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自分の胸を初めて意識したのは、中学生の頃だっただろうか。
発達の緩やかだった私は生理もまだ来ておらず、胸も平らなままだった。
その胸がある日、少し膨らんできていることに気付いた。
その時の感覚は大人になるまでしばしば感じることになる。
例えば、高いところから下を覗いた時のような、ひゅん、となる感じに似ているかもしれない。
胸を意識すると、怖いような、モゾモゾするような、落ち着かない気持ちになった。
自分の身体が変化している。それも、性的な変化を遂げているということに、不思議な感覚があった。

自分の性別に違和感を感じたことは、無いと思う。
スカートよりもずぼんが好きだったりはしたが、「女の子らしいもの」が苦手だっただけで、自分は女性という理解があり、恋愛の対象も男性だった。

だが、第二次性徴を受け入れつつも、違和感はじゅうぶんに感じていた。
私は、自分の胸の膨らみに静かに傷ついていた。
自分の性を自認しつつも、違和感を持つ。そういう場合もあるのだろうか。

私は、男にも女にもなりたくなかったのかもしれない。
無意識にそう思っていた気もする。
生理は結局、高校2年生になるまで来なかった。


大人になって恋人ができた時、私の体に不思議な変化が起きた。
ずっと華奢で痩せぎすだった私だが、恋人ができてしばらくすると小さかった胸が急に大きくなりだした。
好みも変わった。スカートを好んで履くようになり、おしゃれも好きになった。

しかしその後、いつのまにか胸のサイズは元通りになっていたし、出産など様々な経験を経て、服の好みなども徐々に変わった。

詳しいことはよくわからないが、ホンモンやらなにやらがどうにかなっていたのかもしれない。私の今までの人生の中で1番、「女性としての自分」を受け入れていた時期だと思う。
気持ちや状況で趣向が変わるのはよくあるが、身体までも変わる、という経験を初めてしたので、興味深かった。


現在はどうだろうか。
女であることにいい加減慣れはしたが、相変わらず違和感は持っている気がする。世の中の「女性像」と自分の中の「女性性」がズレているからかもしれない。
恋をして盲目だった時の、まるごと自分を「女性」として受け入れていた時のあの感覚は、悪くなかった。だけど、今の自分の、偏りすぎないようバランスをとっているような感覚も、大事にしたいと思う。私は私の枠で、女であることを受け入れていきたい。

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