2023年 新人ブログ⑧ ベテラン編集者インタビュー〈教育分野編〉 ~「教育実務書」の編集で意識していることは何ですか? ~

皆さん、こんにちは。入社2年目のNです。
このたび、20年以上のキャリアがあるベテラン企画者2人にインタビューしてまいりました。
 
今回は、教育実務書ご担当のNさんの記事をお届けします。
「実務書の編集って一般書と何が違うの?」と思われる方や、教育分野に関心がある方必見の回です。
  

「教育実務書」を企画する際の意識


――さっそくですが、教育実務書の企画をする上で、意識していることは何ですか?
 
先生のための本ではあるけれど、子どもたちのための本でもあるっていうことかな。
教育実務書というのはやっぱり、未来を担う子どもたちのためにつくるっていうのが大きいと思います。
単に先生たちの仕事にお役立ていただいたり、授業スキルの底上げなどにご活用いただくだけじゃなくて、その先に子どもがいるということを自分は考えるようにしています。
 
――先生へのメリットが、最終的に子どもたちに還元されるという大きな枠で見ていらっしゃるんですね。
 
あっ、はい、なんだかとてもエラソーな感じではありますが、まさに、です。ですから、例えば「あそび」に関する本は、まずは一度自分でやってみたり、解いてみたり…。
それが実際に教室の子どもたちが取り組んだとき、心から楽しめたり夢中になったりできるものなのかどうか、感情や思考にどのような影響が及ぼされていくのかなどと、自分自身が身をもって体験しながら、企画を進めていくことが大切だと思っています。

楽しい瞬間

――編集の仕事の中で、楽しい瞬間は何ですか?
 
本づくりのプロセスそれぞれに楽しい瞬間が潜んでいますが、とくに著者と一緒に企画のことを考えながら熱く語り合っているときが楽しいです。
先生からどんどんお話を引き出したり、できるかできないかはひとまず置いて、アイディア、願い、ときには野望など、どんどん出し合っていく。
著者との話が建設的であることはもちろん、自分自身にとっての学びが詰まった非常にクリエイティブでコクのある時間だなって感じています。
 
あと、自分はデザインやイラストを考えていく作業が好きなので、ページレイアウトに「こんな工夫をしてみようかな」とか「こんアイコンを入れたら読者が見やすくなるんじゃないかな」などと試行錯誤し、それを形にしていく瞬間とか、装丁を考えるのも楽しいです。
 

編集人生におけるターニングポイント


――編集人生におけるターニングポイントはありますか?
 
ターニングポイントは、現在の教育実務書を担当するようになったときかな。
じつは、それまでは料理書や育児書のような一般書を担当させていただいていたのですが、その時はその時で無我夢中に充実した時間を過ごしてはいながらも、今、ある程度の経験を得た中で思うのは、まさに若気の至りもあってか自分の思いばかりを先走りさせてしまっていたかな、と。
教育実務書を担当させていただくようになって、直接的な読者の存在とともに、その先に子どもたちがいることにも気付き、誰のための本で、本を読んでどのように役立てていただけるのかだけではなく、どのような影響が及ぼされていくのかなど、改めてニーズを深く考えるきっかけになったときでした。
 
 
――そういったターニングポイントを経て、今、Nさんが思う教育実務書の編集者とはどんな存在でしょうか?
 
著者と読者、その先の子どもたちを繋げていく人なのかな。
無から有を生む起点に編集者はおりまして、それに伴う大きな責任や厳しさ・苦しさは当然あります。
でも、これを生み出すことによって、現場で日々奮闘されている先生方にお役立ていただけるのはもちろん、子どもたちも「学びたい」とか「学校が好きになってきた」とか、ポジティブな波をつくれる無から有です。
ですので、ちょっと古い表現にはなりますが、お産婆でもあり、生み出してもらった原稿を乳母として育てていくような、良い意味での繋ぎ手なのかなと思います。
 

現在の目標 

――最後に、Nさんの今の目標をお伺いしてもよいですか?
 
自分が作った本を読んだ先生から指導を受けた子どもたちが、また著者として本を作ってくれるような、タネのように生命力を秘めた息の長い本が作れたらと思います。
教育は、「不易流行」という言葉にもあるように、普遍的なものと新しいものを両方バランス良く取らなきゃいけない。このことは、これまでに出会った多くの先生方、著者の方から都度都度メッセージとして受け取らせていただいたことでもあるんですが、やはり、人の教えの中でいつの時代も変わらない教育技術というものが絶対あるはずで、そういうものを新しさや変化も受け容れながら書籍というかたちにシンプルにまとめられたらと。それで学んだ先生の教え子さんが本を作ってくださるような、そんな本をつくりたいです。
 
――世代をこえて受け継がれるものを、という大きなビジョンを教えていただき、ありがとうございました!
 


いかがでしたか?
読者だけでなく、その先も見据えた本作りについてお話しいただきました。
本作りの壮大さに触れて、私も身が引き締まる思いです。
 
次回は行政実務書ご担当のMさんのインタビューをお送りします。
ぜひご覧ください!