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LOCAL PRODUCE BOOK (9) 「スケジュール・タスク管理論」

"広義のPM" について紹介した前回につづいて、今回は "狭義のPM" として「スケジュール・タスク管理」についてお伝えしたいと思います。

いわゆるプロジェクトマネージメント(以下、プロマネ)という言葉の本来の使い方であり、プロマネの基本と言ってもいいですね。


スケジュールが一番大事

「スケジュール管理」は、プロジェクトを立ち上げ進めていく中で、実は最も大事な要素なのではないかと思っています。もちろん、利益を上げるとか、クオリティの高いものを作るとか他に大事な要素もたくさんありますが、それらも「利益を上げる方法を考える」とか「クオリティを上げる施策を考える」など、「タスク」として捉えれば、すべてスケジュール(や締め切り)がスイッチとなって駆動していくものです。そういう意味でスケジュールが一番大事。詳しくお話していきましょう。

※他に大事な要素もたくさんあるけれど


まず、大前提として、人は締め切りがないと動かない生き物です(マジです)。故に、スケジュールを引いて締め切りを設定しないと、ほぼ何も実現しないと言ってもいいんじゃないでしょうか。出来るものも出来ない。始まるものも始まらない。ケツにも火がつかない。「今度何か面白いことしましょう!」という社交辞令は一生実現しません。

ただ集まって会話するのが楽しい、ワイワイとアイディアを喋っているだけでOK!というのであれば良いのですが、「で、いつまでに、どうするの?」という話をしないと、物事はアウトプットされません。

そうした前提に加えて、スケジュールを引くことが大切な理由は、シンプルに、スケジュールを引くとタスクと体制が見えてくる点です。

最初は超ざっくりでいいので試しにスケジュールを書いてみると、いついつまでにこれをしないといけない、というのが分かり、それがそのままタスクと体制を整理することに繋がります。この洗い出し作業は最初の打ち合わせの段階でしておきたいところです。

最初はこんな手書きからスタートすることも多い。
大きなプロジェクトも、まず自分の頭でしっかり理解しておきたい時はこうして手書きで書くことも少なくない。手を動かしながら整理していく。企画書を書くときも、頭を整理したくて手書きで始めることも多い。


さらに、いくら素晴らしいアイディアを思いついたとしても、締め切りが明日まで、または来週まで、となれば、それに沿ったもので着地させなければなりません。そういう意味でもスケジュールは制約条件としてはかなり強い権限を持ちます。予算も然りですね。

余談ですが、広告代理店時代はこのスケジュール管理がすごく大切でした。例えば4/1にテレビCMが放映されるとなった場合、4/1にはWEBサイトが立ち上がってないとおかしいし、SNSでは同じタイミングで投稿がされていないとおかしい。店頭にはもちろん4/1に商品が並んでいないとおかしい。

おかしいで済めばいいのですが、クライアントにとってはそれが一日でも遅れてしまったら利益損失に繋がるため、絶対に遅れてはなりません。仮に致命的なほど進行が遅れてしまった場合は、代理店側がその損失を補填したりもする厳しい世界です。
そんな緊張感の中で、ギリギリまでクオリティを上げるための調整や、正しい文言や表現に修正する作業、また予算内に収めるためのパートナー会社への金額調整が同時に走るので、それはもう大変な現場でした。この時、スケジュールが何よりも最重要で、そのために夜中まで仕事をしました。※その時の感覚が今も強く残っています


話を戻しましょう。

ということで、プロジェクトをしっかりと動かし、何がしかアウトプットを世に出すためにも、まずスケジュールを引けるようになりましょう。以下、その具体的手法をお伝えします。

スケジュールって、どうやって引くの?

そもそもスケジュールってどんな感じで引いてるでしょうか?
テキストで箇条書きにしている人も多いと思います。

【例:ある企画書を作成する際のスケジュール】
・〜4月4日(月):資料のページネーション作成
・4月4日(月)〜7日(水):打ち合わせ
・4月8日(金)〜14日(木):記入・内容検討
・4月15日(金)資料記入完了
・4月18日(月):打ち合わせ
・4月19日(火)〜22日(金):修正反映
・4月25日(月)打ち合わせ
・4月26日(火)〜28日(木):修正反映
・4月29日(金):最終打ち合わせ
・5月1日(月)〜2日(火):修正
・2日(火):資料完成

参考:テキストで書き出したスケジュール例


初期段階の企画書にはこんな具合で書く事も多いです。横線を引いて、矢印の図を使います。シンプル。

横線を引いて日付を入れる
参考:講義用に作った超ざっくり版のスケジュール


実際のプロジェクトで使うスケジュール表は以下のような感じで、僕はGoogleのスプレッドシートで細かく作り、それを管理していくことが多いです。

2月の1w、2w、、と週単位で区切り、作業すべき日程に着色します

フォーマット自体はネットで探せばいくらでも出てくると思うので、自分がやりやすいものを探して真似してみたらいいと思います。ここでは、スケジュールを引く際の肝となるポイントをお伝えしますね。


