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AO入試誕生から約30年で、主流の入試方法になったって話。

 AO入試と言った方がピンとくる方が多いと思うが、今はAO入試は存在しない。名称が昨年から総合型選抜に変更になったからである。一部の大学では使い続けていたり、別名称にしたりしているようだが、一般的にはAO(admission's officeの略)入試という呼び名が定着している。

 AO入試を始めて導入した大学は、慶應義塾大学である。1990年に慶応大学湘南藤沢キャンパスが誕生した際、新設学部の総合政策学部と環境情報学部の2学部において導入されたのが始まりである。AO入試というのは、学力試験を行わず、小論文や面接で合否を決める。また、事前にエントリーシートを記入し、学生がその大学・学部・学科でどういうことをやりたいのか興味を持っているのかを記載し、大学とそこで学びたい学生とのお見合いのような位置付けの入試制度である。当時、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスのイメージとあわせて最先端の入試というイメージであった。

 AO入試はすぐに他大学に広まった訳ではない。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスがAO入試を初めて実施した1990年から10年後の2000年でも、AO入試を利用して入学した学生は、全体の2%にも満たない状態であった。1990年代前半は、臨時定員増の時代であり、まだまだその名残があった時代である。と同時に、学力試験を課さないことから導入に二の足を踏む大学が多かったと言える。今ではピークアウトして落ち着いているが、大学入試で同一学部学科の複数回受験ができる制度を超大々的に取り入れ、大学入試に一大革命を起こした立命館大学の入試改革についても、すぐに追随する大学は現れなかった。あれよあれよという間に受験者数日本一に立命館大学は輝き、全国区の大学になっていった。この時と同じで、大学が制度を変えるというのは意外に時間がかかるものである。

 それから更に20年経ち、今ではAO入試から入学した学生は、全体の12%を超えてくるまでに一般化したのである。更に言うと、指定校推薦や一般推薦を利用して年内に進学先を決めてしまう高校生が全体の半分を超えている。国公立大学にもAO入試は広がりを見せ、今では当たり前の入試形態になっている。

 AO入試は学力試験が無いというのは大いなる誤解であり、学力試験を課さないというのが正解である。何が違うのかというと、小論文や口頭試問の中において、その大学・学部・学科での学びに基礎学力が追いついているかというのは見られるのである。2011年に文部科学省は出願時期を8月以降(2020年からは9月以降)にするとともに、調査書等の書類選考以外に専門教育を受けることができる学力を持っているかを測ることが義務付けられたのである。したがって、書類選考に加えて、小論文、口頭試問、大学入学共通テストのいずれかを課し、学力判定をすることになったのである。

 正直、有名大学のAO入試はハードルが高い。生半可な気持ちで臨むと返り討ちにあう確率が高い。また、学力に不安があるからAO入試で受験しようというのは間違いである。最近の入試問題で特徴的な問題を出す大学が増えているのは、大学入学後にこの知識が必要ですよという大学側のメッセージであり、それができない受験生は入学してもらっては困るのである。入試制度は何であれ、事前の準備が大切ということに変わりはない。

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