見出し画像

§12.7 政党内閣の妙味/ 尾崎行雄『民主政治読本』

政党内閣の妙味

 日本の政党は,まだ公党としての性格を具備するにいたっていないのに,新憲法は,すでに早くも政党内閣の制度を確立した.
 一たい,政党内閣制の妙味は,選挙に勝って多数を得た政党も,朝に立てばその党勢は次第におとろえ,選挙にまけて少数になった政党も,野に下れば次第にその党勢を盛り返し,やがて多数党となって,政権をとるというような選挙が行われる国でなければ発揮せられない.イギリスの政党内閣がつねに巧妙に円滑に公明正大に交迭するのは,在野の少数党でもいつかは多数を制して,政権をとる機会があるからである.いいかえれば在野党に勝たせる有権者があるからである.
 しかるに,わが国のごとく,朝に立てば党勢が必ず大いに伸び,野に下れば党勢がつねに衰えるところでは,いいかえれば政府党をいつでも勝たせるような有権者の多い国柄ではこの妙味を発揮することはできない.


←前:§12.6 正規軍か馬賊か

次:§12.8 幕府的存在となる→

目次に戻る


底本
尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)

本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。

2021年4月24日公開

誤植にお気づきの方は、ご連絡いただければ幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?