1:2:2の法則

誰でもローカルプロデュースを再現できるように、体系化して研修をしたり、こうしてnoteを書いたりしていますが、スケジュールの引き方のコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。名付けて「1:2:2の法則」です。

以下、具体的にお伝えします。
まず、横線で最終締め切りまでの日付を書いたら、その全期間をざっくり3つのブロックに分けましょう。それぞれに使う日数を1:2:2ぐらいの比率とします。

最初の1は「考える」時間。真ん中の2は「つくる」時間。そして最後の2は「みがく」時間です。

「考える」時間は、方向性を考えたり、全体の計画をしたり、また具体アイディアを考えたりする期間で、「つくる」時間ではデザインをしたり、文章を作成したり、コーディングをしたりする実製作に使う期間。そして、最後の「みがく」時間は、修正したりブラッシュアップしたりする期間です。

例えば、月曜からスタートして金曜に提出する仕事の場合、こんな具合となります。月曜に考えて、火曜と水曜で手を動かして、木曜と金曜で修正と調整をして金曜に提出という形です。

冒頭のざっくりスケジュールに照らし合わせると以下となります。これは、ある組織のロゴやグッズを制作するというスケジュールの場合。どうでしょう、ざっくりとでもイメージできてきましたでしょうか。


ちなみに、「考える」ことは、最初の「1」以外やらないの?と質問されたことがありますが、「つくる」パートでも「みがく」パートでも、都度プランニングし直したり、方向性を調整したりする作業は続くので、最初の「1」だけで「考える」ことが終わることはまずありません。最後の最後までプランニングは続きます。

また、最後の「みがく」に2も使えるの?ということも質問されました。これは理想的なスケジュールなので、実際はギリギリになってしまうことも少なくないですが、それでもスケジュールはスケジュール通りにいかないのがスケジュールですし、予想外のことが絶対に起きますので、この修正対応可能期間(バッファ期間)をこのぐらい設けてスケジュール管理をしておかないと、こわいのです(何度も痛い目に遭いました)。

この法則の、それぞれのパートで行っている作業をもう少し詳細にお話しましょう。


①考える

まず、「考える」では以下の作業を行っています。これから始まるであろうプロジェクトの下準備のような段階で、登山でいえば、計画を立ててリュックに詰める道具を整理しているような段階です。まだ余裕のある状況のため、この段階で最後までを見通してイメージしてみて、このタイミングで潰せる懸念点は潰しておきたいです。そのためにもスケジュールをざっくりでも引いてタスクを書き出しておきましょう。

また、ローカルで特に大切なこととしては、このタイミングで事前に情報共有しておいた方がいい人、相談しておいた方がいい人なども洗い出すことです。伝えておくべき人に情報が届いてなかったことで、後から「聞いてない」となってトラブルになることが地域の活動ではよく発生します。面倒くさいこともあるけれど、大切なことです。

・企画の方向性を考える
・リサーチする(御本尊を探す)
・スケジュールをざっくりひく
・タスクを洗い出す
・体制を考える

・事前に情報共有しておいた方がいい人、相談しておいた方がいい人なども洗い出す。後から「聞いてない」となってトラブルになることがローカルではよく発生する。

この段階で御本尊探しをしたり、ざっくりスケジュールを引いておく。また、事前に情報共有しておいた方がいい人、挨拶に行っておいた方がいい人なども洗い出しておく必要がある。


②つくる

つぎに「つくる」パート。ここではプランニングした内容をもとに、デザイナーや関係者へ指示を出したり、打ち合わせを行ったり、自分で手を動かしたりして、とにかく形を作っていく段階です。

・各種準備・進行
・デザイナーなどスタッフへ指示
・関係各所と打ち合わせ・調整・指示だし
・試作
・文章作成

・根回し
・情報発信

この「つくる」パートの時、プロマネで大切なことは「締め切りとセットで指示を出す」ことです。前述したように、人は締め切りがないと動かないし、締め切りのないものは意識的・無意識的にも優先順位を下げてしまいます。色々な仕事や活動も抱えている忙しい人であればあるほど、相手の中で優先順位が下がらないように、コントロールすることも大切です。

また、場合によっては、スケジュール通りに進行させるリスクヘッジとして、本当の締め切りデッドラインではない、ウソの締め切りを相手に伝えることもあります。例えば金曜に相手からもらえれば間に合うものだとしても、どうしても木曜にほしい!と伝えるなどですね(遅刻がちな友人に30分早い集合時刻を伝えるのと同じです)。

結果的にスケジュール通りに進行できれば、自分も相手も全員がハッピーになるわけなので、スケジュール管理においては、ついていいウソもあると考えています。


③みがく

最後に「みがく」パート。ここは修正したり変更したり、ブラッシュアップしたり。イベントでは予行練習やシミュレーションをして、細部で必要なことを改めて洗い出す時間となります。
実は、「考える」「つくる」を経て、諸々が具体的になってきたところで改めて考え直さないといけない所が見えたり、追加で用意しないといけないことが見えてきたりするものです。「やべ、これ必要じゃん!」という具合です。みがくに「2」を確保している理由もそれで、ここに割ける時間が少なければ少ないほど、最後は雪崩式に焦って完成させる形になってしまいます(そうなることも少なくはないのですが)。

