"Neon in your eyes" 制作について

僕のアルバムの8曲目、"Neon in your eyes" はシンガーソングライター風のメロディーの下で様々なビートが展開されていくことが一つのコンセプトです。

ハーモニーに関しては、最初のセクションでは、日本の音楽理論でいうところのクリシェというものが使われております。これはPaul McCartneyの作曲法においてもよく見られる方法で、和音の一部分、特に、ベースラインなどが音程の近い2度などで、滑らかに変化していくという手法です。Penny laneなどがその代表例です。

次のセクションでは、E♭7sus, add10 (Dbmaj7sus2/Eb) というハーモニーは僕が尊敬するJacob Collierのよく使うメジャーにおける3rdと4thが混在するパターンとなります。ですが、これすらもJacobの発明によるものではなく、Brad Mehldauもよくブルースのヴォイシングなどで使っています。また、僕が今回最も参考にしたのはJazz piano bookの最初の方記載のある、3rdを4thの上に置くことでM7thの音程を形成する方法であり、隣同士でクラッシュさせるよりは柔らかく、もはや浮遊感があって心地よいサウンドとなっております。

また、次のD♭dim△7/A♭というコードはクラシックで言うところの倚音、今回最も参考にしたのはKeith JarretさんのI got it bad and that ain't goodの最初のG △7のハーモニーの倚音のアプローチです。


曲の最初の掴みって大事ですよね。カッコいい!!

僕自身の解釈として、西洋クラシックは和音外音という形で和音から音をズラしたものが元に戻ってくる(解決)というものと、ジャズ的な3度つづ上に積んで行き、テンションノートを作っていく、もしくはスケールから対応したテンションを入れるというアプローチがあると解釈していますが、Keith Jarretさん含め、西洋クラシックへの造詣も深いジャズプレイヤー、
特にピアニストはそのようなクラシックの倚音のアプローチをジャズにも適用することによって、複雑でいながらも決して聴衆を置き去りにしない、凄いバランスの感覚をしているなと思います。

ビートについて

この曲を構成する要素のうち、もう一つの重要な要素は、ビート、リズムがあります。

ドラムは最初は、7連符系のリズムで、Vocoderの8連符系のリズムと同時に入ります。これは僕はこの曲の最初のセクションでドラムに少々、千鳥足のような”Drunk”のクオリティーを求めているからです。
聴き手はドラムと歌が同じ刻みで進んでいくことを無意識のうちに予想しているところに、Vocalの一般的なリズムの分割である8に対して、一般的でない、8より一個少ない7を選ぶことによってvocoderの8の刻みに対して、少しドラムが遅れて(もしくはタメて)聴こえていながら、同じテンポで進んでいくという不思議な錯覚の効果が得られます。
1や2という拍(ビート)の頭、すなわち、整数でドラムとvocoderが同期するけれども、進み方の分母が1/7づつと1/8づつが同時に進行しているため、違うといった感覚でしょうか。

譜面で見ると聴いた感触より複雑ですね

ミュージシャンであり、音楽系YouTuberのAdam Neeleyさんのバンド、Sungazerに代表されるような、Drunk (酔ったフィーリングのリズム) feeling groove/rhythmを機械的なx連符の形で表して近似するアプローチから来ています。 

The Darkは5連系のビートです。

実はこのアプローチは実はYMOの時代から始まっており、YMOのインタビューにおいての初期Moogシンセなどでコンピューターでプログラムするときに、いわゆるうSwingなどのリズムを初めて数値化して近似するという試みが行われました。なので、広く言えば、その潮流なのかもしれません。
YMOのインタビューで語っていた、ハイサイおじさんは1拍を12の刻みにして、均等でない2つの分割、1つ目が長めで2つ目が短めの、7+5の刻みです。

と言いながら、僕自身はこの曲のChorusセクションから入るドラムのパターンにおいて、正確に7連を刻むことを主目的としているのではなく、そのDrunkなフィーリングが第一だと考えているのでより不均等かもしれません。

僕はこの苗代さんのソロがとても好きなのですが、その理由として、最初は多少ビバップ系のフレーズも混ぜた場所から始まり、段々とコンテンポラリーなラインへと変化してその間にオシャレに潜むブルース系フレーズ、また、最後の同じフレーズのまま、一時的に転調していく、(シーケンス)がこの曲のキーを抜け出して、浮遊してからまた戻ってくるという瞬間に僕は痺れます。Jacob CollierもDave Leibmanもよく行う、Superimposition(元の進行が流れている上で別のハーモニーの進行を主にソロセクションにおいて乗せる)の手法の一種なのかもしれません。

ソロ終わりの場所では、ドラムは32分音符系のリズムで、決して奇数の複雑な割り方ではないのにも関わらず、2個目がアクセントが付くことにより、何か不思議なリズムで歪んで聞こえるという、錯覚のようなものを利用しております。

その後のセクションは、現代的な短3度転調などの、neo-soul系のハーモニーを挟みつつ1曲、そしてアルバムが終わります。

ここまで読んでくださりありがとうございました! 是非コメントお待ちしております!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?