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ANNEX編集室

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世田谷学園「学友ANNEX」の生徒編集委員による記事を上げていきます。中高生の目に映る様々な世界の姿をお楽しみください。
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2020年11月の記事一覧

ふわっと落ちて

僕のすぐ右横で、同い年くらいの女子高校生が本を読んでいた。 変な音がした。 電車が揺れて、みんなの体が傾いた。 僕の目の前を何かが横切った。 女子高生の方から飛び出したしおり。 落ちていく。 そして、空気抵抗を受けながらゆっくりと着地した。 僕の目の前で。 僕は一瞬戸惑った。 だが、考える前に、体が動いた。 落ちたしおりを手に取り、手渡した。 互いにほんの会釈だけして、それで終わった。 僕はあの一瞬、なにを戸惑ったのだろう。 気づいた時にはもう彼女はその場所を

創作の源泉

「創作」 そこには無限の可能性があるという。 解釈するのは、僕ではない。 あなたによって変幻自在に移りゆく。 伝えることの楽しさに魅入られ、 「かいては」みるのだけれど。 思ったようにかけなくて、それでもやっぱりかきたい。 母国語すら、まともに使えなくても。 心ない言葉を受けても、それでも。 上手だ。面白い。そんな作品には、何かがある。 そんな何かを追い求めて。 でもまだ姿も見えないけれど。 「かくこと」は、「知ってもらう」ことだから。 新たな風が吹き、人びとは変化

九段下〜変わりゆく駅と過去の名残〜

東京千代田区にある九段下駅は、周辺には日本武道館や靖国神社も存在する歴史あるエリアだ。 「九段下」の名前は市ヶ谷方面へ延びる靖国通りの坂「九段坂」に由来する。江戸時代、この坂に沿って築かれた石垣が9段だったことから、「九段坂」と名付けられたという。 九段下駅では、つい先日、改札の撤去工事が終わり、半蔵門線および新宿線から東西線への乗り換えがより早く行えるようになった。 オフィスワーカーのみならず学生などの利用も多い九段下駅だが、乗り換えが便利になったのは今回が初めてではな

浅草駅〜異例の急カーブ〜

1899年に伊勢崎線(久喜−北千住間)を開業させた東武鉄道。 東急田園都市線三軒茶屋駅を最寄り駅に持つ、我が世田谷学園の生徒諸君の中には、「東武鉄道なんて乗らない」 と、無関係に思われる読者もおられるかもしれない。だが、この東急田園都市線は、東京メトロ半蔵門線を経由して東武スカイスリーライン(伊勢崎線)に乗り入れているので、毎日「久喜行き」「南栗橋行き」の文字を目にしていることだろう。むしろ、田園都市線で通う生徒は、日頃から東武鉄道の車両に乗ることも少なくないはずだ。 そ

11月の日記

2020年も残り約1ヶ月で終わる。 時間は砂時計のようにあっという間に過ぎていってしまう。 来月そして来年もこうやって過ぎていくのだろうか。 もうすでに記憶が曖昧だった。 忘れないうちに今年を振り返ってみる事にした。 コロナで初めての休校を味わった3月。 耳にするニュースはコロナの話題で持ちきりだった。 念のため、先輩の大学合格祝いは色紙とLINEで済ませた。 長い春休みだった。 とうとう国が緊急事態宣言を出した4月。 学年が変わったことで、ある問いが僕の中で生まれた。

僕が山に登る理由〜その「つながり」を愛して〜

 生茂る草木を抜け、額をぬぐい顔をあげると、そこが頂上だった。西方面には雄大な富士山が、東方面には都心部や横浜、鎌倉が見下ろせる。 「ああ、つながってる。」  東京も、富士山も、ぜーんぶ、繋がっている。  その向こうには熱海、御殿場……。ずーっと、繋がっている。  東京人は普段、東京を孤島であるかのように、他から切り離して考えてしまっているのかもしれない。そう思えるくらい、あの景色は、僕にこの世界の「つながり」を感じさせた。  そして数時間後、夕闇に飛び出すと、そこはま

〈禅×ドローン〉プロジェクト〜斬新すぎる獅子児祭企画〜(11/22追記)

2020年6月、僕の友人であるA.N君が、ひとつ、真新しい、というか、真新しすぎるがゆえに実現が出来るかも疑わしいような企画を提案した。 「学校を、ドローンで撮る。」 本校、世田谷学園の文化祭すなわち獅子児祭は、コロナの拡大を受けて今年はオンラインで開催される。例年と同じようにはいかない事態に頭を悩ませる実行委員もいたものの、彼は自らの大きなビジョンのもとに突き進もうとしていたのだ。 そのビジョンは以下のようなものだった。 獅子児祭に実際に来ることができない来場者の方々

VOCALOIDの魅力はどこにあるのか(後編)

 前回、VOCALOIDが普及した理由について話した。  今回は本題である、VOCALOIDの魅力について話していきたいと思う。  VOCALOIDの文化を作り上げていく「一体感」。2次創作を楽しめるというメリットは、異なる分野のクリエイターやファンを繋げてくれる。例えば初音ミクにネギを合わせるというアイディアも、発売元からではなく、2次創作から始まった文化である。  2次元とも3次元ともつかない、2.5次元とでもいうようなVOCALOIDは、従来のいかなる文化とも違う

国際連合と平和への取り組み

 現在、世界には子どもでも戦争に行かなくてはならない状況が続いている国と地域が多く存在する。世界の各地において24時間体制で平和のために、持続可能な開発のために、そして人権擁護のために国際連合は働いている。(『国際連合の基礎知識 第42版』)  さて、その国際連合の目的の一つとして、世界の平和と安全を維持することがある。国連はその創設以来、幾度となく紛争が戦争へと拡大するのを防ぎ、紛争を解決するために武力の行使に代えて交渉のテーブルにつくよう対立する当事者を説得し、紛争が始

オンライン獅子児祭への道~第2話 LEGOブロックへの期待

これは、獅子児祭実行委員の物語。 ある中学1年生の獅子児祭実行委員会での青春を描いた物語です。 また、この記事を通して今年の獅子児祭に興味を持っていただけると幸いです。 前回のあらすじ 今年の獅子児祭は、新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催となった。そこで、1年生は企画を自分たちで考えて良いこととなった。そこで、LEGOブロックで作品を制作することになったが、欲しい色のLEGOブロックを入手することが難しく、獅子児祭実行委員1年は困ってしまう。 第1話はこちらから