・修正 / 変更
・ブラッシュアップ
・予行練習
・シミュレーション


「1:2:2の法則」に基づくスケジュールづくりの解説は以上です!例外も全然ありますし、必ずしもこの比率にならないこともありますが、大まかにはこの比率で作ってみるといいでしょう。


ちなみに、プロマネ的に他人を動かすコツとして「太陽と風」に倣って、太陽作戦と風作戦があります。あたたかく伝える太陽的アプローチと、ひたすら締め切りをドライに伝えてマネージメンとする風的アプローチ。この二つをうまく組み合わせて進行していくのがプロマネです。


タスク管理の方法

つぎにタスク管理の方法について。これまでお伝えしてきたスケジュールづくりがしっかり出来ていて、そこでタスクが洗い出されていれば、ほぼ必要なことは出来ています。あとは、進行中のタスクをどうやって管理・マネージメントするかですね。

例えば、大きなプロジェクトだと以下のようにタスクをガッツリ書き出して管理します。その上で毎週 or 隔週で定例MTGを開催して、タスクの進捗を確認。この「定例MTGをセットしちゃう」ということも一つのシステムであり、リスクヘッジでもあります。毎週月曜朝10時からとか、火曜の午後13時からとか。


ちなみに、もっと個人的な細かなところで言うと、日々のタスクはGoogleカレンダーにすべて記入して管理しています。終わったら消す、その日に終わらなければ別の日程にズラして入れておく。ここでもスケジュールとタスク管理はセットです(いつやるか、いつまでにやるか)。

人は、日々目にするところにタスクの情報を置いておかないと簡単に忘れてしまいます。僕の場合、Googleカレンダーは毎日何度も見る場所なので、そこにタスクを一緒に入れてしまうというシステムになりました。日常的に使う冷蔵庫にマグネットで紙を貼っておくというのも、家庭から生まれた一つのプロマネシステムですよね。

仕事の予定、タスク、急ぎでないタスク、プライベートな予定など。色分けもしてます。終わったタスクは消す or 終わらなければスライドしているので、ここでは月曜と火曜にタスク(赤色や青色)は残っていません。


なお、もっと些細なことでいうと、あまりにタスクが多すぎて「あぁ、もう今日ヤベェな」という日は、面倒でも紙にタスクを書き出して、終わったら消すというアナログスタイルをしています。

これは、どんなタスクがあるか、どこまで終わっているかが視覚的に分かりやすいのと、「終わったら消す」という身体的動作自体が、着実に前に進んでいることを実感させてくれるメリットがあります。付箋を使って、終わったら都度丸めてゴミ箱に捨てるという儀式をするのもいいですね。気分を落ち着かせ、スッキリさせてくれることでしょう。自分で自分の背中を押しているような感じ。

なんだか超普通のことですが、デジタルが主流になっている現代においては、こうしたアナログな方法も馬鹿にできないと考えています。


「タスクのタスク」を洗い出す

最後に、タスク管理のコツに触れておきましょう。タスクを上記のように管理するにせよ、その「粒度(細かさ)」が細かくなければ管理していることになりません。

例えば、来週金曜までに企画書を提出しなければいけないという「タスク」があるとして、来週金曜の予定に「タスクを提出」というタスクを登録しておいても、何も意味がないのです。

タスクを分解し、「タスクを終わらせるためのタスク」を書き出して、それをやっつけていかなければタスクは完了しません。企画書を提出するという最終ゴールに向けて、まず提出物の確認をしなければいけないし、調べ物をするリサーチの時間も必要。またアイディアを考える時間も必要だし、最終的に資料づくりをする時間も必要ですね。印刷する時間が必要であればそれも含めないといけません。そうしたところまで細分化したら、そのタスクのタスクを登録し、管理していきます。

なお、無事にタスクを終わらせる原則として、早めに目的の50点(50%)まで進めてしまうことが大切です。自分に上司がいてその人の確認が必要な場合は、この時点で一度相談することをオススメします。「この方向性で合ってますかね?直した方が良いところありますか?」と。

これをかなり早い段階で行うことが大事。ギリギリになって「ちょっといいですか…?」と確認されてもリカバリーできる限界を超えていると、どうにもなりません。100点を取りたい気持ちも分かるし、中途半端な状態で上司に見せるには勇気が必要なことも理解しています。ただ、しっかり考えた上での50点であれば、すでにもう議論できる状態だと思いますし、途中経過を都度報告することは、逆に上司からの信頼を得るでしょう。何より、「これで大丈夫かなぁ」と心配なまま進めるのは精神安定的に良くはないですね。


以上、狭義のプロマネ論「スケジュール・タスク管理」でした!

プロデューサーという、プロジェクトを管理して適切にフィニッシュさせる職業として伝えたいことがたくさんあり、つい長文になってしまいました。

ローカルはもちろん、色々な仕事や活動においてもスケジュールは大事ですね。参考になると嬉しいです。今回もお読みいただきありがとうございました!

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