ぺこぱ系編集者と呼ばれて
『伝わる図面の描きかた 住宅の実施設計25の心構え』という本がまもなく発売となります。
著者は、細部まで気を配った住宅設計に定評のある人気建築家、リオタデザインの関本竜太さん。東京の下町につくられた一軒の住宅〈KOTI〉の実施設計図書をまるごとひもときながら、図面を描く際の心構えを綴っていただきました。
お声がけしたのはおととしの秋。「施工現場に伝わる建築図面の描き方」についての専門書はすでにいくつか世の中にあったものの、対象の物件も図面の種類もバラバラで断片的なノウハウに終始しがちな点がネックに。
そこで、むしろ1軒の住宅のみを素材にして一連の設計プロセスを感じつつ、それでいて眉間にしわを寄せることなく楽しく読み進められる“美しく柔らかい実務書”の企画として提案しました。
関本さんとの企画・原稿のキャッチボールで学んだのは、設計意図が正しく伝わるように綿密な配慮がなされた実施図面は、ゆくゆくは設計価値そのものを洗練させる循環の要になっているということ。
すなわち、それが施工現場のミスを防ぐことに資することはもちろん、図面を介したコミュニケーションによって施工者たる大工・工務店との関係性や依頼者(施主)の満足度を高め、ひいては建築家自身の設計環境の向上にまでつながる、ということ。
本書には、そうした循環の中で関本さんらが培ってきた実施設計上の教訓や、実施設計以外の建築業務にも通用する様々な心構えがちりばめられています。
こうした考えを書籍編集者という自分の立場に置き換えてみれば、図面は企画書やゲラ(校正原稿)にあたるもの。
必然、本書を企画・制作するうえでのやりとりには、いつにも増して心地よい緊張感が伴い、そしてまだまだ心配りが足りないなと反省する機会が多くありました。
著者の提案をなるべく否定しないという意味で“ぺこぱ系編集者”と名付けてくださった関本さんの評に恥じないように、引き続き走り続けたいと思います。
建築学生から設計事務所に勤めはじめた若手、スタッフを抱える事務所のリーダー、そしてデザイン意識の高い施工関係者まで、住宅の実施設計に携わる人に手に取っていただきたい一冊です。
ぜひ書店店頭などでご覧ください。
(編集Y.M)
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