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僕が山に登る理由〜その「つながり」を愛して〜

 生茂る草木を抜け、額をぬぐい顔をあげると、そこが頂上だった。西方面には雄大な富士山が、東方面には都心部や横浜、鎌倉が見下ろせる。

「ああ、つながってる。」

 東京も、富士山も、ぜーんぶ、繋がっている。
 その向こうには熱海、御殿場……。ずーっと、繋がっている。
 東京人は普段、東京を孤島であるかのように、他から切り離して考えてしまっているのかもしれない。そう思えるくらい、あの景色は、僕にこの世界の「つながり」を感じさせた。

 そして数時間後、夕闇に飛び出すと、そこはまた別の世界と繋がっていた。
 宝石のように輝く首都圏の明かりから顔をあげると、儚くも力強く、無数の星たちが地球に光の雨を降らせていたのだ。一際明るいオリオン座を眺めていると次第に目が慣れて、それまで見えていなかった無数の光が視界に飛び込んでくる。

「ああ、つながってる。」

 遠く離れた宇宙であっても、僕らといつも繋がっている。
 それだけではない。オリオン座をオリオンとして認識している時点で、僕らは星座を作り上げた海外の先人たちとも、繋がっている。

 山の中は、都会と違って「オフライン」だ。電波も通じない場所ばかり。だが、繋がりが絶たれるわけではない。
 むしろ逆だ。
 そこには自然があって、山を切り開いてきた先人たちがいて、動物たちもいて……。全部繋がって支え合い、繊細で膨大な世界を維持し続けている。
 僕がここまで安全に登ってくることができたのも、たくさんの人々がこの山を愛し守ってきたからだ。
 だから、僕はいつも山を登ると感謝の気持ちで満たされる。この山に対して、そしてこの山を守り続けてきた人々に、動物たちに対して。そしてこれらの「つながり」に対して。

 山は、この世界のおおきな「つながり」を、目で見て音で聞いて手で触れて体感させてくれる。

 僕は、山を愛している。そしてこの「つながり」を、愛している。

へいすてぃ(論説委員・高校1年)

Photo by Luca Bravo on Unsplash

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