シメオネの狙いはボール保持と高い位置でのボール奪取だった。これが功を奏し、前半の45分間を支配したと共に、前プレから先制点を生んだ。シーズン序盤にボール奪取を狙うくせに5-3-2で組んだ時期と比べれば矛盾もなくなった。

後半は開始からラージョの配置が変わる。これに伴いアトレティコが止めるべきポイントも変わる。大外に2vs1を作ってクロスを上げる、ポケットを取ってくる。ここを止める必要があり、両サイドの人数調整にコレア投入。しかしラージョもまた配置を変え、結局前半と似た形からカメージョのライン間の質を活かしてゴールに迫ってきた。
最後の最後で放り込みからPKを献上し同点ゴールを決められたが、クリーンシートへ向けて相手の要所を止めると同時に、シメオネが試合前に準備した形で先制点も取っている。ミッドウィークの試合としてはほぼ満点の進め方だったと評価したい。勝てなかったけど。


土壇場で同点ゴールを生んだラージョはイラオラの選手起用の妙が見えた。まずは先発起用したファルカオを最後まで引っ張った事だろう。カメージョを入れた段階で彼を下げていたら、結果的にはライン間を使うカメージョの良さも出なかったし、最後の最後、放り込みに可能性を見出す事も難しかった。オスカル・トレホが出場出来ていればこういう起用にはならなかった可能性はあるが、一点を追う方法論としてはかなり"あり"な形だった。オスカル・バレンティンをアンカーポジションに置いた両サイド押し込みも、保持を回復したい時間帯の選択肢として説得力があった。面白いオプションが2つ見つかった試合なのではないか。既にやっている形だったらすまん
前節はPKを外して勝ちを拾い損ね、この日はPKで勝ち点をもぎ取った。サッカーってのはそういうもんだ

何はともあれ、上位でもない相手から3ポイント取れなかった事実は残る。それは残念だ。シンプルに残念。
4-4-2で2点取れたらいいんだけどね、と思いつつ、どうやって?と言われても怪我人が多くてそれどころじゃない。1-0を目指した戦いは現実的であり、寸前まで目標達成出来そうだったのは流石だった。まあPKだし。説得力のある戦いだったと言っておこう。説得力って、結局自分達で作っていくしかないからね。

ここからベティス戦、そして必勝のCLレヴァークーゼン戦と続く。勝たなければ先はない。


10/18
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 1-1 ラージョ
【アトレティコ】’20 モラタ
【ラージョ】’90+2 ファルカオ(PK)


●ピックアップ選手
グリーズマン
どの角度からでもボールを引き出し、どの方向へもボールを解き放った。教科書のようなプレー。格の違いを見せた。

クーニャ
スピードを持って積極的に背後へ。ややオープンな展開になった後半、何度となくボールを引き出したがゴールが遠い。グリーズマンへのスルーパスも惜しくもオフサイド。チームを変える可能性をいくつも持っているので期待値は引き続き高い。

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